建設価格は2020年まではこのまま高止まりか
国内事業者DCの新設および増設投資は、拡大と縮小のサイクルを繰り返す。2015年は縮小局面にあたったため、前年比39.2%減の859億円だったが、2016年は大規模な新設/増設プロジェクトが複数完了する予定で、投資額は前年比81.9%増の1,562億円と拡大に転じる見込みだ。
DC事業者による新設投資が継続する背景として、企業の業務システムサーバーをDCへ移設する傾向が強まっていること、クラウドサービスを利用した新たなデジタルビジネスが拡大していることの2つが要因になっている。
2013年から国内の建設価格は上昇が続いていたが、2015年3月から上昇のペースは鈍化している。しかし、価格水準そのものは依然として高い水準が続いており、2020年まではこのまま高止まりするとIDCではみている。
このことから、今後DC建設投資に影響が出ることが見込まれる。DC事業者の中には、2020年までに大きなDC投資を手控えるところも出てくるため、2017年~2020年は市場は縮小局面となるとIDCでは予測している。
「新設するDC事業者とレンタルする事業者の2種類に分化」
このように、企業のサーバーのDC移設やクラウドサービス利用が拡大するも、建設コストの高止まり状態が続くため、2020年までのDC建設に関して事業者は難しい判断を迫られている。2020年までの期間において、大規模なDC建設投資を行うのは、通信キャリアやITベンダーの大手企業に限定されるだろう。
DC建設を手控えるDC事業者は、拡大する顧客のデマンドに対応するために、こうした大手通信キャリアやITベンダーのDCファシリティを間借りしてサービス提供能力の維持を図ることになるだろう。
したがって、「2017年以降は大規模な建設投資によってファシリティを新設していくDC事業者と、建設を手控え他事業者のファシリティをレンタルする事業者の2種類に市場のプレイヤーが分化していく」とIDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの伊藤未明氏は分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内データセンターファシリティ市場予測、2016年~2020年」にその詳細が報告されている。このレポートでは、事業者DCだけでなく、企業内DC(金融機関、官公庁、製造業、サービス業などの一般企業の社内サーバールームなど)についても、調査結果をまとめている。