生体認証が革命的なのは、自分が自分であると証明する手段が、自分そのものになったからだ。公的機関が先鞭をつけた生体認証の利用は、iPhoneが採用したことで、爆発的に広がった。技術的には、指紋など身体そのものを使うばかりでなく、画面タッチのくせや歩き方といった、その人のふるまいによる認証が実用化しつつある。今後、生体情報の共有と保護に社会的に取り組むことができれば、不正やテロを克服し、私たちは新しいライフスタイルと価値を創造することができるだろう。
生体認証の本質は何にあるのか
それは2要素認証だ、というと拍子抜けされるだろうか。しかし考えてほしい。生体認証が確立するまでの2要素認証は、たとえば銀行カードや携帯電話などの「自分が持っているもの」(Something We Have)と、PINやパスワードのような「自分が覚えていること」(Something We Know)の組み合わせを意味していた。
本質的なことは、生体認証によって、後者の「自分が覚えていること」が、「自分そのもの」(Something We Are)に置き換わったことなのだ。自分を、コピーしたり、置き忘れたり、紛失したり、盗まれたりすることはない。

不適切に単純化され、不注意に保管され、長い間サイバーセキュリティという鎖の脆弱な輪であり続けたパスワードに基づく認証は、過去のものとなる。生体認証は、21世紀の消費者に、利便性と安全性というトレードオフを同時に満たすソリューションを提供する。
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Raphael de Cormis(ラファエル・デ・コルミ)
Vice President, Innovation Labs, Gemalto 最新技術が社会へ与えるインパクトの調査研究を統括。主な調査分野は、生体認証、機械学習、サイバーセキュリティ、ブロックチェーンを活用した「自己証明型身分証明」(self-sovereign identity)、エッ...
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