この調査は、SASのソーシャルメディア分析ソリューション「SAS Social Media Analytics」およびテキストマイニング・ソリューション「SAS Text Miner」により、米国とアイルランドにおける約50万のブログや掲示板、ニュースサイトから抽出した2年分のソーシャルメディアデータを分析し、そこにおける発言から人々の日々の葛藤と失業率との関連を検証したものだという。
SASは、スコア化したソーシャルメディア上の「雰囲気」と会話量を、公式な雇用統計と比較し、失業に関連する話題の増加が失業率上昇の指標となっているかどうかの分析を行ったという。その結果、食料品の買い控え、公共交通機関の利用増加、グレードの低い自動車への買い替えなどに関する会話の増加が、失業率急増の前兆であることがわかったとしている。
失業率が急増した後は、旅行のキャンセル、医療費の節約、差し押さえや立ち退きといった話題がソーシャルメディア上で多く見られるようになるという。失業率の増加による悪影響を緩和したい政策当局にとっては、こうしたタイムラグを伴う経済現象についての情報も貴重な手がかりになるとしている。
国連グローバルパルスでは、こうした新しいタイプのデータを用いることで、各種危機が世界の人々に及ぼす影響に関する公式統計を、どのように補完・補強できるかについて研究を行っているという。SASと国連グローバルパルスによる調査は、ソーシャルメディアというこれまでにない強力なデータソースを活用し、それらを分析することによって、政策当局はリアルタイムのフィードバックを得ることが可能となり、危機への対応力を高めることができることを示唆しているとしてる。
また、ソーシャルメディアに関わる国別の雰囲気の変化も、失業率増加の指標となり得るという。感情の分析から、それぞれの失業者の発言ごとに、彼らが将来について楽観的であるか、あるいは悲観的であるかを示す「ムードスコア」が得られる。SASでは、「車を差し押さえられた」「家の差し押さえ手続きに入った」などの言葉をもとに、住宅、輸送手段、ファイナンスなどのテーマごとにデータ分類を行ったという。
それによると、米国では、「とげとげしい」あるいは「落ち込んだ」雰囲気が会話の中で増えたのは、失業率急増の4か月前だったという。アイルランドでは、失業について「不安を感じる」という会話が増えてから5か月後に、失業率が急上昇したという。「悩んでいる」という会話は3か月前に増加し、一方「自信がある」という会話は失業率増加の2か月前に急に影をひそめたという。
■ニュースリリース
http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/news/press/201203/29.html