IDCがあげた10項目の技術や市場トレンドは次のとおり。
- 産業間のエコシステム連携によって、第3のプラットフォーム上にDXエコノミーが萌芽する
- 第3のプラットフォームへのICT支出が第2のプラットフォーム支出に並ぶ
- ランサムウェアの被害拡大が、脅威インテリジェンスと認知システム/AIを活用したセキュリティ製品の開発を加速する
- DXを実現するハイブリッドクラウドとAPIエコノミーの拡大が加速する
- IoT事業者の競争軸は「IoTプラットフォーム」から「データアグリゲーションプラットフォーム」にシフトする
- DXの普及が、エンタープライズインフラストラクチャの選定基準とITサプライヤーの競合関係に変化をもたらす
- 認知システム/AIの事例がプロフェッショナルサービス、セキュリティ/リスク管理分野で多数登場する
- 産業特化型クラウドがDXエコノミーのコア技術として成長を始める
- AR/VR、ロボティクス、3DプリンティングなどのIA技術が製造業の変革とグローバル競争力の強化に貢献する
- DXが企業の全社的課題として認識され、IT人材とDX推進組織の再定義が進む
2017年の動向について、IDCのアナリストが予測する2017年の国内IT市場における主要10項目の概要を次のように提示している。
1. 産業間のエコシステム連携によって、第3のプラットフォーム上にDXエコノミーが萌芽する
IDCでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を「モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、クラウド、そしてソーシャル技術などの第3のプラットフォームによって、顧客が体験することや企業が新たな生産性のレベルを達成するビジネス機会を生み出すこと」と定義している。
DXの導入に当たって、経営戦略におけるオペレーションツールとして活用することだけではなく、意思決定支援ツールとして、さらにはサービスを提供するプラットフォームとして活用することが期待される。
しかも、DXに関わるサービスは、単独での事業展開というよりはビジネスに関連するパートナーやクライアントとの協業を通して新規ビジネスを創造するエコシステムの形成を促しており、戦略的なパートナーシップによるエコシステムの構築がビジネス展開の迅速性や優位性の確保の支援につながる。
2017年はこのようなエコシステムによる産業内や産業間の連携がマクロ経済に影響を及ぼし、新たなDXエコノミーを形成する変革の萌芽が見られる年になる。DXへの投資は今後5年間におけるIT市場の成長の大部分を占め、ITサプライヤーの優先事項になるとIDCではみている。
2. 第3のプラットフォームへのICT支出が第2のプラットフォーム支出に並ぶ
多くの経済予測機関において2017年の国内マクロ経済(GDP)の成長率が1%以下との予測が多い中、IDCでは国内ICT市場全体の成長率をマイナス0.6%と予測している。予測期間を含む2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)についても、東京オリンピック/パラリンピックに向けたIT投資が見込まれているにもかかわらずマイナス0.3%と縮小傾向に向かう。
しかし、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、クラウド、ソーシャル技術、次世代セキュリティ、AR/VR、IoT、認知システム/AI、ロボティクス、3Dプリンティングで構成される第3のプラットフォーム市場については、CAGR 3.7%での成長を予測する。
第3のプラットフォームへの支出額は、2017年に第2のプラットフォーム(クライアントサーバーシステム)への支出額に肩を並べ、2020年には55.3%となる見通しである。一方、第2のプラットフォーム市場はCAGR マイナス4.3%での減少を予測している。
3. ランサムウェアの被害拡大が、脅威インテリジェンスと認知システム/AIを活用したセキュリティ製品の開発を加速する
ランサムウェアはマルウェアの一種である。ランサムウェアに感染するとシステムがロックされたり、ファイルが暗号化され使用不能になる。そして復旧するための身代金(ransom:ランサム)をマルウェアの作者に支払うように要求してくる。
