ヘルスケア分野に貢献するマイクロソフト技術
日本は世界最速レベルで少子高齢化が進んでおり、医療コストは増大の一途。地域間の医療格差も深刻な問題だ。医療分野におけるITでは、データ量の増加や機密性の保持といった課題にも取り組んでいく必要がある。やるべきことは山ほどある。
日本マイクロソフトは2005年にヘルスケア準備室を立ち上げた。ここが同社のヘルスケア分野における取り組みの出発点となる。当初は医療機関向けへの営業活動から着手し、13年を過ぎた今では医療・製薬営業統括本部となるまで組織が拡大した。同社によると、中規模以上の国内医療機関におけるWindows/SQL Serverの利用は99%、Microsoft 365契約者数は35万人、国内医薬品市場の上位10社は全てAzureを利用しているという。
来たる10月1日からはデジタルヘルス推進室を設置する。ここからヘルスケア業界におけるクラウド、AI、IoTなど新技術の活用を推進していくのが狙い。医療機関だけではなく、製薬企業、医療機器・医療関連サービス企業、厚生労働省をはじめとする公的機関や関係学会、そしてパートナー企業など業界横断的に連携して進めていく。日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長 大山 訓弘氏は「マイクロソフトが持つ最新技術とグローバルな知見を集約し、人の一生に寄り添うヘルスケア分野での活動を強化していきます」と話した。
ヘルスケア分野におけるマイクロソフト技術のベースとなるのがクラウド。大山氏は「マイクロソフトは安心安全に利用できるヘルスケアクラウドプラットフォームを提供し、日本の医療ITの支柱となり、全ての人と組織が健康的に多くのことを達成する力になります」と話す。マイクロソフトのクラウドが持つ特徴のなかでも、機密性の高さ、コラボレーションツール、AIやMR(複合現実)といった先進技術などがヘルスケア分野において有効となる。
大山氏はヘルスケア分野におけるデジタルトランスフォーメーションのシナリオをいくつか示した。例えば服薬指導や遠隔診療(2018年度診療報酬改定で保険適用へ)など、医療機関と患者との新たな関わりかたにより患者の生活の質を向上させていくケース。あるいは、コラボレーションツールを活用することでチーム対応力を強化するケース。これは働き方改革にもつながる。またゲノム解析や画像診断を通じて、臨床や運用の有効性最適化を図るケース。これらを包括的に取り組むことでケア全体の向上にも繋げられる。
最近ではクラウドベースの電子カルテや画像解析のソリューション事例が公表されている。カルテなら、きりんカルテシステムの診療所向け電子カルテ「カルテZERO」、シーエスアイの中規模病院向け電子カルテ「MI・RA・Is」。画像解析なら、シーメンスヘルスケアの医療画像ビッグデータ分析「Teamplay」、富士フイルムメディカルの内視鏡胃がん検診読影支援システム「ASSISTA Medical checkup-ES」など。