
第8回では、SIAM適用の際に誤解を生みやすい3つのDon’tsについてご説明いたしました。今回はSIAM移行における組織カルチャーの変革について、3つの検討事項をご説明いたします。
SIAMのカルチャーに関する3つの検討事項

第8回でも少し触れましたが、SIAM移行は一種の組織変革です。これまでの組織からSIAMの階層構造(顧客組織、SI、SP)に移行し、新たな事業価値を創出するためにさまざまな課題を解決する必要があります。特に重要な3つの課題は以下の通りです。
- 効果的な組織カルチャーの変革
- 直接契約関係がないSIおよびSP間のコラボレーション
- 異なる戦略、目的を持つバーチャルチームの組織運営
では、それぞれの課題および対策について説明いたします。
検討課題1:効果的な組織カルチャーの変革
新しい組織に異動するスタッフが、仕事上および個人的な不安を感じる
SIAM構造へ移行する際に顧客組織、SI、SPの役割を定義してはいるものの、業務を担当するスタッフが自分自身の仕事やキャリアに対して不安を感じる場合があります。また、噂レベルで誤った情報が伝わってしまうケースもあり、最悪の場合、スタッフの離職や常習的な欠勤、ロイヤリティの低下などが起こる可能性があります。
対策として、全ての役割と責任を定義するのはもちろんのこと、顧客組織、SI、SPという粒度だけではなくチーム・個人のレベルで役割・責任を明確にしましょう。また、情報の行き違いや噂が広がるなどで不安を煽ってしまう場合もあるため、事前に各利害関係者とどのようにコミュニケーションを行っていくかを計画し、組織的なチェンジマネジメントのプロセスを導入することをお勧めします。
加えて、アウトソーシングパートナーを活用する場合は、アウトソーシングの範囲を明確にしましょう。顧客組織に必要なリテインド能力(自組織で保持しなければならない能力)を整理・理解し、スタッフに求める期待値を明確にしたうえで、要員計画(教育などを含む)を策定するのが望ましいと言えます。
一度に起こることが多すぎて変化に疲弊し、古いプロセス、古い働き方を継続する
一度に多くのことを変革しようとすると、関係者が変化に疲弊してしまい、働き方や行動指針を変えるまでに至らず元の状態に戻ってしまう場合があります。本質的に人は変化を嫌う傾向にあるため、変化に対するモチベーションを維持するためには成果をクイックに創出(クイックウィン)することが重要となります。
対策としては、SIAMのビジネスケースおよび移行計画を策定する際に、ROI(投資対効果)だけでなく早期の効果創出を意識した優先順位を設定しましょう。また、それらの各活動を1つのプロジェクトと定義し、SIAM移行全体にプログラム管理を適用しましょう。これにより、各プロジェクトの軌道修正を適切に行い、組織全体としてプロジェクトの成功率を高めることで、関係者のモチベーション低下を軽減することが可能です。
なお、自組織にSIAM移行のナレッジがない場合は、クイックにその手引き、アドバイスおよび客観的な視点を得られるという理由から外部のコンサルタントを使用するのも一手です。
この記事は参考になりましたか?
- SIAM入門連載記事一覧
-
- SIAMの中核を担うSI(サービスインテグレート)、必要なスキルとは【クラウド時代のサービ...
- SIAM移行で組織カルチャーが変わる!【クラウド時代のサービス管理】
- それは誤解!SIAM適用3つのdon'ts!「ITILを置換するフレームワークではない」【...
- この記事の著者
-
加藤 明(カトウ アキラ)
アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントクラウド&インフラストラクチャグループ シニア・マネジャー。グローバル企業を軸とした組織変革に伴うIT組織変革支援を手がける。特に、複数ベンダーの管理手法であるSIAM適用の戦略、計画立案に関する豊富なサポート...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア