IT最新環境への移行で後塵を拝しているのが日本の中小企業
延長サポート終了まで2年を切り、日本マイクロソフトは中小企業向け移行支援策を強化している。延長サポートが終了するのはWindows 7とWindows Server 2008が2020年1月14日、Microsoft Office 2010は2020年10月13日。日本マイクロソフトとしては延長サポート終了までに、できる限り多くのユーザーに新環境に移行してもらいたいところ。
現状では、大企業においてはIT最新化はかなり進んでいる。楽天インサイトによると、Windows 10移行に向けた活動を開始した大企業の割合は95%、日本の主要企業(日経225銘柄)になるとマイクロソフトのクラウドの利用率も高い。自治体においては移行状況は大企業ほどではないとしてもサポート終了時期の認知度は高い。
ところが中小企業となるとWindows 7サポート終了時期の認知度はまだ57%にとどまっている。グループウェアを活用できている企業も12%と低い。また東京以外の地域における中小企業のクラウド利用率はさらに低くなる。日本マイクロソフト 三上智子氏は「中小企業はまだ伸びしろがある」と話し、地方の中小企業に向けた情報提供や移行支援策を強化していく姿勢を示した。
三上氏は海外との比較も指摘した。例えば「職場でのデジタル化に向けて会社が準備できている」割合はアジア全体では48%に対して、日本は7%。「社員のデジタルスキルのギャップ解消に経営者がコミットしている」や「フレキシブルに働くために会社が支援している」においても同様に相対的に低い状況だ。三上氏は「日本はGDPでは世界3位であるにもかかわらず、アジア全体で比較すると引けを取っている」と危機感を表した。
日本が遅れをとっている理由について、三上氏は日本企業において情報が足りない(届いていない)こと、日本人ゆえの慎重さ、IT環境の最新化を投資ではなくコストと認識していること、加えてIT環境の提案や構築をパートナー企業に任せているといった背景が考えられると話していた。
あらためて、最新の環境ならどんなメリットがあるかを三上氏は説明した。例えばパソコンがWindows 10なら、パソコンとスマートフォンをシームレスに連携できる。Office 365を使うなら、データ共有とチャットとオンライン会議が使えるMicrosoft Teamsがあるので共同作業が進む。またOffice 365ではAIを活用した自動翻訳やデータ読み込み機能もあり、作業の効率化が期待できる。そして何よりもWindows Defenderでセキュリティが強化できる。
ソフトウェアだけではなくデバイスが新しければ、より最新の効率的な機能や恩恵を享受できる。マイクロソフトの調査によると、パソコンの故障率は4年目から急速に増える。部品の経年劣化が進むためだ。購入から4年以上経過したパソコンでは、修理費増加とユーザーの作業が滞ることで、パソコン1台あたり約35万円の損失が生じている試算もある。これなら買い換えた方が安上がりになる可能性もある。
パソコンが古くて使い勝手が悪い、あるいは社外持ち出しができないなどの不便さが積もり積もると、働く側の意識にも徐々に悪影響を及ぼす。日本マイクロソフト 梅田成二氏は「優秀な人材の離職につながりかねません」と指摘する。逆に言えば、最新鋭のIT環境は社員の生産性を高めるだけではなく、優秀な人材をつなぎ止めることにも有効だということだ。