経営層からの承認を得て、実行できる状態に~計画&構築ステージ
第4回の復習となりますが、計画&構築ステージでは、ディスカバリ&戦略ステージで作成したビジネスケース(アウトライン)をもとに、SIAMモデルの設計の詳細化・移行計画の作成を実施します。また、その内容をもとにビジネスケースを精緻化し経営層から移行プロジェクト実行に関する承認を得ます。承認が得られたらSIおよびSPをどのパートナー(もしくは自社)が担うのかを決定します。
SIAMではこれに加えて、組織的なチェンジマネジメントを開始することをこのステージの活動として定義しています。SIAMへの移行は単にSIやSPを定義して切り替えていくという話ではなく、重大なビジネスモデルの変化であり顧客組織も含めた広範囲な利害関係者へ影響を及ぼします。よって、既存サービスを保護しながら既存組織へのインパクトを最小化するための取り組みとして、本活動が成功のための必要不可欠の活動として定義されています。本ステージで定義されている活動は以下の7つです。
- 詳細なSIAMモデルの設計
- 完全なビジネスケースの承認
- 組織的なチェンジマネジメントの開始
- SIの任命
- SPの任命
- SIAM 移行計画
- ステージのレビューと実装の承認
SIAMモデルおよびビジネスケースについては、第4回でご説明した内容を詳細化する活動となりますので、今回は、「6.SIAM移行計画」について具体的にご説明いたします。
業務への影響を最小化!実行可能な移行計画の策定
移行計画はRFP(提案依頼書)に対する回答(または入札)の一環として、SPから提案される場合が一般的です。SIは各SPから提供される移行計画の整合性をレビューした上で統合した全体移行計画を策定します。移行計画で主に検討すべき事項を以下でご説明いたします。
SIAMモデルへの移行を管理するアプローチおよび体制
SIAMモデルへの移行を1つのプロジェクトと捉えると、まずプロジェクト管理のアプローチを定義する必要があります。これは移行するサービスの規模や複雑性に依存しますが、SIが統合的に管理を行うためには、各SP単位で個別のアプローチを採用するのではなく、標準的な移行管理基準・管理テンプレートを準備してSPに提供するのが理想的です。特に運用保守業務(役務)を引き継ぐ場合は、品質を可視化するために各作業の習熟度を定量的に可視化する必要があります。
アクセンチュアでは、日次、週次単位で各引継ぎ業務の予実管理および習熟度レベルの管理を実施することで、納期と品質を精緻に管理しています。なお、習熟度のレベルについては、各レベルの定義と評価基準を移行計画の中で併せて定義し、お客様と合意することで認識齟齬が発生することを防止します。
体制についてもさまざまなパターンが考えられますが、移行管理を実施する体制は統制コントロールの観点からSIに配置することが効率的・効果的です。ただし、移行管理に必要なスキル・能力をSIが保持していない場合は、外部の専門家に一時的な支援を要請するなどの対応が必要になります。
移行の進捗と成功を測定するマイルストン
主要マイルストンとして移行の進捗と成功(移行品質)を測定するためのマイルストンを定義します。SIAMではサービスインから遡って、30‐60‐90‐120日の期間ごとに進捗・品質チェックのマイルストンを設定することを一例として紹介しています。例えば、当社の場合、サービスイン前の15‐30‐60日を移行状況評価の標準マイルストンと設定し、移行判定を実施しています。加えて、サービスイン後の15‐30‐60‐90日についても移行後の品質評価期間として捉え、同様の状況評価を実施しています。移行計画では、マイルストンで「誰が・何を・どのように」チェックするのかを明確にするために、ガバナンス(会議体)、各マイルストンの判定基準、移行状況評価シートを定義します。