東京海上日動火災保険と日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、4月28日、風災被害を予測するAIモデルを共同開発したと発表した。AIの機械学習にはIBMのグループ企業であるThe Weather Companyの天候データを活用し、台風による風災被害の予測技術適用に向けた実証実験を通じて、今後、強風が発生したエリアにおける被害レベルを予測する。
The Weather Companyは、2016年にIBMのグループ企業になった気象情報サービス会社で、日本IBM内に「アジア太平洋気象予報センター」を設置している。センターには気象予報士が24時間365日常駐し、企業向けの気象データをクラウドサービスで提供している。
またThe Weather Companyは、AIを活用した精度の高い予報データを、1キロメートル・メッシュという狭い範囲かつ最大15日先までのデータをリアルタイム(1時間単位)で収集可能。気温や降水量、風向・風速、気圧といった一般的な項目のほか、直達日射量、体感温度、視程、空気密度など、ビジネスに活用するための豊富な予報、現況、過去データをAPIで提供する。
東京海上日動火災保険と日本IBMによる実証実験では、まず、東京海上日動火災保険が過去の事故対応によって集積したデータと、The Weather Companyが提供する気象データを組み合わせてAIによる機械学習を実施。そのうえで、強風エリアにおける被害の有無、被害件数、保険金支払見込額といった被害レベルを早期に予測する「風災被害AI予測モデル」を構築し、実現性を検証した。
同検証を通じて、特定の台風において地域レベルでの支払件数予測が高い精度で可能となる。2018年に発生した台風21号では、特に被害が大きかった大阪府での実際の保険金支払件数と、予測した支払件数が誤差率5%以内の確率で一致している。
東京海上日動火災保険と日本IBMは、より細かい粒度のオープンデータや多くの台風データを学習させ、AIモデルの精度をさらに高める予定という。今後は個別契約単位での被害額の予測、およびAIモデルの汎用性について検証を進めていく。