Dell Technologiesは世の中を変革して人類の進化に貢献する
Q:
DellとEMCが統合し、製品ポートフォリオは大きく拡大しました。市場でトップシェアを持つ製品が数多く揃っていますが、そのような状況の中Dell Technologiesは何を目指しているのでしょうか?
ソウォレンスキー氏:
先日開催されたDell Technologies Worldのテーマにもなっていましたが、世の中を変革し人類の進化に貢献することを目指しています。従来はそれぞれの製品の技術を進化させてきましたが、今はDell Technologiesの技術を活用し顧客の進化を手伝います。
たとえば今、医療や遺伝子解析の世界でブレークスルー的なことが起これば、その後ろには必ずテクノロジーの進化があります。脳神経外科分野の研究に大きな進展が起きている背景に、Dell Technologiesの技術で研究者間のコラボレーションが加速したことが貢献している事例もあります。また最新の野菜工場である「AeroFarms」では、IoTから得られるビッグデータに対し機械学習を適用して、極めて効率的に野菜を育てています。これで世界に安全な「食」を届けていますが、その裏側でもDell Technologiesの技術が活躍しています。
Dell Technologiesは、第四次産業革命を起こすための次世代のITインフラを提供します。このインフラでは、ソフトウェア技術が極めて重要です。そしてこの次世代ITインフラは、クラウドの形で提供されるでしょう。ここで言うクラウドとは、パブリックやプライベートといったITインフラを提供する場所の話ではありません。Dell Technologiesでは、クラウドをITインフラのオペレーションを行うためのモデルと捉えています。
今後人々が進化するには、必要なデータにいかに容易にアクセスするかが大事です。そのためにはアプリケーションの使い方を十分に把握した上で最適なデータ管理を行い、効率的なデータアクセス方法を提供できなければなりません。そのための正しいプラットフォームを提供するのが、Dell Technologiesの役割です。そしてこの企業が求める正しいプラットフォームを構成する一つの要素となるのが、先日発表したPowerMaxです。市場では、より高性能で効率化された安全なインフラが求められています。しかしながら、それに応えるものがありませんでした。この市場ギャップを埋めるのが、PowerMaxです。
Q:
第四次産業革命を起こすための次世代のITインフラには、どのような要件がありますか?
ハヤット氏:
まずはフラッシュストレージが必要です。ハイエンドストレージ市場では既に、85%がオールフラッシュを選択しています。フラッシュストレージでは今、NAND型フラッシュメモリが使われています。今後はさらにストレージクラスメモリ(SCM)も使われるようになるでしょう。
ストレージをオールフラッシュ化することで、自動化が加速します。その結果として管理が容易になり、セルフサービス化やリソースを最適に使えるようにするオーケストレーションも可能となります。こういったメリットがあることをユーザーも理解しており、オールフラッシュストレージはインフラの管理の手間、ダウンタイムを減らしCAPEXだけでなくOPEXも削減できると評価されているのです。
ソウォレンスキー氏:
今や、家庭で映像を録画するのにテープは使いません。スマートフォンには15年前から、スピンドルのあるハードディスクは使われていません。けれども多くのデータセンターではレガシーなテープが使われ、スピンドルタイプのハードディスクも数多く稼働しています。これらレガシーな技術が残っていることが、実は企業のイノベーションを阻害しているのです。
我々は、顧客が新しい技術に移行する手伝いをします。実際、旧い技術から最新のオールフラッシュのストレージに移行して、請求書の発行サイクルが2週間から1週間以下に短縮された例もあります。時間が短くなり数百万ドルのコストメリットもありました。さらにスペースも70%減らし電力消費も削減、地球環境にも貢献したのです。運用管理の手間が削減されれば、それに手間を取られていた人が本来のビジネスサイドの業務に時間を割けるようにもなります。
PowerMaxはNVMeにEnd-to-Endで対応しSCMもレディ
Q:
オールフラッシュストレージは、これまでもDell EMCから提供されていました。今回のPowerMaxはそれらと何が違うのでしょうか?
ハヤット氏:
大きな違いの一つが、新しいNVM Express(NVMe)の技術にEnd-to-Endに対応していることです。これにより我々は、NVMe分野のテクノロジーリーダーになったと自負しています。NVMeについては、2019年以降主要な技術となるでしょう。PowerMaxでは単にNVMeを搭載できるようにしただけでなく、ネットワークなども含めNVMe over Fabricでの対応となっています。
PowerMaxではさらに、次に来るSCMへの対応も見据えた設計となっています。NVMeやSCMは、NAND型よりも性能が高くレイテンシーもかなり低くなります。AIや機械学習技術などで大量なデータを扱うには、これらの新しい技術が必要になります。PowerMaxでは、これらを1つの装置で活用できます。
もう1つ、PowerMaxでは、内部でリアルタイムの機械学習を行っています。4,000万ものデータセットに対し1日に60億回もの判断を行い、データを自動で最適配置し予防保守なども実現しています。データ量も増えているので、既に最適な配置の判断を人が行うことはできません。機械学習でストレージが自律的に処理する必要があるのです。この機械学習の活用は、ストレージ性能の向上に大きく貢献しています。今後はさらに記録メディアの性能が上がってくるので、ワークロードに応じてデータを最適配置する技術はより重要性を増すでしょう。
またPowerMaxには最新の重複排除や圧縮技術も搭載されており、これらも性能改善や有効容量の拡大などに寄与しています。
ソウォレンスキー氏:
PowerMaxは競合製品と比べても、かなりユニークなポジションにあります。たとえばアプリケーションやデータベースなどのワークロードを分析し、必要な性能レベルに合わせて、コントローラをマルチに拡張できる点などは競合製品がなかなか追いつけないところだと思います。
内部で機械学習技術を活用することで性能も信頼性も向上する
Q:
AIを使い4,000万データセットに対し1日に60億回もの判断を内部で行うと、その処理がストレージ性能に影響を与えませんか?
