2016年の国内中堅中小企業IT市場は円高などにより横ばいを見込む
2016年の国内中堅中小企業IT市場は、国内経済状況が海外経済動向/円高などの不透明感から、多くの中堅中小企業でIT支出が抑制傾向となるため、市場規模3兆7,433億円で前年比成長率0.0%の横ばいになるとみている(レポートでは、2016年4月に発生した「2016年 熊本地震」の影響は考慮されていない)。
従業員規模別にみると、2016年は小規模企業(従業員規模1~99人)以外の企業では小幅ながらプラス成長を予測している。小規模企業では、IT支出に抑制傾向を継続する企業が多い一方で、中小企業(従業員規模100~499人)、中堅企業(従業員規模500~999人)では、業績が好調な一部の企業でシステム刷新が継続するとみている。
2017年以降は、2020年の「東京オリンピック/パラリンピック」開催を控えて、国内で積極的な投資が喚起されることから、各従業員規模の企業の業績が改善し、システム刷新、新規開発などが着手されるとみている。加えて、2020年の「Windows 7」サポート終了に伴うPC更新需要も伴って、IT支出は堅調に拡大すると予測している。ただし、2020年の国内中堅中小企業IT市場は、前年までの積極的なIT支出の反動もありマイナス成長へと減速を見込んでいる。
業績拡大など戦略的な目的のIT支出を促進させる施策がITベンダーに求められる
産業分野別にみると、流通では「消費税対応(軽減税率対応を含む)」に加えて、インバウンド需要に伴う好調な業績からIT支出を拡大させる企業も増加している。また、情報サービス業では、業績が好調なインターネットサービス事業者でオムニチャネル化を支援するために顧客管理機能、配送機能などの強化を図っているほか、さらにセキュリティ強化を実施していることから積極的にIT支出を継続している。
一方、製造では円高の影響もありIT支出を抑制する企業が増加するとみている。なお、2017年以降、各産業分野でプラス成長に拡大を予測している。
国内中堅中小企業IT市場は、2017年以降にプラス成長に回復を見込むが、既存システム刷新、またはPC更新需要が中心となり、戦略的な目的でのIT支出を拡大させる企業はごく一部にとどまるとみている。
IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村仁氏は、「ITサプライヤーは、中堅中小企業の業績拡大に寄与する戦略的なIT支出拡大を支援するため、『第3のプラットフォーム』(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)ソリューションを活用して、ユーザー企業の経営課題を踏まえた柔軟性の高い提案を行うことが求められる」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内中堅中小企業IT市場 産業分野別予測、2016年~2020年」にその詳細が報告されている。