国内ERP市場の2015年度の売上金額は、前年度比4.5%増の約739億円とやや低調な伸びとなった。セキュリティやデジタル・マーケティングへの注目、投資が高まる一方で基幹システムへの投資がやや手薄になった感がある。また、2015年度に施行されたマイナンバー制度対応に時間とIT予算を奪われたこともやや影響している。2016年度は大企業を中心に基幹システムの再構築が進みつつあることから、同6.5%増の伸びを予測している。
ERPパッケージ市場の運用形態をクラウドとオンプレミスで比較してみると、クラウドでの運用が急速に拡大する傾向にある。クラウドの安定性やセキュリティ不安の軽減に伴い、クラウド環境を利用することでトータルコストの削減と導入の早期化が実現できるメリットが徐々に浸透していることが背景にある。現状、AWS(Amazon Web Services)での運用が主流となっているが、Microsoft Azureなど他のクラウドでの運用も拡大傾向にある。
ITRのプリンシパル・アナリストである浅利浩一氏は、「オンプレミスの代表的なシステムであるERPにおいても、開発・テスト環境だけでなく本番環境をクラウドで運用する形態が一般化してきており、2016年度にかけて高い伸びが見られます。今後、企業がビジネスのデジタル化に向けて攻めの投資姿勢を強化していくにあたり、利用者や業務処理量の変化に柔軟に対応できるクラウドの特性がERPでも重視されていくでしょう」とコメントしている。
今回の発表は、ITRが発行した市場調査レポート「ITR Market View:ERP市場2017」に詳細を掲載している。レポートには、ERP市場を対象に、国内48ベンダーへの調査に基づいた2014~2015年度売上げ実績および2020年度までの売上げ予測を掲載している。