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「日本のデジタル化に最大のチャンス」EIPA、『JP PINT』公開に際して対談を交えて方向性示す

 10月28日、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)は、「請求から『作業』をなくそう。~今だから考えるデジタルインボイスの利活用~ presented by デジタルインボイス推進協議会(EIPA)」と題した記者説明会を開催した。

(左から)インフォマート 代表取締役社長 中島健氏、ROBOT PAYMENT 執行役員 フィナンシャルクラウド事業部長 藤田豪人氏、EIPA 代表幹事 弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏、マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田一也氏、デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官 加藤博之氏、TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長 富永倫教氏
(左から)インフォマート 代表取締役社長 中島健氏
ROBOT PAYMENT 執行役員 フィナンシャルクラウド事業部長 藤田豪人氏
EIPA 代表幹事、弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏
マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田一也氏
デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官 加藤博之氏
TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長 富永倫教氏

 説明会の冒頭、河野太郎デジタル大臣が「コロナ禍で押印、請求書処理のため出社しなければならないという実態が明らかになり、アナログがデジタル化を阻み、業務を非効率にしているという課題が浮かび上がりました。デジタルツールの活用、デジタルトランスフォーメーションを進めることで事務負担を軽減できるのではないかと考えており、その一つがPeppol(ペポル)に対応したデジタルインボイスであり、デジタル庁のフラグシッププロジェクトです。『Peppol BIS Standard Invoice JP PINT Version 1.0』を公表し、いよいよサービスインのタイミングも見えてくるかと思います」とメッセージを寄せた。そして、デジタルインボイス普及に向けたEIPAの取り組みについて同協議会長を務める岡本浩一郎氏が説明を行った。

 冒頭に岡本氏は「電子化とデジタル化を明確に使い分けなければなりません」と指摘。請求書をPDFにしただけならば電子化であり、受け手側の手入力が発生してしまう。そうではなく、最初からデジタルデータとして取り引きすることで業務効率化につながるという。「このような話は大企業だけのように捉えられるが、中小企業にこそデジタル化を通じた業務効率化が必要です」と岡本氏。労働人口減少などの課題において一番割を食うのは中小企業であり、従来以上のアウトプットを出さなければならない中で生産性の向上が求められているとした。

 デジタルインボイスは元々欧州で先行していたが、ここ5年のうちにシンガポールやオーストラリアで採用が進んでいる。岡本氏は「こうした海外先行事例においては、国と民間が協力して普及を図っている背景があります。日本でもデジタルインボイス推進協議会が立ち上がり、Peppolを採用すべきと提言しており、デジタル庁のフラグシッププロジェクトとして取り組みが進んできました。そして10月28日にデジタル庁は『Peppol BIS Standard invoice JP PINT version 1.0』を公表し、再びバトンがデジタル庁からEIPA、民間に戻ってきたのです」と話す。

 また、EIPAが目指すのは「法令改正対応」にとどまらない「業務のデジタル化」であり、インボイスをデジタル化するだけでなく、受け取ったデジタルデータをもとに後続業務が効率化・自動化されることが重要だとした。下図を参照しながら岡本氏は、「売り手と買い手双方にデジタルツールが普及している中で、なぜか送るときには紙になってしまいます。まずは、請求書を起点にデジタル化を推進していきます」と述べる。デジタル化が進むことで、デジタルインボイス発行の瞬間に融資を受けたりなど、中小企業にとってもビジネスへの資金投下がスムーズになるなどメリットも大きいとした。

 岡本氏は、「準備はぜひ段階的、計画的に進めていただきたい。来年10月には既に業務として定着している必要があるため、来年前半には本格的対応に着手していただき、時間をかけて業務そのものの見直しを進めていくべきです。来年10月すべてがデジタルになるわけでなく紙も残るため、どちらもうまく扱えるように各社共通でその仕組みづくりを進めており、EIPAのWebサイト上でも対応製品等の情報を順次公開していきます」と呼びかけた。

 続いて、パネルディスカッションとして、デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官 加藤博之氏、インフォマート 代表取締役社長 中島健氏、マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田一也氏、TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長 冨永倫教氏、ROBOT PAYMENT 執行役員 フィナンシャルクラウド事業部長 藤田豪人氏が登壇。請求書ベンダーとして目指すべき世界観、実現に向けて各製品が世の中に提供していく価値について議論を交わした。

*     *     *

冨永倫教氏(以下、冨永氏):まずは、仕訳データの連携が当たり前となる世界を目指していきたいです。ひと昔とは言わず、ふた昔前くらい前まで手で仕訳を書いていましたが、今やシステム入力が当たり前になっています。こうした価値観の変化と同じように、システムに手入力していたものが自動的に生成される世界観が形成されるでしょう。また、細かな粒度でデータが入ってくるため会計情報がリッチになり、それが蓄積されていきます。当社では、デジタルインボイスから仕訳データを生成する特許を取得しており、そこにも注力した製品開発を行っています。

加藤博之氏(以下、加藤氏):ポイントは仕訳を入力の段階から自動処理することですね、これは今回のデジタルインボイスの基本機能だと思います。岡本代表の話にもありましたが振込みの処理にまわしていく必要があります。このあたりマネーフォワードだといかがですか。