ランサムウェアは新しいものではないが、2016年に入ってから暗号化型のランサムウェアが活発化し、被害が急拡大している傾向にある。報道や公表された件数よりも、実際の被害は何十倍にも上るとも言われている。また、最近の特徴的な傾向として、企業や法人組織が標的にされ、多額の身代金が要求されていることが挙げられる。2017年は、国内の企業や法人組織を狙ったランサムウェアが急増し、被害が拡大するとIDCではみている。
現状では、ランサムウェアを含むマルウェアの侵入を完全に防ぐことは不可能に近い。したがって、侵入された時にいかに早く検知し、拡散を未然に防げるかがセキュリティソリューションでより重要になる。セキュリティ侵害を早期に発見するためには、セキュリティ関連のデータ(脆弱性、不正IP、セキュリティログ、ユーザー情報、リスク情報など)をリアルタイムに収集し、それらの相関分析を行うことで異常を検知する仕組み、いわゆるセキュリティインテリジェンスの構築が求められる。
特に脅威情報を取りまとめている脅威インテリジェンスの役割がさらに重要になり、高度化が進むマルウェアの検出精度を左右する。2017年は脅威インテリジェンスを中核としたプロアクティブソリューションの本格的な実装が始まるとIDCではみている。
また、企業がセキュリティインテリジェンスを高めるためには、脅威インテリジェンスとさまざまなセキュリティ関連データの分析の高度化が求められる。分析を高度化することによって、未知の脅威を検出し、誤検知を減らせるようになる。
さらに、サイバー攻撃の高度化によってセキュリティ脅威が潜在化している。潜在化したセキュリティ脅威を分析するには、専門的スキルを要するが、セキュリティアナリストの人材不足が大きな問題になっている。
2017年は、認知システム/AIを搭載し分析力が大幅に向上したエンドポイントセキュリティ製品が市場に多く投入され、サイバー攻撃対策を実施している企業の30%が認知システム/AIをセキュリティ対策で使用するとIDCでは予測している。
4. DXを実現するハイブリッドクラウドとAPIエコノミーの拡大が加速する
AI、機械学習、IoTプラットフォームなどの新しい技術は、クラウドを基盤とすることが一般化しており、従来型のIT環境では対応が困難になっている。さらには、異なる機能を有するクラウドをAPI(Application Programming Interface)経由で連携させ、新しい価値の創出を迅速に実現するハイブリッドクラウドが大きな潮流になっている。
ここで着目すべき点は、新しい価値とは既存業務の効率化だけではなく、多様な情報/プロセスを組み合わせて分析することによって、「新しいユーザー体験」や「ビジネスモデルの変革」を実現していることである。まさしく、ハイブリッドクラウド環境におけるAPIエコノミーが、DXを実現しているのである。
2016年は、大企業を中心として、デジタイゼーションとDXの違いを認識する企業が増加した。また、PoC(Proof of Concept:概念実証)や小規模プロジェクトとしてDXに取り組む企業も現れた。2017年は、DXとハイブリッドクラウドを経営戦略(特に成長戦略)の中核とする企業が急増するであろう。技術の進化とユーザー企業動向の変化から、ハイブリッドクラウドとAPIエコノミーは、加速しながら発展するとIDCはみている。
5. IoT事業者の競争軸は「IoTプラットフォーム」から「データアグリゲーションプラットフォーム」にシフトする
2016年末の時点で、IoTソリューションを提供する大手ITサプライヤーまたはOT(Operation Technology)事業者としての企業(両者をまとめて「IoT事業者」と総称)の多くは、機能面における多少の相違はあるものの、エッジ側のデバイスの認証やファームウェアアップデート、センサーデータのストリーミング処理やアナリティクス、アプリケーション開発環境の提供など、IoTソリューションに必要になる汎用的な諸機能の多くをすでに自社のIoTプラットフォームに実装しており、必要に応じて他事業者のソリューションコンポーネントを組み合わせるという取り組みを進めている。
したがって、IoTプラットフォームを中心とした各IoT事業者のIoTソリューションは急速に複雑化すると同時に、一見しただけではソリューション間の優劣が見分けにくいと言える。これはユーザー企業の視点に立った場合、「どのプラットフォームを自社に取り入れるべきか」という選択が困難になることにつながるため、IoT事業者は新たな訴求ポイントを見出す必要がある。
