11月11日、金融データ活用推進協会(FDUA)は、第1回 地銀Meet-Up WGを開催した。
はじめに、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー 代表取締役社長/FDUA 顧問を務める安原貴彦氏が「全国規模でのデータ活用は私が入行した当時から言われている。地方銀行と一緒にやっていくことで金融業界全体のデータ活用を盛り上げ、日本だけでなく世界に貢献していくことが大切だ」と開会の挨拶を行った。
次に、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー/FDUA データコンペ委員会 副委員長の永山恒彦氏が登壇。『データコンペがもたらす地銀のデジタル人材発掘・育成』と題して講演。金融機関におけるデータ活用が進まない原因として「何に使えるかがわからない」「人材がいない」「組織がない」という3つを挙げ、それぞれ同協会における「企画出版委員会」「データコンペ委員会」「標準化委員会」3つの委員会によって解消に貢献していくとした。
特にデジタル人材の確保について外部登用は難しく、採用できたとしても銀行特有の環境・文化にあわず退職につながるケースも見受けられるという。そこで、内部人材の育成・発掘に力点を置くべきとして、これまでデジタルに触れてこなかった人材、素養はあるが教育を受けていない人材などを育成するために“データ分析コンペ”を開催するとした。同コンペについては、想定している形式としてSIGNATEを引き合いに出し、自社が抱えるデータ課題をプラットフォーム上に出題し、オープンイノベーションで高精度なAIモデルを獲得できるとして、「ゲーム感覚や趣味、自己啓発の一環で参加でき、賞金獲得や実力証明というインセンティブもある。『集める』『盛り上げる』『活かす』というポイントを踏まえながら、人材発掘に活かしていただければ」と呼び掛けた。
なお、デジタル庁後援の下で「家計変調の予兆を捉える~住宅ローンの延滞予測~」をテーマに、プログラミング初心者以上(書籍・eラーニングを通した知識はあるが実践経験がない人)を参加者対象として、12月末からエントリーを受け付けるとした。
同Meet-Upに参加した地銀各行からコメントが寄せられたあとに、Japan Digital Design 代表取締役CEO/FDUA 理事 河合祐子氏から「金融機関のデータ利用」と題して発表が行われた。近年、収集・分析できるデータの種類や質、量が明らかに変化してきている一方で、データ分析においては「何をやりたいか」「どのようにやるか」を定めた上で始めるべきだと指摘。また、オルタナティブデータへの注目が高まっていることを踏まえた上で、「まずは、新しいデータに手を出す前に『何を知りたいのか』を考えた上で、表やグラフなど簡単なところから分析をしてみて欲しい」と述べる。加えて、分析のための組織づくりについて、全社横断型の組織体が良いとしながらもフォーカスが甘くなる傾向があるため、業務部門ごとに組織を作ったり、慣れてきたらより小さな単位でオペレーション組織を作ったりすることも大切だとした。
次に、七十七銀行 デジタル戦略部 デジタル戦略課 瀬川隼也氏は地銀における取り組みとして同社の事例を紹介。2017年の終わりごろからAIの取り組みをスタートし、2020年には法人既存融資先の1年後の債務者区分ランクダウン予測を開始。内製化を模索してAuto-MLツールを2022年5月に導入し、AI insideとのデータ活用を共同検討、同年11月にはデータ分析チームを設置している。
個別事例としては、『GS8による投資信託・消費者ローンの購入予測』『法人事業性貸出先の業況変化検知』などの取り組みを紹介。2022年からのAuto-MLツール導入によりAIモデル構築を内製化していき、データ活用によるビジネスの新規創発や人材育成などを検討していくという。たとえば人材育成の取り組みにおいては、東北大学とデジタル人材育成に向けた共同研究を進めるとともに、AIやデジタルマーケティングなどに関するオンライン講義などを実施。データ分析チームも設置して「業務効率化」「リスク管理強化」「営業推進強化」を目的に、データ分析案件の発掘・分析も行っていくとした。
最後にSBIホールディングス 社長室ビッグデータ担当 次長/FDUA 理事 佐藤市雄氏が「日本全国でデータ活用に取り組んでいく、そのきっかけとして皆さまと協力してデータを使った取り組みを盛り上げていきたい」と述べて締めくくった。