サイバーセキュリティクラウド、SHIFT、pluszero、レバテックの4社は7月11日、IT人材不足への対策を紹介するメディア向け勉強会を開催した。
サイバーセキュリティクラウド コーポレートコミュニケーション本部 人事部長の下村岳氏は「主体的な学びを加速させる仕掛けづくりの全貌」と題して講演。同社の状況として、エンジニアを中心とした継続的な採用活動により、社員数は増加しているとしつつも「IT人材はまだ足りていない」と話す。
同社はクラウドWAFをはじめサイバーセキュリティ関連製品を提供しているが、全社員のうち8割以上がセキュリティ未経験者だという。下村氏は「入社後に能力開発できる体制を整えている。ただ、あくまで能力開発の主役は『社員本人』」と強調。同社では、業務を通じた学習である「OJT」に加えて、「組織学習」をベースに据える。組織学習とは、「知識の獲得」「情報の移転・解釈」「組織の記憶」のサイクルを回すことだという。書籍購入の補助や社内勉強会の開催、Slackでセキュリティ関連のニュースを共有していることなどを紹介した。下村氏は「目新しい取り組みはないが、当たり前のことをしっかりしている」と話す。
pluszero 執行役員 事業推進部部長 兼 CxO室の野呂祥氏は、2019年に5人目の社員として入社。2020年から採用に力を入れ、100人以上の組織に拡大するまでの取り組みを紹介した。同社は2020年以降、毎年10人以上を採用し続けているが、採用単価は相場より安い70万円前後に抑えられているという。その理由に、同社の採用チャネルとして、ダイレクトリクルーティングとインターン生の新卒入社が8割を占めていると明かした。
インターン生については、採用時にスキルの有無は問わず、積極的に受け入れ、数年かけて育成する。就職のタイミングで毎年5~10人に入社オファーを提示しているとした。一方、中途採用はダイレクトリクルーティングを中心に行う。しかし、求職者に直接スカウトを送るため担当者の負担は大きい。それでも野呂氏は「応募を外部に委託することで、エンジニアの魅力を正しく伝えられるのか、応募が集まらなかったときに改善サイクルを回せるのかが不安。そこで、なるべく自分たちの手で行って、分析することにこだわっている」と話す。
SHIFT 採用開発部 採用開発グループ 採用広報の中村悟氏は、IT人口400万人を目指す取り組みを紹介した。ソフトウェアテストをコア事業にもつ同社は現在、右肩上がりに事業拡大しており、2023年度はグループ全体で2,600人以上を採用し、社員数は1万人を超える。
ここまで積極的な採用に取り組む背景として中村氏は「日本は人口減少する中、生産性を向上させることが不可欠。IT人口を増やすことで貢献できると考える」と話す。同社は、IT人口を現在の108万人から2030年までに160万人、そして将来的には400万人になることを掲げ、そのリーディングカンパニーになることを目指しているという。具体的に同社の採用では、「未経験第二新卒採用」「ベテランIT人材採用」「地方採用」に力を入れている。中村氏は「IT人材が抱える『不』を解決してITエンジニアを増やしていきたい」と述べた。
ITフリーランスを活用した新時代の開発について、レバテック ITソリューション事業部部長(兼 ITフリーランス支援機構 副理事)の小池澪奈氏が講演。IT人材の求人倍率は12.0倍(2023年12月時点)であることを挙げ、他業界と比べても高水準であると指摘した。そんな中、フリーランス案件および希望する人がともに急速に伸びている現状も明かす。
ITフリーランス活用の具体的な事例として小池氏は2つ紹介した。大手ミシンメーカーのJUKIでは新規事業開発における開発組織の立ち上げや社員の育成を、SOMPOホールディングスではSIerに頼ることなくプロジェクトを進行できる人材をフリーランスとして採用したという。企業側のメリットとして小池氏は、「必要なときに必要なスキルを持つ人を採用できる。新規事業など、正社員の予算を確保することが難しい組織では固定費の削減にもつながる」と話す。ただ、ITフリーランスだけで進める案件ばかりではない。小池氏は、正社員とミックスすることが大事であると強調する。
ITフリーランスが広まる意義について、小池氏は人材の流動性向上、新たな働き方の選択肢になることを挙げた。2024年11月には「フリーランス保護新法」の施行など法整備も進む現状も紹介。最後に小池氏は「いま必要な企業に、いま必要な人材をつなげていく。こうした面から日本の開発生産力を上げていきたい」と意気込みを語った。
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