こうした状況に対処すべく、2017年に各IoT事業者は「データアグリゲーション」に対する取り組みを強化し、IoTプラットフォームの機能と融合させることで、IoTソリューションの差別化戦略を進めるとIDCではみている。
IDCでは「データアグリゲーション」を、「IoTとして生成されるSoE(Systems of Engagement)データだけでなく、SoR(Systems of Record)データも含めたさまざまな種類のデータを集約し、分析することで、新しい付加価値を生み出すこと」と定義している。そうしたデータアグリゲーションに向けた動きは、「ITサプライヤー主導」「企業(OT事業者)主導」「IoTプラットフォーム間連携」の3つの軸で広がるとみている。
さまざまな事業者や企業がIoTデータはもちろん、非IoTデータも含め可能な限り多くのデータを収集、アグリゲートし、競争力を向上させることの重要性がますます高まっていくであろう。なお、ここでのポイントは、「どれだけ多くのデータを収集できるか」ではなく、「収集し、アグリゲートしたデータのうち、どれだけ多くのデータを有効的に活用できるか」が勝負の分かれ目になるということである。
「収集可能なデータの最大化」を進める上で、IoTを通じたデータセンシング/処理基盤を充実させることは最低限必要となるが、それに加えて「有効活用が可能なデータの最大化」を進める上で認知システム/AI、AR/VR、3Dプリンティング、といったIDCがイノベーションアクセラレーター(IA)として定義する革新技術を駆使し、IoTデータ/非IoTデータを余すことなく有効的に活用する取り組みが重要になるとIDCではみている。
6. DXの普及が、エンタープライズインフラストラクチャの選定基準とITサプライヤーの競合関係に変化をもたらす
DXに取り組む企業の増加は、エンタープライズインフラストラクチャの支出に中長期的に影響を与える。その代表例として、クラウド化、コンバージェンスの進展、Software-Defined化、HDDからフラッシュへの置き換えなどが挙げられる。これらの変化を推進するのはテクノロジーの進化だけではなく、ユーザー企業のエンタープライズインフラストラクチャの選定基準の変化が大きく影響する。
2017年は、エンタープライズインフラストラクチャの支出が大きく変わると共に、ユーザー企業の選定基準に変化が起き始める年になるとIDCでは考えている。選定基準の変化とは、エンタープライズインフラストラクチャを、その経済性、迅速性、拡張性、導入容易性などに基づいて選定するだけではなく、ビジネス変革や企業の新しい価値創造の活動にどれだけ貢献できるかも考慮されることを意味している。こうした選定基準の変化の度合いは、DXに取り組む企業の増加によって加速する。
2016年は、Hewlett Packard Enterprise(HPE)がサービス部門を売却してインフラへの回帰を鮮明にし、デルとEMCが統合して誕生したデルテクノロジーズもインフラの強化を進める姿勢を明確にした。 世界のエンタープライズインフラストラクチャ市場を見ると、自社ブランドを持たないODMサプライヤーが台頭する一方で、HPEとデルテクノロジーズという巨大ブランドのITサプライヤー2社が、その技術力、購買力、販売力を生かして競争するという構図が形成されつつある。
国内エンタープライズインフラストラクチャ市場では、国産ITサプライヤーが多く存在するため、HPEとデルテクノロジーズのシェアは世界市場に比べて低いが、国内においてもクラウド市場では強い存在感を発揮してきた。
プライベートクラウドを含めた今後のオンプレミスインフラ構築で重要な役割を果たすオールフラッシュアレイやハイパーコンバージドシステムへの取り組みでは、両社は国産ITサプライヤーよりも先行しており、2017年は成長性が高いインフラ市場においてITサプライヤー間の競合関係が変化する可能性がある。
7. 認知システム/AIの事例がプロフェッショナルサービス、セキュリティ/リスク管理分野で多数登場する
2016年は、認知システム/AIがバズワードとなった。一方で、現在のAIマーケティング手法は、ITプロフェッショナルを混乱させている側面もあるとIDCでは指摘している。AIによってビジネス課題を即座に解決できるという誤解や、利用目的を明確にしないまま導入を検討する動きがあり、「AIで何ができるのか」に関するITプロフェッショナルの迷いにつながっているとIDCではみている。
