NTTデータは2026年2月12日、KVM(Kernel-based Virtual Machine)ベースの仮想化基盤サービス「Prossione Virtualization 2.0」の説明会を開催した。2025年7月に提供開始した1.0から大幅に機能を拡充し、専用OSの同梱、GUI/APIによる一元管理、高可用性機能、仮想マシン移行支援ツールなどを備えた“本命バージョン”として、2026年3月から提供を開始する。VMwareのライセンス体系変更を背景に仮想化基盤の再選定が進む中、「主権を確保したシステム基盤」を掲げ、国内市場への本格展開を狙う。
説明会の冒頭に登壇したテクノロジーコンサルティング事業本部長の新谷氏は、NTTデータが取り組むシステム基盤の全体像から説明を始めた。NTTデータはパブリッククラウド領域では「OpenCanvas」ブランドでOracle AlloyやGoogle Distributed Cloudを活用したサービスを展開しているが、仮想化基盤の領域ではVMwareやNutanixといったベンダー製品に依存しており、「システム主権を確保しきれていない」状況があったという。
背景にあるのは、VMwareの買収後に進んだライセンス体系の変更だ。大手企業向けの包括契約が中心となり、仮想化環境だけを必要とするユーザーにとっては選択の自由が狭まった。こうしたライセンス変更に対応するため、NTTデータが自社のKVM運用ノウハウを製品化し、昨年発表したのがProssione Virtualization 1.0だった。
VMwareからの移行市場について新谷氏は、「当初4分の1が乗り換えるとの見通しもあったが、実際にはさほど移行は進んでいない」と現状を説明した。ただし「技術的な問い合わせや移行に関する問い合わせは100件以上来ている。ここからいよいよ移行が本格化するのではないか」と手応えを示す。
こうした中、今回発表されたのがProssione Virtualization 2.0である。金融機関向けシステムや社内の開発環境でKVMベースの仮想化基盤を長年運用してきた実績を基盤としており、新谷氏は「利便性と継続性の両立」を製品のコンセプトに掲げた。
続いて登壇したOSSソリューション統括部の濱野氏が、2.0の具体的な機能を解説した。濱野氏は「1.0は急いで欲しいお客様に合わせてリリースしたものだった」と語り、「本命である2.0のバージョンがようやく提供できるようになった」と述べた。
2.0では、まずKVM仮想化基盤に最適化された専用OS「PVOS(Prossione Virtualization OS)」を同梱した。1.0ではユーザーが別途Linuxディストリビューションを用意する必要があったが、2.0ではサイバートラストとの技術協業により開発された専用インストーラを使うだけで仮想化基盤を構築できる。従来のKVMベースの手動構築と比較して約60%の構築工数削減を実現するという。OSから管理機能までを一貫して最適化し、サポート窓口も一本化されたことで、ユーザーによるOSとプロダクト間の障害切り分けも不要になった。
管理ツール「PVM(Prossione Virtualization Manager)」も1.0から大幅にアップデートされた。ホストサーバー、仮想マシン、ネットワーク、ストレージをGUI上から一元管理でき、APIによる外部システム連携にも対応する。1.0時代にはコマンドラインとの併用が必要だった操作が、2.0ではGUIまたはAPIで完結する設計となっている。濱野氏は「専門的な知識がなくてもかなり難しいことができるようになる」と、属人化の解消にも効果があることを強調した。
他の仮想化基盤からの移行を支援するツール「PV-V2V」も新たに搭載された。移行手順の大部分を自動化し、LinuxおよびWindows Serverの仮想マシンに対応する。移行作業工数を約6割削減できるとしている。
エンタープライズ顧客が強く求めていた高可用性機能「PV-HA」も2.0の目玉だという。ホストサーバーの物理故障を検知すると、そのサーバー上の仮想マシンを待機系ホストで自動的に再起動する。設定は「フェイルオーバー先の指定」と「HAの有効化」のわずか2ステップで完了し、99.999%の高可用性を実現する。「裏ではかなり難しいメカニズムが動いているが、非常に簡単に設定できる」と濱野氏は説明した。
機能面に加え、サポート体制も2.0の重要な訴求点である。Prossione Virtualizationでは、LTS(Long Term Support)版に対して8年間のサポートを標準で提供する。2.0から2.1、2.2と段階的にアップデートを重ね、ある段階でLTS版として固定し、そこから8年間サポートを継続する方式だ。
「金融機関のシステムは短いもので5〜6年、実際には7〜8年のスパンで運用される。ある程度の長期サポート期間がないと選ばれない」と新谷氏は語り、金融や重要インフラ事業者のニーズに応えるものであることを強調した。濱野氏も、まず2.0の導入顧客をしっかりサポートした上で、不足箇所や改善点を2.1、2.2といったマイナーアップデートで順次対応していく方針を示しており、バックアップ支援機能や仮想ストレージ連携といった要望への対応もロードマップに含まれているという。
価格は標準で年額90万円/台(税別)。2027年3月31日までに契約した場合は、年額65万円/台のキャンペーン価格が契約期間を通じて適用される。課金はKVMが稼働するホストサーバー台数に基づき、全機能を一括提供する。
販売体制も拡充した。1.0提供開始以降に寄せられた約200件の問い合わせを受け、新たに6社とサポートパートナー契約を締結。SB C&S、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、日立製作所などを通じた購入が可能になった。
特に日立製作所との協業は、今回の説明会で詳しく紹介された。日立製作所のハイブリッドクラウドサービス本部の滝沢氏が登壇し、Prossione Virtualizationに日立独自の高信頼化機能(I/O信頼性強化、トラブルシュート強化機能)を組み合わせ、クラウド型の「Hitachi EverFlex クラウドサービス」とオンプレミス型の「Hitachi Private Cloud Platform」の2つの形態で顧客に提供する計画を説明した。
「透明性の高いKVMへの移行を検討するお客様が増えると見込んでいる。NTTデータとの協業を通じて社会インフラを支えていきたい」と滝沢氏は語った。日立はAIソリューション群「Lumada」のIT基盤としての活用も視野に入れている。
濱野氏は市場環境について「実はあまり競合製品はない」と述べ、グローバルでも同様のニーズに応える製品が少ない現状を指摘する。海外展開については「現時点で具体的な体制は表明していないが、国内のお客様がグローバルで使いたいというニーズはあり、海外パートナーによる取り扱いも前向きに検討したい」と将来的な可能性にも言及した。
「NTTデータが最後まで責任を持ってやり遂げるということが、お客様にとっての安心感だ。経済安全保障の観点からも、重要インフラ事業者や公共領域に国内で製品供給していくことが求められている」と濱野氏は述べ、Prossione Virtualizationを日本発のシステム基盤として育てていく姿勢を示した。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
