富士通は、生成AIの進化や企業システムの複雑化に対応し、企業のサイバー防衛能力を継続的に進化させるサイバーセキュリティ戦略を策定した。
同戦略では、サイバーセキュリティを「ITシステム構築後の運用対策」としてではなく、戦略立案、設計・開発、実装、運用、評価、改善までを一体的に捉える「サイバー防衛ライフサイクル」として実践するとのことだ。
同戦略のもと、企業全体のサイバー防衛能力を構築・運用・改善するための考え方を体系化したサイバー防衛運用モデルと、その実践的な枠組みとなるサイバー防衛フレームワークを定義。また、そのフレームワークで得られたデータから脅威やリスクを感知し、観測・分析結果を可視化することで、個々の防衛活動を方向づけ、現場の自律的な実行サイクルを促すための仕組みとして「Cyber Nerve System」を構築すると述べている。
加えて、サイバーセキュリティ戦略の中核となるバーチャル組織「Cyber Security Nerve Center(以下、Nerve Center)」を設立。Cyber Nerve Systemから得られる客観的な評価やエビデンスに基づき、経営陣への報告・提言をすることで意思決定の支援を行う組織だという。カスタマーゼロとしての実践や、顧客支援を通じて培った知見を集約するほか、市場や脅威、技術の動向を踏まえて、サイバーセキュリティ戦略を横断的に推進するとのことだ。また、必要に応じて新たなプロダクトや機能を開発し、自社環境で実効性を検証した上で、コンサルティング、高性能AIを活用した脆弱性診断、AI脅威ハンティング、AIレッドチームオペレーションなどの防御機能として顧客へ展開するという。

サイバーセキュリティ戦略の特徴
AI時代の企業のサイバー防衛を定義する4つのサブモデル
サイバー防衛運用モデルは、以下4つのサブモデルを通じ、防衛対象、防御思想、防衛責任、防御レベルを体系的に整理。対策の優先順位や必要となる投資を明確化することで、企業の防衛能力とサイバーレジリエンスの継続的な向上を支援するという。
- Fujitsu Cyber Defense Domain Model:企業として守るべき対象を定義。守る対象を、機器の種類ではなく業務上の役割に基づいて捉え、IT領域に加え、監視カメラや医療設備などの物理領域を含む企業全体の防衛対象を定義する
- Fujitsu Cyber Defense Philosophy Model:防御の基本思想を定義。攻撃を完全に防ぐことだけを目的とせず、攻撃者の行動を遅らせることで防御側に時間的優位を生み出し、観測することで追加対策の実施などにつなげる「減速防御」の考え方を取り入れる
- Fujitsu Cyber Defense Relationship Model:企業を取り巻く関係性からサイバー防衛を定義。グループ会社やパートナー企業との関係性に応じて防衛責任や防御範囲を設計し、サプライチェーン全体のサイバーレジリエンス向上を目指す
- Fujitsu Cyber Defense Proximity Model:防御レベルを定義。攻撃者の目的達成との距離に応じて必要な防衛活動を整理し、企業が目指すべき防御レベルやセキュリティ対策投資の優先順位を明確化
サイバー防衛フレームワークによる企業防衛の構築・運用・改善
サイバー防衛運用モデルを実践するために、構築・運用・継続的改善を通じて実効性を高め続けるための実践的な枠組みである「サイバー防衛フレームワーク」を定義しているとのこと。これにより、企業のサイバー防衛をITシステム構築後の運用対策だけでなく、戦略立案、設計・開発段階から運用、改善までを含めたサイバー防衛ライフサイクルとして実践することが可能になるとしている。加えて、高性能AIを活用した脆弱性診断、および政府が主導する「Project YATA-Shield」への貢献なども目指すとのことだ。
また、同フレームワークを実行する中で得られるデータから脅威やリスクを感知し、観測・分析結果を可視化することで、個々の防衛活動を方向づけ、現場の自律的な実行サイクルを促すための仕組みとしてCyber Nerve Systemを構築するという。
サイバーセキュリティ戦略の中核となるNerve Center
Nerve Centerは、Cyber Nerve Systemの戦略・方針の策定や、Cyber Nerve Systemから得られる客観的な評価やエビデンスに基づき、システム停止やサイバー防衛の優先順位・投資方針などの経営陣への報告・提言をすることで、意思決定の支援を行う100名規模のバーチャル組織だという。
また、富士通研究所やUvance Wayfinders、サービス開発部門、ミドルウェア開発部門、デリバリー部門の知見や技術を結集することで、技術導入やサービス開発を含めたサイバーセキュリティ戦略を横断的に推進。加えて、市場環境や脅威動向を踏まえながら、スタートアップや外部パートナーなどからも新たな技術を取り込み、富士通自身のサイバーセキュリティ戦略へ反映するとしている。
既に実践・検証を進めている高性能AIを活用するだけでなく、富士通がカスタマーゼロとして培った実践知や顧客環境からのフィードバックを組み合わせ、Cyber Nerve Systemや各種サービスへ反映することで、企業の防衛能力そのものを継続的に進化させていくことを目指しているとのことだ。
さらに、こうした実践知をもとに、AI脅威ハンティングやAIレッドチームオペレーションなどの高度なサイバー防御機能のサービス化を推進すると述べている。
サイバー防衛を支える高度専門人材の育成
富士通のセキュリティマイスターを通じて、サイバーセキュリティ人材の育成を推進するという。Nerve Centerで蓄積された実践知や最新の脅威分析結果、実際の防衛活動から得られた知見を教育プログラムへ継続的に反映することで、社内ホワイトハッカーやセキュリティアーキテクトなどの高度専門人材を育成し、AI時代のサイバー防衛を担う人材基盤を強化するとのことだ。
【関連記事】
・NECの国産LLM「cotomi」、Acompanyとの実証で秘匿環境下での推論実行に成功
・日立ソリューションズ、量子コンピュータ時代に向けた耐量子計算機暗号の検証結果を発表
・キヤノンITS、SCS評価制度対応のセキュリティ診断サービスを拡充 実行計画策定・実装支援を提供へ
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- この記事の著者
-
EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
