自身の業務効率化のために始めた「プリザンター」の開発
現代のビジネスの成否は、「情報をいかに活用できるか」で大きく左右されると言われている。そのため各企業とも積極的にITシステムを導入し、さまざまな情報を収集して従業員が活用できる環境を整備している。しかしたとえアクセスできる情報の量が100倍になっても、それを扱う人間の情報処理能力が100倍に向上したり、使える時間が100倍に伸びるわけではない。
実際にはITツールを導入して情報が社内に溢れれば溢れるほど、それに人が振り回される格好となり、逆に意思決定のスピードが低下してしまったり、判断を誤ってしまうことも十分起こり得る。特に企業の中間マネジメント層は、日々膨大な量のデータが詰まったExcelやメールと格闘しながら、情報の渦の中でもがき苦しんでいるのが実情ではないだろうか。
そんな日本企業のマネジメントの課題を何とか打破したいと、かつてたった1人でツールの開発に挑んだのが、現在は株式会社インプリム(以下、インプリム)の代表取締役社長を務める内田太志氏だ。もともと株式会社富士通エフサス(以下、富士通エフサス)で長らくマネジメント業務に従事していた内田氏は、日々の仕事の中でさまざまな課題を抱えていたという。
「当時は常に複数のプロジェクトのマネジメントを同時並行で担当しており、細かな管理タスクを多数こなさなくてはなりませんでした。それぞれのタスクを処理するたびに、異なるシステムやツールを立ち上げたり、ファイルサーバやグループウェアの異なるフォルダを検索したり、メールを掘り返したりと、いちいち煩雑な作業を強いられていました。これらのタスクを、もっと汎用的なツール上でまとめて処理できれば、もっとマネジメントの効率が上がるのではないかと考え、自身で理想のツールの開発を始めました」
もともと同氏は、自身や同僚の業務を効率化できるさまざまなツールを自主的に開発・活用しており、周囲からも好評を博していた。その一環として、自身が日々行うさまざまマネジメント業務を1つでカバーできる汎用的な業務アプリケーションの開発を始めたのだ。その結果誕生したのが、現在インプリムが提供するオープンソースのWebデータベースアプリケーション「プリザンター」である。
現在は富士通エフサスを退職し、自身の会社でプリザンターのソリューションに取り組む内田氏だが、もともとは起業を前提には考えていなかった。
「自身が勤務する会社や、富士通グループ内のさまざまな現場でマネジメント業務の効率化にプリザンターを役立ててもらえればと考えていたのですが、どうしても世間一般的な知名度や実績がないツールは受け入れてもらえず、歯がゆい思いをしていました。であれば、いっそのこと起業して世間一般の認知を得ようと考え、思い切って富士通エフサスを退職してインプリムを立ち上げることにしました」
ExcelライクなUIを通じてさまざまな業務に対応する汎用ツール
プリザンターは、内田氏が前職で開発を始めたころから現在に至るまで、オープンソースとして提供されている。「後発で知名度がない製品を、なるべく広く認知してもらいたい」「なるべく多くの方々の課題解決に役立ちたい」という思いから選んだ提供形態だという。現在インプリムでは、同製品をオープンソース製品として無償で提供するほか、手軽にすぐ使えるクラウドサービスとして、月額数百円という安価な料金で提供している。
プリザンターの業務アプリケーションとしての立ち位置を簡単に説明するとしたら、「Webデータベースを中心に、汎用的な業務アプリケーションを容易に構築・利用できるソフトウェア」とでもなるだろうか。主たるユーザーインタフェースは、Excelのスプレッドシートに似た表形式になっている。この表の1行1行のレコードが、日々のマネジメント業務の管理対象となる「案件」「タスク」「資産」などに相当する。
例えば、プリザンターを使って営業部門における商談管理を行う場合は、レコード1件1件が商談となる。また開発業務におけるプロジェクトマネジメントであれば開発タスクに相当するだろう。あるいは、情報システム部門におけるIT資産管理に活用する場合は、レコード1件1件が管理対象のIT資産となる。
これだけであれば、単にExcelを使ってデータを管理するのと何ら変わらないが、プリザンターはこれらレコードを複数のユーザーで共有しながら内容を参照・更新したり、さまざまなツールやシステムを呼び出して業務を直接遂行できたり、あるいは業務の現在の状況をさまざまな形式でリアルタイムに集計・可視化できる。
