10月13日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は記者説明会を開催。金融業界に関する課題とソリューションを発表した。
同社の歩みとして、2011年提供当初はノンクリティカル・システムのための低コストインフラと位置付けられていたものが、2017年ごろから金融ITの効率化、2021年からは金融ビジネス変革のためのパートナーとしても注力しているという。特にセキュリティ・コンプライアンスへの取り組みとして、外部認証の積極的な取得、リファレンスの提供などを行っており、10月3日より「金融リファレンスアーキテクチャ 日本版」の正式版を一般公開している。
同文書は、3階層のフレームワークによって構成されており、「AWSのテクノロジーとフレームワーク」では『AWS Well-Architected Framework』、「金融に求められるセキュリティとレジリエンス」としては、FISC安全対策基準(第10版)のレビューができる『Well-Architected Framework FSI Lens for FISC』を提供。
なお、金融リファレンスアーキテクチャ 日本版のプレビュー版は6月末に36社の金融機関とパートナーで評価済みだという。
プレビューに参加した企業の一社である新生銀行のシステム運用部 統轄次長 神戸大樹氏によれば、同行グループでは2024年度までに150名のAWS資格保持者の育成などに注力しており、AWSをマルチアカウント構成で利用。2019年にAWSへ移行すると2021年にはインターネットバンキングをリリースしている。
ただし、同行では「開発人材の不足」「金融システムとしてAWSを活用するためのポイントを押さえられていない」「AWSアカウントが増加傾向にある」ことなどを課題としており、同行内のAWS活用方法との差異を把握するためにプレビューに参加。今後は、フレームワークの導入、ベストプラクティスに基づくシステム開発の推進を検討するとしている。
また、AWSには、大阪リージョンのサービス拡張、FISCやその他セキュリティフレームワークの最新版を随時取り込んでもらいたいと期待を述べた。
続いて、AWSパートナーであるSimplex(シンプレクス) クロスフロンティアディビジョン プリンシパル 峯嶋宏行氏が登壇。既に同社によって金融機関などミッションクリティカルなシステムを中心に、450以上のワークロードが稼働しているという。プレビューに参加した理由として、準拠すべきルールが明確である反面、どのように実装をしたら準拠できるかが不明瞭だった点を挙げた。
正式版の提供後もユーザーやパートナーから要望を吸い上げるような双方向のフィードバックループでのブラッシュアップ、ケーススタディの取りまとめなどをAWSに期待したいとして会見を締めくくった。