Autodeskは2024年7月18日、建設業界におけるデジタルアダプションの現状に関する調査レポートを発表した。
今年で2回目となる同調査はDeloitte Australiaの協力のもと、オーストラリア・シンガポール・日本・インド・マレーシア・香港の計6ヵ国に拠点を置く、建設・エンジニアリング企業933社を対象に実施。レポートでは、建設・エンジニアリング業界に影響を与える新たなトレンド、デジタルテクノロジーの導入効果や現在の先行き不透明な時代における今後の展望について調査した結果をまとめているという。詳細な調査結果は以下のとおり。
アジア太平洋地域全体における主な調査結果
- アジア太平洋地域では建設会社の30%がAIと機械学習を既に業務で活用しており、さらに39%が将来的にAIと機械学習の利用を計画している
- ジェネレーティブAIは建設・エンジニアリング業界において基盤技術として普及することが期待されており、現在AIや機械学習をビジネスに取り入れる計画のある企業は94%
- ビジネスの成長を支えるテクノロジーの役割の重要性はますます認識されてきており、新しいテクノロジーを新しいプロジェクト作業の支援と考える企業(38%から45%へ増加)と、社内プロセスの改善と考える企業(37%から43%へ増加)の両方が増加
- 共通して最も多く利用されていた技術は、データアナリティクス(47%)、建設管理ソフトウェア(43%)、モバイルアプリ(40%)など、建設業務のバックボーンを提供する基盤技術
テクノロジーアダプションの現状
アジア太平洋地域の企業に何種類の施工テクノロジーを使用しているか聞いたところ、平均5.3種類の建設テクノロジーを業務に使用していることがわかった。
日本企業はまだデジタルアダプションの初期段階にあり、使用しているテクノロジー数は平均で2.9種類と他の市場と比較して最も低い結果となった。同社は、このような市場間の格差は今後も続くだろうと述べている。また、テクノロジーの利用を大幅に増やそうと計画している日本企業は少なく、新しいテクノロジーへの支出に占める割合は調査対象国の中で最も低く、14%にとどまっている。
しかし、テクノロジーを導入している日本企業では、収益率が他国と同程度であることから、さらなる導入が大きな利益をもたらす可能性があることが示唆されているとしている。たとえば清水建設は、一人の作業員が現場の複数のロボットを操作できるテクノロジーを導入し、労働生産性の大幅な向上を実現したという。
建設分野におけるAIの重要性の高まり
アジア太平洋地域の企業の約95%が、AIは5年後のビジネスの展望にとって重要になると考えている。大企業ほどテクノロジーを将来の成長の中核要素と考えている傾向が強く、AIを非常に重要と考えている大企業は、中小企業の4倍にのぼるという。
テクノロジーアダプションの拡大がもたらす恩恵
アジア太平洋地域全体でテクノロジー導入のメリットとして最も多く挙げられているのはコスト削減に直結するもので、46%の企業がそれを挙げている。そのほか利益の増加(42%)、生産性の向上(39%)なども挙げられている。日本では「効率の向上」「コストの削減」「マージンの改善」がテクノロジーアダプションのメリットトップ3となっており、利益に直結する効果を重要視していることが伺えるとしている。
実際、80%以上の企業が、データ分析・モバイルアプリ・ロボット工学・プレハブ モジュール建設・施工管理ソフトウェアを導入することで、強力なビジネスリターン、またはプラスの投資対効果を得られたと考えているとのことだ。また、これらのテクノロジーを使用している企業は、拡張現実や仮想現実(成果が15%増)、AIや機械学習(成果が13%増)、デジタルツイン(成果が11%増)などの高度な技術の導入に成功したと回答する割合が高くなっているという。
テクノロジーアダプション拡大の障壁を乗り越えるために
今回の調査で、94%の企業が導入の障壁に直面していると回答。また、アジア太平洋地域における42%の企業が、デジタルテクノロジーを取り入れるうえで最も一般的な障壁として、「従業員のデジタルスキルの不足」を挙げている。
一方で日本企業は、テクノロジーアダプションにおける最大の障壁は「テクノロジーにかかるコスト」であり、次いで「スキル格差」だと考えているという。
そのうえで、アジア太平洋地域では労働者を新規採用する企業が75%、既存の労働者のスキルアップを図る企業が80%であったのに対し、日本企業ではそれぞれ58%、66%とスキル不足を克服するための対策を講じる企業が少ないという結果になった。
デジタルアダプションを改善するために優先すべき5つのアクション
同レポートでは、デジタルテクノロジーの業務への統合を改善しようとする企業に対して、以下の5つの分野に焦点を当てることを推奨している。
- DXは小規模から始め、規模を拡大する際には変更管理コストを考慮する
- 企業内のテクノロジー変革のリーダーを選ぶ
- デジタルアダプションに関して、様々な成功の尺度を追跡する
- デジタルエコシステムを構築する
- 自社のビジネスがAIに対応しているかどうかを確認する
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