例えば、営業担当者が自身の商談の進ちょく状況を報告する場合は、プリザンターの商談管理のテーブルから該当する商談のレコードを選択し、その中の該当する項目に実績値を入力する。するとプリザンターは自動的に入力された内容を集計し、カレンダーやクロス集計、ガントチャートといった形式で可視化してくれる。また、顧客管理テーブルや売り上げ管理テーブルなど、商談管理と関連するほかのテーブルとのリレーションも容易に設定できるほか、内容の変更履歴も自動的に残してくれる。
こうした機能を駆使することで企業のマネジメント層は、多数のExcelシートや業務アプリケーション、ツールをいちいち使い分けたり、それぞれの情報を突き合わせる必要がなくなり、単一のツール上で大部分のマネジメントタスクを回せるようになる。
「それぞれの業務に特化して開発されたアプリケーションは柔軟性に欠けるため、ちょっとした業務の変更にも対応できず、使い方を覚えるのも大変です。その点プリザンターは、日本企業のマネジメント層が使い慣れているExcelの操作性の延長線上で簡単に使いこなせますし、単一のツールでさまざまな業務に対応できる汎用性を備えているため、あらゆる業務・業態のマネジメント層から『とても使いやすい』という声をいただいています」
富士通との密接なパートナーシップを通じてより多くのユーザーへ
ちなみに同様の機能を提供する製品は、プリザンター以外にも幾つか存在するが、それらとプリザンターの最大の違いとして内田氏は「パフォーマンスの高さ」を挙げる。
「『プリザンターUIエンジン』という独自開発のUIフレームワークを採用しており、極めて動作が軽快なのが特徴です。オープンソースのオンプレミス版はもちろんですが、クラウド版でも極めて動作が軽く、この点については競合製品には絶対に負けていないと自負しています」
コスト面においても、オープンソース版であれば無料、クラウド版でも「無料版」「10ユーザーまで月額1000円のライト版」「1ユーザー当たり月額500円のスタンダード版」と安価なコストで利用できる。そのため、現在利用している業務アプリケーションに対して「動作が重い」「コスト負担が大きい」という不満を抱えているユーザーからの引き合いが非常に多いという。
ちなみにプリザンターのクラウド版は、インプリムが直接提供するクラウドサービスだけでなく、富士通が運営するパブリッククラウド基盤「FUJITSU Cloud Service for OSS」の上で動作するものも用意されている。一番利用者数の多いプレミアム版で「1ユーザー当たり月額380円」、スタンダード版で「1ユーザー当たり月額450円」と、こちらも安価な価格が設定されている。
またプリザンターは、富士通がパートナー企業の製品・サービスを紹介・販売するために運営している「FUJITSU MetaArc Marketplace」にも登録されている。こうした富士通との密接なパートナーシップについて、内田氏は次のように述べる。
「もともと富士通グループ出身ということもあって、ありがたいことに富士通さんからはさまざまな協業のオファーをいただいています。実際にお客様を紹介していただき、一緒にソリューションを提供した実績もあります。今後もさらにそうした取り組みを進めて、より多くの方にプリザンターを利用いただけたらと思っています」
なおプリザンターは既に数多くの企業によって導入されており、その中には大手製造業、地方銀行、大手鉄道会社、ITベンダーなどさまざまな業態・業界の企業が含まれている。その利用形態もさまざまで、商談管理から問い合わせ管理、工程管理、IT資産管理など、汎用ツールのプリザンターらしくさまざまな業務に適用されている。
今後は富士通とのパートナーシップはもちろんのこと、現在15社あるパートナー企業の数をさらに増やしていくことで、「より多くの方にプリザンターの良さを知ってもらいたい」と内田氏は抱負を語る。
「プリザンターという製品名の由来は“Pleasant”、つまり“快適”から来ています。弊社は設立時からずっと、『マネジメント快適化』というコンセプトを掲げてきました。プリザンターは、マネジメントにかかる時間を短縮するとともに、マネジャーだけでなくすべての人々がマネジメントに気軽にコミットできる環境を提供することで、マネジメントを“最適化”するのではなく“快適”にすることを目指しています。ぜひその恩恵を、できるだけ多くの方に受けていただければと思います」
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