ビッグデータへの取り組みは「若干減少」の予測だったが67.2%へ微増
発表では、日本におけるビッグデータは、ハイプ・サイクルのピークを越えて幻滅期の底へと向かう状況にあるとして、ガートナーでは、ビッグデータへの期待が小さくなり、取り組みを進める企業が若干減少すると予測していたが(図1の点線部)、実際には2015年の65.6%から1.6ポイントの微増となった。
企業がビッグデータの活用を進める最終的な目的は、テクノロジを導入することではなく、ビッグデータを集めることでもなく、ビジネス上の成果(例えば、売り上げや利益の増大、顧客関係の改善)を生み出すことだ。
それには、これまでIT部門が取り組んできたような、ゴールと方法論が比較的明白なプロジェクトとは異なり、解決すべき課題や改善すべきテーマを最初に特定することが必要になる。こうした背景から、実際にビッグデータの活用に取り組み始めた企業では、「実際に何を分析すれば、ビジネス上の成果が生まれるのか」について悩んでいるケースが多く見受けられる。
ビジネス部門との対話を進めているのは19%にすぎない
また、「ビジネス部門には、データ活用で解決できる課題や新しいアイデアが多く埋もれていると思うか」との問いには、72.8%の企業が「はい」と回答した(図2参照)。しかしながら、ビジネス部門との対話を進めているのは19%にすぎず、4割に上る企業は1年以内に対話を始める見込みであることが明らかとなった。
この調査における一連の結果について、ガートナーリサーチ部門バイスプレジデントの鈴木雅喜氏は、次のように述べている。
「ビッグデータへの期待値は以前と比べて落ち着いてきたものの、デジタル化やモノのインターネット(IoT)に取り組んでいく上でビッグデータに関する活動が必要であることを企業が認識し、引き続き取り組んでいることが、本調査によって明らかとなりました。また、1年先および3年先にビッグデータから得られる価値として、『過去の知見』よりも『将来の予測』『判断の自動化』『ビジネス・プロセスの自動化』が大きくなると考える企業が多いことも分かりました。データ活用の幅が3年以内に『将来の予測』『判断の自動化』『ビジネス・プロセスの自動化』へと実際に広がっていくとは考えにくいながらも、企業が目指す方向性は定まりつつあることが、今回のユーザー調査から明らかになっています」
ビッグデータのコンセプトの下、「量」「速度」「複雑性」の面で分析可能なデータの幅が広がっている。加えて、データの重要な活用方法として、いかに「将来の予測」を進めるか、いかにアルゴリズムを適用し「判断の自動化」や「ビジネス・プロセスの自動化」を進めるかという点が、今後いっそう重要となっていくとガートナーはみている。
鈴木氏は、さらに次のように述べている。
「ガートナーでは、デジタル・ビジネスが進化する中で、今後、アルゴリズム・ビジネスが広がっていくとみています。アルゴリズム・ビジネスにおいては、データ分析の結果に基づいたアルゴリズム(パラメータから解を得るためのロジック)によって『判断の自動化』と『ビジネス・プロセスの自動化』を可能とし、新たなビジネス価値を生み出していきます。今回の調査結果は、アルゴリズム・ビジネスへの期待値が既に高まっていることを示唆しています」
「ガートナーは、ビッグデータへの期待値が調整局面にあるとみていますが、今回の調査結果から、日本企業のビッグデータに向けた取り組みは引き続き着実に進行しつつあることが明らかとなりました。ユーザー企業は、デジタル・ビジネスやIoTのシナリオの中でビッグデータの意義を捉え、活動をさらに進めていくべきであると考えます。ビジネス部門との協業から課題やテーマを把握し、『過去の知見』のみではなく『将来の予測』『判断の自動化』『ビジネス・プロセスの自動化』を進めることも視野に、アイデアの探索と試行を、デジタル化を見据えた企業戦略の下で進めることが重要です」