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SIAMの中核を担うサービスインテグレータは誰が担うのか【クラウド時代のサービス管理】


 第1回では、複数のサービスプロバイダ(以下、SP)管理における課題とSIAMの適用効果をお伝えしました。第2回ではSIAMの具体的な内容をご説明いたします。今回はSIAMを構成する階層構造の定義およびSIAMの中核となるサービスインテグレータ(以後、SI)についてご説明いたします。

SIAMの組織階層(顧客組織/SI/SP)

 SIAMでは複数のSPを効果的、効率的に管理するために、組織(または機能)を役割・責任によって「顧客組織」、「SI」、「SP」の3階層に分けて考えます。はじめに、それぞれの特徴について解説します。

出典:アクセンチュア作成[画像クリックで拡大表示]

・顧客組織――SIやSPに対してサービス、役務を委託する組織を「顧客組織」と定義します。SIAMはITサービスだけでなくサービス全般を対象とするため、顧客組織はIT部門だけでなく人事、財務、営業なども含みます。また、「組織として外部委託せず保持すべき能力」としても定義され、SIAMではリテインド能力といいます。リテインド能力の例としては、IT戦略立案、ガバナンス、契約管理、調達、財務とコマーシャル管理、エンタープライズアーキテクチャ策定などが該当します。また法的、規制上の理由で委託できない業務も含まれます。

・SI(Service Integrator)――エンドツーエンドのサービス品質を保証するSIAMの中核を担う組織、または機能を「SI」と定義します。ITILでは明示的に定義されていない機能で、SIAMの適用効果を実現する重要な機能です。SIについては内部で担う場合もあれば、外部に委託するケースもあります。主な業務は、複数のSPを統合的に管理するためのサービスの可視化と管理およびレポーティング、エンドツーエンドで求められる品質を満たすためのガバナンス、課題対応やサービス改善に向けてのSP間の調整などです。

・SP (Service Provider)――顧客組織からの委託を受けて、サービスを提供する組織や機能が「SP」です。SPについても内部(運用部門や保守開発部門など)で担う場合もあれば、外部に委託するケースもあります。主な業務として合意された品質およびコストでのサービス提供、SIが提供するプロセス・ツールへの準拠、方針への順守やSIおよび他のSPとの協力などが挙げられます。

SIは誰が担うべきか(4つのSIAM構造パターン)

 では、SIAM組織の3階層(顧客組織/SI/SP)の中でSIは誰が担うべきなのでしょうか。実は正解はなく、それぞれの顧客組織の状況に応じて選択する必要があります。SIAMでは、最適なパターンを選択するために参考となる4つのSIAM構造パターンを定義し、それぞれのメリット・デメリットを整理してくれています。では、それぞれの特徴をみていきながら、各組織においての最適解を考えてみましょう。

出典:アクセンチュア作成[画像クリックで拡大表示]

内部調達サービスインテグレータ

 内部調達SIは顧客組織がSI機能も担うパターンであり、自社で完全に統制及び管理を実施したい(または法規制など準拠する必要がある)組織や、契約に縛られない柔軟な対応が必要な組織などに適したパターンです。このパターンは、顧客組織がリスクやコストをすべてコントロールできるメリットがある一方で、SIの経験やスキルを持つ人材を保持しなければならないというデメリットがあります。

外部調達サービスインテグレータ

 外部調達SIは、顧客組織が戦略立案などのリテインド能力に特化するために、外部の専門リソースにSI機能や管理を任せたい(SIスキルのあるメンバを保持しない)場合に適したパターンです。このパターンの最大のメリットは顧客組織がビジネスに集中できる点にあります。一方、デメリットとしては外部SIとSP間で直接的な契約関係は存在しないため、SPが非協力的になりうまくコントロールできないリスクがあります。

ハイブリッドサービスインテグレータ

 ハイブリッドSIは自社で直接統制および管理を実施したいが、スキルやリソースが足りない内部SIが外部SIと協業するケースが適しています。ハイブリットは内部と外部のメリットを組み合わせた形となるため、外部SIのスキルやナレッジを活かすことが可能となる一方で、明確な役割・責任分担が定義されていないとスキル重複、活動の抜け漏れ、責任分解の混乱などが生じる可能性があるというデメリットがあります。

リードサプライヤインテグレータ

 リードサプライヤは外部調達SIと同様のケースが適していますが、外部SIとSPが同じパートナーとなる点が異なります。顧客組織がリテインド能力に特化するためには、信頼できる戦略的パートナーが必要となります。戦略的パートナーといった場合、提供するサービスの範囲やサービス重要度などで選定されるのはもちろんですが、何よりも重要なのは「目標を達成するために責任をもって逃げずに対応する」ことです。SIとSPの両機能を担うとより一層責任感が増すことは言うまでもありません。ただし、このパターンの場合は、リードサプライヤが担うSI・SP間で透明性が確保されないとSPが不公平感を抱き、SPが非協力的になるリスクがあります。SI・SPが同じパートナーであっても、組織・人は完全に分離し、他のSPと同じ立場を維持することで透明性を確保することが重要となります。

次のページ
実際のSIAM事例(リードサプライヤインテグレータ)を紹介

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この記事の著者

加藤 明(カトウ アキラ)

アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントクラウド&インフラストラクチャグループ シニア・マネジャー。グローバル企業を軸とした組織変革に伴うIT組織変革支援を手がける。特に、複数ベンダーの管理手法であるSIAM適用の戦略、計画立案に関する豊富なサポート...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/11087 2018/09/13 15:50

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