アイ・ティ・アール(ITR)は、2020年8月から9月にかけて国内企業を対象に実施したIT投資動向調査の一部結果を発表した。
本調査では、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲の動向の変化に加え、新型コロナウイルス感染拡大による、売上げへの影響および在宅勤務や緊急対策の取り組み、そしてニューノーマルに向けた企業の戦略・施策と注目されるITソリューションの導入状況などに関して、調査・分析を行ったという。
コロナ禍で減速傾向が続くもリーマンショック時とは異なり増加基調を維持
2020年度(2019年4月〜2020年3月)のIT予算額は、前年度から「増額」とした企業の割合が36%(2,667社中963社)となり、前年調査時の2020年度予想から微増となった。一方、2020年度に「減額」とした企業の割合は、前年調査時の予想を上回り、2019年度からほぼ倍増し15%に上る。
このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資インデックス」の動きを見ると新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてか、2020年度の実績値は1.93となり、2019年度の2.62から減少したものの、プラスの値、すなわち増加基調を維持しており、リーマンショックの影響を受けてマイナス値となった2009年度とは異なる様相が見て取れるという。
DX推進専任部門の設置企業は積極的なIT投資が継続
DXのための何らかの組織体を有する企業は前年から増えて、7割に迫っている。その内訳は、依然として既存部門が掛け持ちで担当していたり、部門ではなくプロジェクトチーム(タスクフォース)が担当していたりする企業が多数派ではあるが、専任部門を設置している企業の割合も前年から3ポイント増加しており、DXに積極的に取り組もうとする企業の意識が高まっているとしている。
コロナ禍でデジタル化が加速すると考える企業ほどIT予算を増額
コロナ禍においてIT戦略遂行(デジタル化の進展)が加速すると考えている企業は半数に上り、減速すると考える企業は2割にとどまった。特に、「金融・保険」および「情報通信」においては、デジタル化が加速するとする企業が約6割と高い値となった。この影響の認識別にIT予算の増減傾向を見ると、デジタル化が加速すると認識している企業ほど、2020年度および2021年度予想ともIT投資インデックスが高く、「大いに加速すると思う」と回答した企業は両年度とも4ポイントを超え、増額の勢いが強いことが示さたという。
一方、「大いに減速すると思う」と回答した企業では両年度ともマイナス5ポイント前後となり、IT予算の減少傾向が顕著に表れた。
コロナ対応とデジタル・シフトが製品・サービス投資を牽引
今回の調査では、製品・サービスの現在の導入状況と今後の投資計画を、5分野、全110項目について確認した。その結果、2021年度新規導入可能性では「5G(パブリック)」が、投資増減指数では「ビデオ会議/Web会議」がトップとなった。
2021年度新規導入可能性で1位の「5G(パブリック)」は、大手通信キャリアが2020年3月下旬に商用サービスを開始したばかりでサービス提供エリアは限定的だが、8K映像のライブ配信、工場や建設現場などでの機械の遠隔操作、医療における遠隔診療・手術などのさまざまな可能性への投資意欲が表れている。
また、投資増減指数で1位となった「ビデオ会議/Web会議」は、導入済み(全体の半数強)の企業においてコロナ禍の在宅勤務対象の従業員が拡大したことを受けて、ライセンス数を増やしたり、クラウドサービスへ移行したりするなど、2021年度も投資が拡大することが予想されるという