米国の小売業界は破産が相次ぐ記録的な状況
Tealium Inc.(以下ティーリアム)は本社が米国サンディエゴにあり、全世界に顧客企業を持つデジタル・マーケティングのソリューションを提供する企業。元々、Web解析から出発しているが、現在は様々なデータを連携、集約して活用するためのプラットフォームを通じて、企業の「デジタル・トランスフォーメーション」の支援を中心的なビジネスとして展開している。
8月29日、成熟度モデルの発表に際し、来日したマーケティング担当副社長のアダム・コーリー氏と、日本のカントリーマネジャーの安藤嘉教氏がプレス向けの会見を行なった。
はじめにアダム・コーリー氏は、米国の小売業界の直近の状況について触れた。それによると、2017年の初めの3ヶ月で記録的な破産報告が生じており、さらに店舗の閉店も800店舗と推定され2000年代以降の最悪の事態が生じているという。
小売業界のリアル店舗の市場の崩壊の背景にあるのは、Eコマースの進展であり、主導権をアマゾンが握っていることが最大要因だという。
このように「デジタルトランスフォーメーション」は企業の生存条件であるとともに破壊的要因ともなっている。しかし多くの経営者がこうした変化を自覚しながらもその対応に苦慮し、「つぎはぎの施策」に埋没している。その障害の最大要因は「部門間の隔たり」だと、アダム氏は指摘する。
「部門間の隔たり」は伝統的なビジネスが、デジタルビジネスに変化しようとするときの最大の課題である。アダム氏はこれに対処するための変革の方向性を示した。「部門ごとの効率優先」から「クロス部門での実行の早さ」、「安全性とコスト削減」から「スピードとイノベーション」、「より良い製品」から「個人バリューを強化するエコシステム」などだ。
そして小売だけでなく、すべての業種において、カルチャー(教育とコミュニケーション)、組織(組織形態、スキル)、テクノロジー(開発やインテグレーション)、知見(データの活用やデータの深掘)などの面で変化が求められていると語った。
データの連携活用で成功したドミノ・ピザ
ここ数年で、企業のマーケティング分野でのIT活用は進んだものの、「カスタマーデータ」(CDP)、「オンラインマーケティングデータ」(DMP)、「営業顧客データ」(CRM)などがそれぞれ異なるシステムに格納されており、部門間の政治的な利害などもあり相互活用されてこなかったとアダム氏はいう。
ティーリアムは、こうしたデータを組織の壁を超えて、連携活用させるためのプラットフォームを提供している。たとえば、最近の事例では「ドミノ・ピザ」がある。ドミノ・ピザはティーリアムによってデータを統合することで売上の50%をデジタルチャネルから上げるデジタルビジネスの企業へと変革を遂げた。
アダム氏によると、昨年のクリスマス商戦では、Apple WatchやAmazon Alexaといった最新のデバイスも含むチャネルを用い先進的なオーダトラッキングを行うことで、見事な成功を収めたという。
データ活用のための成熟モデル
そして、こうした企業のデジタルトランスフォーメーション支援を通じて、策定されたものが今回発表の「Universal Data 成熟モデル」だ。Universal Data 成熟モデルは、企業変革に必要なデータ活用のための中立的なフレームワークであり、企業が保有するデータとして、1)定義、2)保護、3)理解、4)実行、5)最適化、6)予測の6段階で構成される。
米国の企業でも、Webサイトにタグを埋め込みトラッキングをおこなう「定義」の段階から出発し、BIや分析ツールを導入する「理解」の段階までは、多くの企業が到達しているが、部門横断で全社的なデータの戦略活用を推進できる「実行」段階が今後は必要になるという。
散財する顧客データを一元管理する「Universal Data Hub」
ティーリアムジャパンは、多様なチャネルごとに散在する顧客データをリアルタイムに一元管理する包括的ソリューション「Universal Data Hub(ユニバーサルデータハブ)」として提供している。
データ統合、一元化というと、これまでも複数のデータベースを分析するデータウェアハウス(DWH)やデータ連携のソリューションが存在している。マーケティング分野だけでも膨大な数のソリューションが乱立しており、通常企業では、20以上のツールが使われている状況がある。ティーリアムはこうした各種ツールと競合するのではなく、それらと連携し共存しながらデータの活用を促進することを目的とする。
カントリーマネージャの安藤氏は、「それぞれのソリューションごとに、顧客データが異なるプロファイルとして存在しており、顧客に正しいメッセージが送れていないのが問題。しかしバッチ処理や顧客データ統合は非現実的」だと言う。こうした課題を解決するため、データソースとタッチポイント(顧客との接点)をフロントエンドで統合するというのがティーリアムのソリューションだという。
たとえば、顧客が企業にアプローチする様々なタッチポイントから入るデータのレイヤーに、タグ管理やAPI連携、各種コントロール部品を設定することで、顧客に正しい告知やキャンペーンを展開することが出来る。全日本空輸(ANA)では、ティーリアムによりリアルタイムでのデータ統合を実現したという。
この他にもJCBやセイコーエプソンなど、国内の成功事例も増えてきたという。安藤氏はこうした成果を、10月26日に開催する「Digital Velocity Tokyo 2017」で紹介すると語った。