企業におけるOSSの導入率は31.3%、従業員5,000人以上の企業では39.4%
一次調査では、自社の情報システムにおけるOSSの導入状況について調査を行った。OSSを「本番環境で導入している」と回答した企業は31.3%となった。昨年の調査は31.5%、一昨年の調査では32.0%となり、この3年間で大きな変化はなかった。
これを従業員規模別に分析した結果、「本番環境で導入している」と回答した企業は1,000人~4,999人で36.8%、5,000人以上で39.4%となり、一方では、100~499人以下の企業が最も低く24.8%となった。
企業の規模に比例してOSSの導入率が高くなる傾向がある。この背景には、多くの中小企業ではOSSを導入して管理する人材が乏しいということがある。また、こうした状況が、OSSの導入率が上昇しない要因の1つとしても考えられるという。
使用率上位はLinux:67.3%、MySQL:53.1%、Tomcat:35.6%、PostgreSQL:35.0%
二次調査では、OSSを使用している企業に対して、より詳細にOSSの利用実態について調査した。その中で、本番環境で使用しているOSSの種類を調査した結果、Linuxが67.3%で最も高い利用率となった。その次に高い使用率のOSSは、RDBのMySQLで53.1%であった。
さらには、アプリケーションサーバーのTomcat(35.6%)、RDBのPostgreSQL(35.0%)、システムソフトウェアのSamba(21.4%)、システム管理のZabbix(16.2%)、ハイパーバイザーのXen(16.2%)が続く。
近年、クラウドインフラ領域で注目を集めているOpenStackは6.1%、コンテナプラットフォームのDockerは4.5%であった。また、ビッグデータ関連としては、データ分散処理のHadoopが6.8%、NoSQLの中ではMongoDBの使用率が最も高く4.5%となった。こうした新興OSSは認知度も高まってきており、今後のさらなる普及が見込まれる。
今回の調査では、クラウドサービスとOSS使用の関係を分析した。IaaSを利用している 企業の42.5%は、OSSを積極的に使用していくという方針をとり、43.8%はOSSを適材適所で使用していくという方針であった。PaaSを利用している企業においても、53.1%がOSSを積極的に使用していくという方針をとり、34.7%はOSSを適材適所で使用していくという方針となった。
IaaS、PaaSを利用しない企業では、OSSの積極的使用は20%未満
一方、IaaSあるいはPaaSを今後も含めて利用しないという企業では、OSSを積極的に使用していくという方針は20%未満にとどまっている。このことから、OSS使用はクラウドサービス利用との関係性が強く、クラウドサービスの普及がOSS使用拡大のドライバーになるとIDCでは考えている。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの入谷光浩氏は、「今回の調査において、クラウドサービスの利用とOSSの使用は強い関連があることが明らかになった。現在、多くのIaaSやPaaSではOSSが標準サービスとして使用できるようになっている。今後クラウドサービスの普及に伴い、そのクラウドサービス上でOSSを使用する企業がさらに増加していくと考えられる。そして企業ではOSSの使用に対する抵抗感も薄まり、技術力やノウハウが溜まっていくことで、オンプレミスシステムでも様々なOSSを活用していく企業が増えていくとみられる。すなわち、クラウドサービスの普及がOSS使用拡大のドライバーになる」と述べている。
今回の発表について詳細は、IDCが発行したレポート「2016年国内オープンソースソフトウェア市場ユーザー利用実態調査:クラウドとOSSの関係性を分析する」にまとめられている。