現地時間6月4日、米フロリダ州オーランドで、SAPの年次カンファレンス「SAP Sapphire & ASUG Annual Conference 2024」が開幕した。初日の基調講演では「Bring Out Your Best.(ベストを引き出す)」をテーマに多くの発表があった。
SAPコンサルタントおよびABAP開発者向け生成AI機能が発表
オープニングとなる基調講演のホストとして登壇した同社CEOのクリスチャン・クライン氏は、「今年は特別なSapphireになる。なぜならば、私たち全員にとって無限の可能性を秘めたAIの新たな領域に突入するからだ。この2日間を通して、皆さんのベストを引き出すためにどんなサポートができるかを考えたい」と語った。
現在、SAPの製品ポートフォリオは、UXからビジネスプロセス、プラットフォームまで“AIドリブン”なものへと進化の過程にある。エンドユーザー視点では、生成AIアシスタント「Joule」が利用できる製品環境が増えてきたと実感しているはずだ。2023年9月に登場したJouleは、SAP SuccessFactorsから始まり、SAP S/4HANA Cloud、SAP Build、SAP Integration Suiteなどへと利用可能な製品を増やしてきた。2024年後半には、SAP Ariba、SAP Analytics CloudおよびSAPの複数のサプライチェーン管理ソリューションで、Jouleを利用可能にする計画も進行中である。
基調講演における新発表は、CIO、COO、CFO、CHROという4つの幹部役職を想定して行われた。その中で最も多くの時間を割いて説明されたのが、CIO向けのパートである。多くの発表の中、以下2つの新しい生成AI機能群が、日本のSAP導入企業に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
Joule with SAP Consulting capabilities
SAPコンサルタント向けの機能群。企業のSAP導入プロジェクトを支援するパートナーの生産性向上のために提供するもので、SAPは大規模言語モデル(LLM)に、50のSAP認定資格プログラムと20万ページに及ぶSAP製品ドキュメントを学習させた。この機能群を利用することで、SAPコンサルタントはJouleとの対話を通じて、必要な情報を迅速に得られるようになる。加えて、RISE with SAPの導入企業も、移行プロジェクトの工数削減効果が期待できるという。なお、同機能群は2024年後半の利用開始を予定している。
Joule with ABAP Developer capabilities
ABAP開発者向けの生成AI機能群。LLMには2.5億LOCにもなる最新のS/4HANA Cloudのコードを学習させたという。2024年後半にベータ版として、最初の提供開始を予定しているものが、ABAP開発者向けのPaaS「SAP BTP, ABAP Environment」上で、ABAPビジネスオブジェクトを生成できるようにするもの。続く2025年初頭には、SAP S/4HANA Cloud Public Edition、SAP S/4HANA Cloud Private Edition、SAP BTP, ABAP EnvironmentでABAP開発者がJouleを利用できるようにする。さらに、エンタープライズ要件を満たせるコード生成ができるよう、SAPはパートナーのNVIDIAが提供するNeMoを利用し、モデルのパフォーマンス向上にも取り組む。