今回の調査の結果、日本におけるデジタル・テクノロジを利用する予定/実績がある企業は、全体の約5割超に当たる51.8%となった。上記回答企業のうち、約3割の29.4%が、デジタル・テクノロジやその実装を支援するITサービスをソーシングする専門組織を、従来のIT組織とは別に立ち上げていることが判明した(図1参照)。
デジタル・テクノロジとは、IoT、3Dプリンタ、ウェアラブル端末、ヒューマノイド・ロボット、スマート・マシン、モバイル、クラウド、アナリティクス(BIなど)、ソーシャル・メディア、デジタル・マーケティングなどの新しいテクノロジを指している。
この結果について、ガートナーのリサーチ部門リサーチ ディレクターである海老名剛氏は次のように述べている。
「従来のIT組織内に専門チームを作ることには取り組みやすさという点でメリットがあり、今回の調査でも、デジタル・テクノロジを実装する企業の約4割がこの方法を取っていました。一方で、この方法には、IT部門以外のビジネス部門にプロジェクトの価値や成果をダイレクトに伝えにくいというデメリットがあります。こうした中、ビジネス部門とタスクフォースを結成して取り組みを進める、さらには、従来のIT組織とは別に新たな専門組織を立ち上げる企業も珍しくなくなっています」。
今回の結果に関して、海老名氏は企業における「バイモーダル」組織の構築について説明している。
「タスクフォースを結成することにより、ビジネス部門との協業は進みますが、依然として成果物やゴールが曖昧になりやすいリスクがあります。新たな専門組織を立ち上げれば、組織としての責任/権限を設定できます。しかし、予算やリソースを別途確保する必要があり、ハードルは極めて高いといえます。にもかかわらず、今回の調査では、約3割の企業がこうしたハードルを飛び越えようとしていることが分かりました」。
「例えば『デジタル・ビジネス推進室』や『イノベーション推進室』という名称で、ITとビジネスの両部門から人材を集めた組織が、デジタル・テクノロジやその実装を支援するITサービスをソーシングしています。新組織の立ち上げにはCレベルの経営層の判断も働いています。それぞれの取り組みにメリットとデメリットがありますが、デジタル・ビジネスの実現を目指す企業は、自社の取るべき組織面の施策を決断しなければなりません。いずれの場合も、IT人材とビジネス人材が一体となった取り組みが不可欠になるでしょう」。
なお、ガートナーは6月24日に、東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)において、「ガートナー ソーシング&戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2016」を開催する。このサミットでは、前出の海老名氏をはじめ、ガートナーの国内外のアナリストが、ITリーダーがソーシング戦略において攻守両立のテクニックを磨くための要諦を解説するという。