WANの課題解決策としてのSD-WANのマインドシェアは低い
この調査では、従業員数10人以上で2つ以上の拠点があり、データセンターまたはパブリッククラウドを利用している企業のWAN管理者を対象にアンケート調査を行い、国内500社から回答を得た。
SD-WANを導入するメリットがあるかどうかについて尋ねたところ、「大きなメリットがある」と回答した企業の比率は、国内拠点については48.6%、海外拠点については59.5%にのぼり、WAN関連の他機能に関する同様の調査結果と比べて高い結果となった。多くの機能を統合し提供するSD-WANは、市場の受容性の高いコンセプトであると言える。
一方、拠点WANの課題とそれに対して、今後実施する可能性が高い施策について尋ねたところ、SD-WANを第1に選んだ企業は少なく、課題解決策としてのSD-WANの優先度は、国内拠点については全13施策中9位、海外拠点については同10位にとどまった。
WANに関する課題解決策として上位を占めたのは、回線契約の変更(増速など)、接続形態の変更、回線の冗長化といった従来型の施策だった。多くの企業が、SD-WANのコンセプトにメリットを感じる一方、SD-WANは実績あるソリューションとはみなされておらず、現段階ではソリューションとしてのマインドシェアが低いことが分かった。
今後、SD-WANを普及させるには、市場での認知を高めるとともに、どのようなユースケースに有効かを実際の導入を通じて実証していく必要があるとIDCではみている。
SD-WANの望ましい導入形態はベンダー製品の導入が83.7%
また別の設問で、SD-WANの望ましい導入形態について尋ねたところ、ベンダー製品の導入(83.7%)が、回線に組み込まれたサービスの利用(14.4%)を大幅に上回った。この理由として、これまでSDNなど付加価値の高いネットワーク機能の多くが、製品ベンダーによって供給されてきたことに加え、安価な回線を冗長化して使うSD-WANの特性上、特定の通信事業者に紐付いたサービスより、回線選択に中立的なベンダー製品のほうが好ましいと考える企業が多いためと考えられる。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は、「パブリッククラウドの利用増加などで、WANに課題を抱える企業が増えている。しかし市場では、広帯域、高品質な回線が低価格で提供されているケースも多く、確立されたソリューションも多く存在する。SD-WANは、回線の効率利用と運用管理の効率化機能を兼ね備えた統合的なWANソリューションとして、従来の課題解決策を上回るメリットを提供できれば、市場に浸透するであろう」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2016年 国内SD-WAN企業ユーザーニーズ調査:今後の企業WAN市場を展望する」にその詳細が報告されている。