ハヤット氏:
全く影響はありません。PowerMaxの1つのブリック(デュアル・ストレージコントローラ)にはCPUが72コア装備され、それが8ブリックあるので合計で576コアものCPU性能があります。この豊富なCPUリソースは、機械学習の処理、フロントエンド及びバックエンドのIO処理用等毎に個別にプール化されており、それぞれのリソース同士が影響を及ぼすことがない仕組みになっています。そのため、性能劣化は一切なく、機械学習結果を活用することでIO性能を向上できるのです。
Dell Technologiesでは、既にAIや機械学習技術を使いさまざまな問題解決を行っています。予防保守などもその一つです。その他にもDell Technologiesのビジネスオペレーションの中で、AIや機械学習を活用できるところがあると考え、取り組み始めています。今後はさまざまな製品で、AIや機械学習を活用していきます。既にUnityなどに対応したクラウドベースのStorage AnalyticsのCloudIQというサービスがあり、ここではAI技術を使って性能、容量、データ保護、システム構成に関する包括的な稼働状態分析を行うことで最適な容量計画をサポートしたり、予測分析によってプロアクティブな問題改善策を提示するなどの機能を提供しています。
Q:
PowerMaxは独自の仕組みで高性能化していますが、NVMeといった標準化された技術の活用も促進されていると思います。今後、どのように差別化を図っていくのでしょうか?
ソウォレンスキー氏:
まず、技術の標準化については、Dell Technologiesとして信念を持って取り組んでいます。技術の標準化と標準化技術の活用は、業界全体の技術発展のためにとても重要であるだけでなく、独自技術よりもコストが下がりやすいことで、お客様にそれを還元し、費用対効果を改善していくこともできます。次に、その標準化された技術を最大限に活かす上で重要となるのは、ハードウェアで差別化するのではなく、アーキテクチャとソフトウェアで独自の価値を作り出すことです。そのためPowerMaxのさまざまな機能も、実はSoftware-Definedで実現しています。PowerMaxとVMwareの技術が一緒になることでも、新たなイノベーションが実現します。たとえばPowerMaxはミッションクリティカルな要件に対応するようになっていますが、これにVMwareの技術が加わるとさらに高い可用性を実現できます。
ハヤット氏:
Dell EMCには、まだまだソフトウェアに力を入れているイメージはないかもしれません。とはいえPowerMaxのベースとなっているハイエンドストレージも2009年からインテルのCPUによるx86アーキテクチャに移行し、ソフトウェアでの差別化に注力してきました。NVMeをいち早く導入しさらにSCMにも対応できるのも、ソフトウェアに注力しているからこそなのです。
PowerMaxの対象は高い性能が求められると同時に止めることが許されないもの
Q:
今回のPowerMaxは、どのような用途での利用を想定していますか?
ソウォレンスキー氏:
PowerMaxは、ミッションクリティカルな要件のさまざまなワークロードに対応します。極めて高い信頼性、可用性、耐障害性を求められ、ビジネスにおいても重要性の高い領域に対応します。そういった用途では、レイテンシーの低さ、高い処理性能も同時に求められます。
ハヤット氏:
たとえば銀行の中核システム、通信事業者の請求管理のシステム、また航空業界などのチケッティングのシステムなどが対象となるでしょう。また税金の管理システムなど、社会インフラ関連も対象となります。
またOracle DatabaseやSAPなどハイエンドのUNIXで動くもの、さらにはメインフレームで動かすアプリケーションなどが主な対象となります。大きなデータセットに対し処理が必要なもので、処理性能が重視され処理時間に制約があるもの、そしてインフラとして止まることが許されないものになります。
ソウォレンスキー氏:
旧いIT技術を使っていてなかなかデジタルトランスフォーメーションに取り組むことができないというケースがあります。技術とそれを使う人の意識の2つの側面がありますが、PowerMaxを入れてVMwareのソフトウェア技術なども併せて活用することで、イノベーションを起こせると考えています。Dell Technologiesでは、これまでも、そしてこれからもそういった顧客の手助けをします。変革のためには技術を導入するよりも、人々の意識を変えるほうが大変です。意識を変えビジネスのプロセスを変える。そのためにDell Technologiesの技術を使い自動化を実現し、人々の意識を変える手伝いもしていきます。
実は自動化を活用して変革を行うのは、日本の製造業などが得意としていますが、海外に比べ日本企業のデータセンターの取り組みはまだまだ遅れています。弊社の海外のお客様の中には、データセンターの自動化で7,800人時の工数を削減し、年間450回の変更要求が4回に削減され、システム停止を引き起こす人的ミスの96%を削減した事例もあります。少子高齢化等による人手不足が進む中、より高い生産性が求められている日本企業のデータセンターをDell Technologiesの技術でモダン化し、日本企業の変革をどんどんサポートしていきたいと考えています。