山田一也氏(以下、山田氏):紙の場合はOCRで読んだとしても100%の精度とはいきませんが、デジタルデータなら100%もので受け取れるため、SaaSから支払い業務につなげて効率化を図りたいと考えています。たとえば、資金繰りに課題をもっている中小企業も少なくないですが、ベンダー側が蓄積された支払いデータから、法人版のリボ払いのようなオプション提案なども将来的にはできるのではないでしょうか。そうした金融系の機能提供にもつながっていくと思います。

加藤氏:非常に重要なポイントですね。業務効率化は当然として、どんな付加価値を加えられるのか。デジタルデータでは、請求データを出す側でも受けた側が処理をしやすい工夫をしやすいのではないでしょうか。

藤田豪人氏(以下、藤田氏):当社は前社2社と毛色が異なっており、請求書を作るというよりも“決済機能をつける”というところに注力しています。デジタルインボイスが浸透していくことを想定してみると、今はBtoCでは買い手が支払い方法を選んでいますが、BtoBだと売り手が決めていると思います。これは紙の請求書でないと正しさがわからなくなるといった懸念からですが、デジタルインボイスならば正しい情報が正しく送られてくるようになります。そうすると『今月はカード決済で1ヵ月遅らせる』といった判断ができるようになるなど、買い手側が支払い方法を選べる時代が到来すると思います。やはり、正しいデータが作られるという点が良いですね。

加藤氏:やはり、受け取った側が楽になるだけでなく、出す側も工夫できる点が重要だと思っています。とはいえ、今回のデジタルインボイスは本当に新しい取り組みなのでしょうか。つまり、EDIの中でもできているのではないかということです。こうした観点において、インフォマートではある程度確立されていそうですが、Peppolにはどういう可能性があるのでしょうか。

中島健氏(以下、中島氏):Peppolがあると、とにかく広がりが早まるでしょう。当社には、既にBtoBにおけるDtoD(Data to Data)の仕組みがあるため、『Peppolにつなぐ必要がないのでは』と聞かれますが、これは違うと思います。当社は80万社ほどのユーザーを抱えていますが、自社だけで囲えない企業もいます。自社のお客さん同士の請求書は出し受けできるが他社との間ではできず、これを実現するのがPeppolです。私がスウェーデンに行った際、Peppolを利用しているトップベンダー数社にヒアリングしたことがあります。そのとき『なぜライバルにお客さんをあげるようなPeppolを利用しているのか』と尋ねると、『ユーザーが幸せになるから当たり前だ』と言われたのですね。つまり、ドコモやソフトバンクなど異なる企業を利用しているユーザー同士で電話をかけられる、それと同じだというのです。やはり、すべての企業が使えるようになることは必然であり、そのためにもPeppolにつながるベンダーが1社でも多く出てくることが近道だと思います。

加藤氏:つながっていくことが重要という点では、アクセスポイントについてどう考えているのか。TKCではアクセスポイントを作ってPeppolにつなげていくと思いますが、その利用は自社だけに閉じるのでしょうか。

冨永氏:一言でいえばノーという回答になります。中小企業において生産性に関する課題が見受けられる中、トータルでデジタル化を支援したい考えて、アクセスポイントにも参画させていただいています。社会的インフラとして他社にも利用いただきたいです。

加藤氏:まさにインフラとして、きちんと広がりをもてるかどうかがポイントですね。つながっている人がどれだけいるのかは、出し受けよりも重要ですよね。

藤田氏:出すという部分ではデータがポイントになると思います。請求データにおいては、当たり前のように部署単位で微妙に違うなど企業ごとにマージできない状態にあります。これが登録番号で統一されるようになるとデータ処理が簡単になりますよね。たとえば、どの企業がどういう状態で支払っているのか、この企業は毎月決まって3日遅れるといったこともわかるなど、正確なデータを出せるようになっていくのです。言い換えると、正確なデータが出せるようになるためマネーロンダリングのリスクも薄まっていき不正も減少していく、そうすると付加価値が生まれてきます。

加藤氏:こうしたことが重要です、デジタルインボイスと小さくまとまってはいけません。とはいえ、データが正確になるという話でいくと、たとえばマネーフォワードさんが正確なデータを作ったとしても、受け手は大丈夫なのでしょうか。いくら正確なデータを作っても金融機関側が上手く処理できないなどもありそうです。

山田氏:仰っていただいた通りで、業務ツールと金融の間に分断があり、そこの垣根を無くしていくことも仕事だと思っています。金融機関もAPIを開放しており、そこを活用することで業務ツールと金融の垣根を溶かしていき、上流から下流まで一気通貫できるように責任をもって取り組みたいですね。

加藤氏:ぜひ、皆さんでいろいろな垣根を越えていってほしいです。たとえば、インフォマートでは既に80万社が垣根を越えているような形ですが、Peppolではいかがでしょうか。

中島氏:Peppolだともっと規模が大きいでしょう。ただ、これからが大変です。規格だけでは世の中は動きません。電子が嫌だという人もいれば、変化を嫌う人も多くいるでしょう。当社も20年間でノウハウをためており、どうしたら仕組み化できるのか。今は追い風が吹いており、国と協力しながら進めていかなければと思っております。

加藤氏:ぜひ、期待しております。今日は代表して4社にお話を伺いました、皆さまありがとうございました。

*     *     *

 本説明会の最後に岡本氏は、「今回の取り組みは自分たちでも奇跡的だと思っています。ほぼすべての事業者がデジタルインボイスを使えるようにしたく、このタイミングでないとできないでしょう。これだけの会社が一つのことを成し遂げようとしている、日本のデジタル化にとって最大のチャンスです」と締めくくった。

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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