このようなIT市場の動向に対して、2016年は、ITサプライヤー側でも実証実験やプロトタイプシステムによって、実ビジネス現場でどのようにAIが利用できるかを検証し、効果の可視化を行ってきた。2017年は、2016年の実証実験/プロトタイプのフェーズから、実ビジネスへの適用が始まり、有償かつ効果が可視化されたシステムへの移行期になるとIDCでは予測している。
なかでも、認知システム/AIは、検索系と検知系のビジネスソリューションから活用が始まるとIDCでは予測する。検索系では、医療分野での医師の診断サポート、弁護士の判例検索など、膨大な文献/論文から目的に最も適合するものを「リーズニング(意思決定の理由付け)」するソリューションが顕著な例となる。
また、検知系では、サイバーセキュリティ保護対策やリスク対策として、シグネチャ型に加えて振る舞い検知などのサイバー攻撃の高度検知を達成するためにAIが利用されるとみている。
リスク管理では、金融業での詐欺検知/不正検知や、社会システムで画像認識を利用したテロ検知なども対象となる。検知系については、電力会社でのプラント監視/異常検知での活用や、メガバンクでの情報ガバナンス対策システムでの文書マイニングでの活用などの事例が挙げられる。
このような活用法は、認知システム/AIによる検索/検知の判断スピードから、人手では代替できない用途であると言える。単なるコスト削減や人的労働力のAIへの置き換えを超えた、ITによるイノベーションの効果的な事例になるとIDCではみている。
8. 産業特化型クラウドがDXエコノミーのコア技術として成長を始める
従来、国内市場における産業特化型クラウドは、産業特化型アプリケーションのSaaS(Software as a Service)化や、金融や地方自治体の共同センターのクラウド化が中心であった。一方、2015年以降、既存産業を破壊する産業特化型クラウドとしてUber、Airbnbなどの市場認知度が急上昇した。
さらには、2016年にIoTのユースケースが提示され、具体的な産業向けソリューションが産業特化型クラウドとして登場した。GEの産業機器向けのIoTプラットフォームPredixや、ファナック/シスコシステムズ/Preferred Networks/ロックウェル・オートメーションが共同で開発を進めるFANUC Intelligent Edge Link and Drive (FIELD) systemなどがIoTをベースとした代表的なソリューション(産業特化型クラウド)である。
産業特化型クラウドは「効率化/コンプライアンス/ガバナンス」を目的とした第1世代から、DXを実現する第2世代へと発展している。また、第1世代の産業特化型クラウドも、AI、ブロックチェーンなどの最新技術を取り入れると共にAPI連携を強化し、DX支援へと開発が進んでいる。
ユーザー企業のDXを実現する産業特化型クラウドは、2017年に新しい局面を迎えるとIDCはみている。具体的には、産業特化型クラウドで得られたノウハウやデータを分析し、異業種などに活用するモデルが発展することである。すなわち一企業のDXがAPI経由で、異業種のDXとつながり、より大きな経済効果を生むDXエコノミーを形成するのである。
2017年、これまで企業内のIT活用あるいはDXを対象範囲としてきたAPIエコノミーが、企業外へと広がることで、DXエコノミーの形成が始まるであろう。そして、DXエコノミーは特定の企業/産業内の事象ではなく、すべての経済活動に大きな影響を与えるようになる。その時、DXエコノミーのコア技術の適用先は、産業特化型クラウドになるとIDCはみている。
9. AR/VR、ロボティクス、3DプリンティングなどのIA技術が製造業の変革とグローバル競争力の強化に貢献する
DXエコノミー普及の鍵となるIoT、AR/VR、ロボティクス、3Dプリンティングなどの主要な新技術を「イノベーションアクセラレーター(IA)」とIDCでは呼んでおり、こうしたIAの普及が、国内製造業に大きな影響を与えていくとIDCではみている。
