ワークスアプリケーションズ(以下、WAP)は2026年6月4日、事業戦略説明会を開催し、主力ERP製品「HUE」を業務・データ・AIを統合するAIドリブンプラットフォームへ進化させるとともに、業務変革の実装を伴走支援する新サービス「OXYG(オクシブ)」の本格始動を発表した。
まず、代表取締役 CEO 秦修氏が登壇。同社の導入・取引実績が約2,500社にのぼるなど順調な成長の一方で、同社が実施した独自調査では、約5割の企業が将来の労働供給不足に危機感を抱き、6割の企業で業務変革が停滞している実態が浮き彫りになったという。秦氏は「日本企業は労働供給力の低下とDX推進の形骸化が二重の負荷となり、まさに『酸欠』の状態だ。自社リソースだけで業務変革を完結できると答えた会社はわずか6.6%にすぎず、信頼できる伴走者が求められている」と指摘する。この状況を打破するため、HUEを業務処理システムから「信頼できるチームメンバー」へ進化させると宣言した。
(左から)株式会社ワークスアプリケーションズ 執行役員 プロダクトマネジメント本部 本部長 外村卓也氏
同社 代表取締役 CEO 秦修氏
同社 執行役員 OXYG本部 本部長 中井陽一郎氏
従来のERPは大量の画面操作や単調な入力作業、膨大な維持費用といった負の側面が社会問題化しつつある。しかし、AI技術との融合により、文脈(コンテキスト)の理解とアクションの自走(自律的な処理)が可能になったことで、画面操作そのものを削減する「ゼロオペレーション」への道が開けるという。現在はAIが一定の作業を代行する「レベル4」に到達しており、今後は人間が判断すべき創造的領域にリソースを集中させる環境を整えていくとした。
続いて登壇した執行役員 プロダクトマネジメント本部 本部長 外村卓也氏は、HUEの具体的な製品構造とAIエージェントの実装例を解説。WAPは、日本の大手企業によくある複雑な業務要件に対応した標準機能を強みとしており、アドオンに依存しないことでデータ構造の分断を防ぐ「クリーンコア」を実現していることを強調した。外村氏は、そのままの形で汎用AIをエンタープライズ規模の業務領域に適用する際のリスクを排除するため、統制と信頼が不可欠であるとし、「人がAIを信頼できる状態でなければ仕事を委譲できない。我々が培ってきた業務ナレッジをAIの後ろで働かせることで、AIに統制と信頼を与えていく」と説明。
AI技術を実装する新しいHUEのソリューションラインアップとして、財務会計や管理会計、債権・債務管理、経費精算、新リース会計対応サービスなどを網羅する「Composable ERP」を中心に据えつつ、アプリ開発や汎用ワークフローを提供する「Business Platform」、データウェアハウスやデータ連携基盤を構築する「Data Platform」もHUEブランドで提供する。さらに、これらをつなぐ存在として組込み型AI・会話型AIの「AI Agents」を位置付けた。
2026年7月リリースの新バージョンにおいて、ワークフロー上でAIが自ら承認理由や否認根拠を示して処理を行う「AI承認者」などの機能を提供すると発表した。また、新リース会計に対応した「新リース会計アドバイザー」や、組織の権限を考慮してスケジュール調整を行う「スケジュール調整AIアシスタント」といった会話型AIのほか、MCPサーバー対応による外部AIツールとの連携基盤も提供し、システム操作の自動化を加速させるという。
次に、新サービスOXYGの戦略は執行役員 OXYG本部 本部長 中井陽一郎氏が説明。同事業は、既存顧客から寄せられた「財務経理人材が部内で不足している」という切実な声が発足の背景だったという。リクルートワークス研究所の調査によると、国内の労働供給は2030年に341万人、2040年には1100万人が不足する見込みであり、バックオフィス業務も例外ではない。中井氏は「人が足りないので変革をする余裕がないという負のスパイラルを打破するために、実行支援までともなった信頼できる外部パートナーとしてOXYGをローンチした」と語った。
同サービスは、従来のコンサルティングに見られた曖昧な成果物や長いリードタイムを解消するため、メニューをあらかじめパッケージ化。用意されたメニューから選択するだけと、変革のハードルを下げているのが最大の特徴である。最新動向を調査するAIシンクタンクなどの「リサーチ」、業務知識を組み込んだAIエージェントをデジタル社員として配属するDWaaS(Digital Workforce as a Service)などの「デジタルワークフォース」、そして「コンサルティング」の3つからなり、全9つのサービスを用意。
中井氏は具体事例として、他社の経費精算システムを運用する企業の承認業務に対し、ワークフロー自動化ツール「n8n」を活用して目視確認フローを自動化させたことを明かした。加えて「いたずらに人を減らすのではなく、定型業務をデジタルワークフォースに任せることで、限られた人材がいち早くリーダーとして育ち、マネジメントを担えるようになるといった組織変革を支援する」と強調する。
発表会の締めくくりとして秦氏は、専門知識を持つ多様なパートナーとのエコシステムをさらに強固にしていく方針を示し、製品や運用を理解している同社だからこそできる一気通貫の伴走支援によって、日本企業の成長エンジンを再起動させていくという今後の展望を語った。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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