なぜデンソーがクラウドサービスの開発に挑戦し始めたのか
最初に登壇した技術開発センターデジタルイノベーション室担当課長の小泉氏は、「現在同社は従業員数15万人を超えており売上高4.5兆円、車関係の部品による売上が98%を占めるが、今後は縮小していく可能性が高い」と明かした。その理由を「携帯電話からスマホに移行するときに起こったようなイノベーションの波が自動車業界にも訪れている」と分析。「端末、製品自体の良し悪しではなく、クラウドサービス面が車においても重要視され始めている」として、車の製造メーカーである同社も、クラウドサービス面の開発にも身を乗り出し始めたという。
両氏は、車においていかにクラウドサービスを活用していくか、いわゆるモビリティー・アズ・ア・サービス(Mobility as a Service)、MaaS(マース)の開発を主に担当。小泉氏によると、開発チームは「米シリコンバレーで成功している厳格なアジャイル開発手法に則ること」「サービス思考、サービスをデザインするために全て自社で内製化すること」「コネクティッドIoTプラットフォームを作って開発活動を行うこと」という3つの側面からサービス開発にアプローチしているという。
「攻めのIT」活用をアジャイルで開発する
次に登壇した佐藤氏が、実際に同社が取り組むアジャイル開発の詳細のほか、同社の開発組織作りや現場での取り組みについて紹介した。
まずはじめに、佐藤氏はデンソーの取り組むIT活用を「攻めのIT」と定義した。「社内システムのIT化を守りとすると僕らが取り組んでるのはIT技術を使ったモビリティサービスとか、どうやったら車を楽しく使ってもらえるか、事故を減らせるかなどお客様の課題解決に取り組むためにITを活用。開発のやり方の一つとしてアジャイルを採用している」(佐藤氏)。
アジャイル開発手法はどういった開発に向いているのか。佐藤氏は「アジャイルとよく対比されるのはウォーターフォール。状況を見ながら仕様やパッケージを変更したいならアジャイルが、既存の仕様通りに作りたいならウォーターフォールが向いている。作りたいものによって適材適所です」と話す。アジャイル開発に対し品質を不安視されるといったネガティブな見方もあることを紹介した上で、「アジャイル開発では毎週スプリントを行っている。こまめに品質の確認をしながら作っているので品質が犠牲になることはない」と力を込めた。