フォーティネットジャパンは、岡山県真庭市による「自治体強靭化β‘モデル」におけるゼロトラストネットワークアクセスの実現に、次世代ファイアウォール 「FortiGate 600F」と統合エンドポイントエージェント「FortiClient」を導入したとを発表した。
同市による自治体強靭化β‘モデルへの移行は、2024年10月より試験運用が開始され、現在庁内200台以上に導入済みだという。同システムは、2025年秋に全庁で本格稼働の予定だとしている。
真庭市は、地域通貨「まにこいん」を市民の55%に当たる約2万3000人が利用するまでに浸透し、市民と行政の接点の役割も果たすなど、デジタル技術の活用にも積極的だという。今年は、2021年に始動した「真庭市dx戦略計画」の最終年度にも当たるとのことだ。
一方で、約750名の職員を、情報システム専属の職員2名のみでサポートする状況にあり、高い負荷がかかっていたという。また、同市の地理的特性としての広大な面積も課題の一つだったとのこと。真庭市は、全国地方自治体の中でも早くから、当時としては先進的なシンクライアントシステムを導入して三層分離のαモデルを構築し、安全な業務環境を実現してきたという。しかし、この三層分離モデルの下では、リモートワークのほか、インターネット閲覧やメールの添付ファイルのダウンロードなどといった日常業務のたびにシンクライアントを立ち上げ、さらに専用の仮想ブラウザを立ち上げての認証が必要など、庁内での業務にも多くの制約と負担が生じていたとのことだ。
こうした状況を打破し、少子高齢化が進む中でも住民サービスの質を向上させ、効率的に業務を行うため、クラウドサービスをはじめとするデジタル技術を一層活用する方針が決定されたとしている。
しかし、マイナンバー系の機密性の高い情報を預かる地方自治体は、これを保護するための情報セキュリティ対策が、『地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』に示されている。従来、ネットワークをインターネットと分離した自治体強靭化αモデルが基本となっていたが、政府の推進するクラウドバイデフォルトにより、地方自治体においてもクラウドの利活用推進の気運が高まってきた。令和6年10月版のガイドラインでは、クラウド利活用のための自治体強靭化α’モデルやβモデル、β’モデルが示されている。
この中で、業務効率性も利便性も最も高いとされるβ’モデルは、一方で厳格なセキュリティ対策が要求されるため、政令都市を除く市町村では、未だ80%以上がいわゆる「三層分離型」のαモデルに留まっているという(2023年時点/出典:総務省『地方公共団体のセキュリティ対策に係る国の動きと地方公共団体の状況について』)。
厳格なセキュリティ要件や、導入・運用コストを危惧してβモデルへの移行さえ躊躇う自治体が大半を占める中、真庭市がβ’モデルへの移行を決定できたのは、前述のdx推進戦略や「まにこいん」の浸透、成功により、市民からも市政上層部からも理解や支援を得やすかった点が一因となっているという。
導入されたソリューションと今後の展開
こうして真庭市では、2023年度にLGWAN系ファイウォールの更新、クラウドサービスの本格的な活用とあわせ、業務システム、業務端末の両方をインターネット接続系に移行し、情報資産単位でのアクセス制御などといった対策で、セキュリティを担保するβ’モデルを目指す方針が決定されたとのことだ。
β’モデルとゼロトラストの考え方を実現し、将来的にも拡張性の高いネットワークとセキュリティの基盤として採用されたのが、FortiGate 600FとFortiClientだったとしている。セキュリティ専用ASICによる高速性、ゲートウェイとクライアントソフトウェアとの連携が担保され、運用面での負荷もかからない点、将来の先進ITシステムにも対応できる拡張性も高く評価されたとのことだ。

これにより、再びコロナ禍のような事態が起きても市民をリモートからサポートできるよう容易に切り替えられ、職員の柔軟な働き方も可能に。また、従来から利用開始していたKintoneやカオナビなどに加え、より汎用的なMicrosoft 365などのクラウドサービスの活用を一層積極化することにしたという。
今後は、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)とローカルブレイクアウト(LBO)、テナント制御なども段階的に実現し、顔認証技術など他のソリューションとも統合していく計画とのことだ。また、この基盤をベースに働き方改革を進め、電子申請の活用や「まにこいん」のスーパーアプリ化などで住民向けサービスの質の向上を図り、住民との新たな連携を作っていく予定だとしている。
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