A.T. カーニーは、論考『データセンター・シェル供給網の再考──レガシー建設から俊敏なオーケストレーションへ』(英題:Rethinking the data center shell supply chain: from legacy construction to agile orchestration)を公開した。
同論考では、AIワークロードの加速、電力密度の上昇、展開期間の短縮が進む中で、データセンター供給モデルを案件単位の実行からポートフォリオ単位のオーケストレーションへ転換する必要性を示しているという。
現在、大規模データセンターは、世界経済において最も資本集約的で供給制約の強いインフラシステムの一つになっているとのこと。GPUとサーバーのアーキテクチャは12~18ヵ月周期で進化する一方、特注設備の納期は18~24ヵ月に及ぶ可能性があるという。同論考では、従来型EPCモデルの限界を踏まえ、サプライチェーン主導の供給モデルへ移行する4つの基盤ステップを提示しているとのことだ。
GPU・サーバーは12~18ヵ月周期で進化、設計と展開のサイクルが重複
データセンター建設は、複数分野にまたがる設計、長納期設備、複雑な許認可、高い資本集約性という点で、従来EPC案件と共通している。しかし同論考では、大規模データセンターを展開する大手企業が現在構築している施設の規模と変動性が、供給をめぐる課題を根本から変えていることを指摘しているという。
GPUとサーバーのアーキテクチャは、現在12~18ヵ月周期で進化しているとのこと。この変化は、ラック重量、床荷重、電力密度、冷却アーキテクチャといったデータセンター・シェル要件に直接波及するとしている。また、電力へのアクセスはデータセンター展開における決定的な制約であり、どこに建てるかだけでなく、どのように設計するかも左右すると述べている。

特注設備の納期は18~24ヵ月、従来型EPCモデルの限界が顕在化
少数のグローバルサプライヤーが、重要な長納期の電気・機械設備の大半を供給しているのが現状である。特注設備の納期は18~24ヵ月に及ぶ可能性があり、大規模データセンターを展開する企業の間では、限られた生産枠をめぐって競争する状況にあるという。その競争相手は同業他社だけでなく、安定的かつ長期的な需要を提示する電力会社や重工業の顧客にも及ぶとのことだ。
同論考でいう従来型EPCサプライチェーンとは、設計を前倒しで確定し、調達が固定仕様に従い、サプライヤーを主として案件単位で管理する供給モデルを指す。安定した環境では有効である一方、大規模データセンターでは、長納期設備の判断が需要とアーキテクチャ前提の安定前に下されることが多くなっているとのことだ。製造が始まると柔軟性は急速に失われ、その後のワークロード構成や設計要件の変化は、コスト、遅延、活用しにくい設備を生むとしている。
4つの基盤ステップで「案件実行」から「ポートフォリオ・オーケストレーション」へ
俊敏で、サプライチェーン主導のデータセンター供給モデルへの移行は、単一の施策やシステム導入によって実現するものではないとのこと。意思決定、ガバナンス、ポートフォリオ横断の拡張のあり方を変える能力を、意図的かつ順序立てて積み上げる必要があるという。
その道筋は、4つの基盤ステップで構成されるとのことだ。第一に、案件実行からポートフォリオ・オーケストレーションへ移行するための戦略的な役割とプロセスを確立する。第二に、拠点、地域、設計、サプライヤーを横断して比較可能かつ強固なデータ基盤へ投資する。第三に、需要計画、エンジニアリング、サプライチェーン、財務、サプライヤーを横断する意思決定のフレームワークと、反復可能なリズムを確立する。第四に、役割、プロセス、データ基盤を確立したうえで、接続型デジタル基盤によってモデルを効率的かつ持続的に拡張する。
これらのステップを飛ばしたり、順序を誤ったりすれば、「権限なきツール」「意思決定なきデータ」「速度なきガバナンス」という構造的摩擦が生じるとしている。一方、正しい順序で構築することで、サプライチェーンは、スピード、確実性、選択余地を大規模に両立させる「ポートフォリオコントロール機能」として機能すると同社は述べている。

【関連記事】
・ミスミグループ、データセンター/ヒューマノイドロボット需要の拡大に対し約46億円を新たに投資
・NTTデータとダイキン工業、データセンター向け冷却最適化ソリューションを共同検証 AIでサーバー内部の熱状態を予測
・アリババクラウド、国内5ヵ所目のデータセンターを開設 AI開発プラットフォームも提供開始
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- この記事の著者
-
EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
