SIAMの組織階層(顧客組織/SI/SP)
まずSIに必要なスキル・能力を説明する前に、SIAMの組織階層およびその中でSIがどのような役割を担っているかについて復習しましょう。
・顧客組織――SIやSPに対してサービス、役務を委託する組織を「顧客組織」と定義します。SIAMはITサービスだけでなくサービス全般を対象とするため、顧客組織にはIT部門だけでなく人事、財務、営業なども含まれます。また、「組織として外部委託せず保持すべき能力」としても定義され、SIAMではリテインド能力といいます。リテインド能力の例としては、IT戦略立案、ガバナンス、契約管理、調達、財務とコマーシャル管理、エンタープライズアーキテクチャ策定などが該当します。また法的、規制上の理由で委託できない業務も含まれます。
・SI(Service Integrator)――エンドツーエンドのサービス品質を保証するSIAMの中核を担う組織、または機能を「SI」と定義します。ITILでは明示的に定義されていない機能で、SIAMの適用効果を実現する重要な機能です。SIについては内部で担う場合もあれば、外部に委託するケースもあります。主な業務は、複数のSPを統合的に管理するためのサービスの可視化と管理およびレポーティング、エンドツーエンドで求められる品質を満たすためのガバナンス、課題対応やサービス改善に向けてのSP間の調整などです。
・SP (Service Provider)――顧客組織からの委託を受けて、サービスを提供する組織や機能が「SP」です。SPについても内部(運用部門や保守開発部門など)で担う場合もあれば、外部に委託するケースもあります。主な業務として合意された品質およびコストでのサービス提供、SIが提供するプロセス・ツールへの準拠、方針への順守やSIおよび他のSPとの協力などが挙げられます。
ではSIAM構造の復習ができたところで、次にSIAMの中核を担うSIに焦点を当てて、必要なスキル・能力について考えてみたいと思います。
ITIL スペシャリストであればSIを担えるのか?
SIに必要なスキル・能力と問われれば、そのベースとなるITILなどの知識や実践経験があるスペシャリストであれば、要件が満たされると考えている方は多いのではないでしょうか。もちろん、要件を満たす可能性が高く有力候補であることは間違いないのですが、それだけではSIの要件を満たすことはできません。その理由を考えるにあたって、ITILとSIAMの違いを再度振り返ってみたいと思います。
ITILの場合、単一SP、単一顧客(対象はIT)に対してのみサービス管理を実施すればよいため範囲が限定的です。一方でSIAMの場合は、SPも含む複数のステークホルダー(事業全体)に対してサービス管理を実施する必要があるため、ガバナンスとコラボレーションが重要となってきます。その違いを踏まえて、具体的な必要スキル・能力を見ていきましょう。