2023年11月30日、アットホームはAIを活用した事業戦略などについて、記者向けの説明会を開催した。
同社は全国に49事業所を構え、約1,714名の従業員を抱える“不動産情報サービス”を軸とした企業。2022年12月で創業55周年を迎えており、不動産業界においていち早くITを活用するなど、直近ではDXやAIに注力している。蓄積された大規模データに基づき、AIを活用したR&Dなどはアットホームラボが担っており、直近では生成AIの利活用にも取り組んでいるという。
アットホームラボ 代表取締役社長/アットホーム テクニカルディレクター 大武義隆氏は、「AI自身がコンテンツを生み出す点で従来型のAIと異なり、予測・検知AIのようにコスト削減だけでなく、売り上げにも寄与できる可能性がある」と切り出す。不動産業界では、センチュリー21のIT支援システム「21Cloud」に組み込まれたり、海外では「restb.ai」「CYRANO.AI」などが注目を集めていたりする一方、アットホームの調査によると“生成AIを利用している”という回答は全体の1割に留まっている現状があると指摘する。
実際に同社では、物件画像にモザイク処理を加えるような「不適切画像検知」、周辺物件と比較して文章を生成する「物件PRコメント自動生成」など、工数削減につながるような形でAI活用が進んでいるという。たとえば、図面画像から「バス独立・トイレが複数」など、物件の特徴をタグとして生成したり、不動産会社向けに物件画像キャプションを複数生成して選択できるようにしたりと実用されている。
他にも、「AIホームステージング」として、これまでCGで作成したり、実際に家具を搬入して撮影したりしていたものを、生成AIによってペルソナにあわせて自動生成することにも取り組んでおり、特許出願を準備している最中だという。なお、画像生成ではStable Diffusion、文章生成ではChatGPTのAPI連携による社内利用を中心に行っている段階だ。 大武氏は「今は物件を見つけるまでのサービス提供だが、良い家が見つかったとしても必ず満足してもらえるわけではない。これからは住んだ後のことを考えた物件情報の提供を行っていきたい」と話す。
続いて、アットホーム 広報グループ グループ長補佐 西嶋優理子氏が登壇し、ユーザー動向調査『UNDER30』の結果を報告。2023年は「タイプ別 UNDER30の求める住まい」と題し、8タイプに分類しながら調査結果をまとめたという。
全体で見たとき、「間取り・広さ」が最重要視されており、設備では「バス・トイレ別」が最上位となっている一方、趣味に重きを置く人は「収納スペース」がトップになるなど、タイプによって差異が見られる。また、10年前にあたる2013年当時の動向と比べてみると、ワンルームや1Kを選ぶ人は減少しており、最寄り駅までの近さが重要視されなくなったりと「コロナ禍を経て変化が見られる」と西嶋氏。他にもBtoB/BtoC向けに多くの調査を行っていると述べて会見を締めくくった。