クラウド利用中の企業は、78.7%がIT戦略に影響を与えると回答
国内市場では、クラウドは広く普及をはじめた。また、クラウドは登場して以来、ITを大きく変革するといわれてきたが、クラウドがIT戦略に影響を与えると考える企業は、決して多いものではない。
現在(2015年)のIT戦略に、クラウドが影響を与えると考える企業は44.8%にとどまっている。また、2年後(2017年)のIT戦略においても、クラウドが影響を与えると考える企業割合は50.1%だった。
一方、パブリッククラウドサービスやプライベートクラウドなど、何らかのクラウドをすでに導入/利用中の企業では、クラウドが現在のIT戦略に影響を与えると考える企業割合は78.7%(「強く影響」35.6%、「少し影響」43.1%)となった。
また、2年後のIT戦略では、クラウドが「強く影響」を与えると考える企業割合は48.5%。これらのことは、実際にクラウドを利用したことによって、クラウドの価値を認識する企業が多いことを示している。また、IT戦略に対するクラウドの影響度が、年々高まっていくことを表している。
効率化だけではないクラウドの価値をベンダーは訴求し続ける必要
クラウドは高い技術力を有する企業や、変革を求める先駆的な企業向けだけではなく、多くの一般的な企業が利用するソリューションへと発展しており、急速にユーザー層を拡大している。
一方、クラウド導入の目的が先駆的な企業では「ITや業務の効率化」と「事業強化」を同時に検証していることに対して、一般的な企業は「効率化」のみ、あるいはソーシャルメディア/モバイル対応といった個別案件としての「事業強化」だけとなっている。
すなわち、クラウドのユーザー層は拡大しているが、企業のクラウドあるいはIT戦略において、「先駆的な企業」と「一般的な企業」の間には溝が見られる。この溝は、時間の経過と共に埋まっていくものの、一般的な企業に対して、効率化だけではないクラウドの価値をベンダーは訴求し続ける必要がある。
効率化だけではないクラウドの価値の訴求では、社会/企業活動のデジタル化に対応した「IT(クラウド)を使った事業強化」が重要となる。また、現在、クラウド市場では「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」といった配備/サービスモデルに焦点を絞り、コスト/セキュリティといった要件から「適材適所」でクラウドを選択し、連携させるハイブリッドクラウドが高い注目を集めている。
もちろん、配備モデルの検証は重要だが、それだけでなく、「業務の効率化」と「事業拡大」の統合/連携を考慮したハイブリッドクラウドこそが、価値を創造する新たな基盤となる。
「ベンダーにとって、真のハイブリッドクラウドを実現するソリューションの整備が喫緊の課題である」とIDC Japan ITサービスリサーチマネージャーの松本聡氏は分析している。
今回の発表内容について詳細は、IDCが発行したレポート「2015年国内クラウドサービス市場需要動向調査」にまとめられている。