実際に、第3のプラットフォームやIAに関する国内IT市場の成長率を2015年~2020年のCAGRで見ると、AR/VR(179.6%)、認知システム(114.9%)、パブリッククラウド(21.2%)、IoT(19.4%)、3Dプリンティング(18.8%)、ロボティクス(14.9%)、ビッグデータ(6.7%)、次世代セキュリティ(5.7%)となっており、これらが第3のプラットフォームのCAGR 3.7%の成長を支えている。
国内製造業は、以前からIAを積極的に取り入れている産業である。たとえば、国内製造業は、産業用ロボットを積極的に導入することで、効率の高い生産/物流ラインを構築してきた。AR/VRを利用して製造現場で部品の取り付け位置を確認する支援、3Dプリンティングによるプロトタイプ制作などの用途で、IAが幅広く利用されてきた。
しかしながら、IDCでは、こうした取り組みは個別の技術導入の段階に留まっており、今後DXの一環としてIAの活用を積極的に行うことによって、国内製造業全体の根本的な変革が可能になると考えている。
2017年には、国内製造現場におけるIoTの利用が爆発的に広がり、いくつかの先進企業がそこから得られた膨大なデータとIAとの連携を開始する。そして、IDCでは、こうした活動の中から、たとえば、IoTデータの分析から得られた情報を、AR/VRを使って現場の熟練工にリアルタイムに提示する活動、製造ラインのIoTデータをリアルタイムに設計情報にフィードバックする技術など、今後の国内製造業変革のヒントとなる象徴的な改革事例が生まれるとみている。
10. DXが企業の全社的課題として認識され、IT人材とDX推進組織の再定義が進む
DXという概念的な言葉は、2015年から2016年にかけて金融業ではFinTech、製造業などではIoTといった形で、より具体性を帯びる形で語られるようになった。この結果、多くの企業ではDXは、全社的なあるいは経営的な課題として認識されるようになった。
また、DXを推進するリーダーとしてCDO(Chief Digital Officer)を設置したり、従来のIT部門とは異なりDX実現をミッションとする「第二IT部門」とでも呼ぶ組織を設立する企業が出てきた。
こうした中、多くの企業で「IT人材」の課題がクローズアップされている。DXを推進するIT人材は、IT/デジタル技術だけではなく、ビジネスそのものについての知識や、それを変革する能力などさまざまなスキルが求められる。しかし、こういった広範なスキルや能力を持つ人材を確保することは、決して容易ではない。ましてや欧米企業に比べてそもそもIT人材が少ないと言われている国内企業ではなおさらである。
このような課題に対して、多くの企業では既存のIT部門人材にビジネス能力の教育を行ったり、LOBとのジョブローテーションを行ったりといった施策を行っている。また、上述の「第二IT部門」では既存IT部門の人材ではない、LOB(事業部門:Line of Business)の人材を中心に組織されているケースも多く見られる。このような状況の中、企業において「IT人材」とは何かを再定義する動きが強まるとIDCではみている。
DXとは全社的な課題である。第2のプラットフォーム時代のように、LOB側の要望をIT部門(および外部ITサプライヤー)がシステム化するというプロセスだけでは不十分であり、IT部門人材もビジネスを考え、事業部人材もITの活用を考えるといったダイナミズムがあって初めてDXの実現が可能になる。極論すると、企業内のすべての従業員をIT人材化しなければ、企業競争力を強化するようなDXは実現できないということである。
IDC Japan リサーチバイスプレジデントの中村智明氏は「2017年は、DXエコノミーの萌芽の年になる。この動きを支援するためにITサプライヤーは、エコシステムの拡大を図ることが最優先事項となる。この競争から脱落すれば、市場から淘汰される危険性がある」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「Japan IT Market 2017 Top 10 Predictions:デジタルトランスフォーメーション・エコノミーの萌芽」にその詳細が報告されている。このレポートは、2017年の国内IT市場で注目すべき動向についてIDC Japanのアナリストが議論し、主要な10項目の事象を取り上げ、考察/展望としてまとめている。また、2017年の市場予測に基づき、ITサプライヤーへのIDCの提言を行っている。