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クラウド推進に当たってスキルセット、マインドセット、スタイルとカルチャーの転換を図るべき――ガートナー発表

 ガートナーが発表した2018年版のハイプ・サイクルにおいても、クラウド・コンピューティングは、改めて実質的な市場浸透が始まる啓蒙活動期に位置付けられ、その利用が当たり前になりつつある。

 しかし、クラウドに関してガートナーに寄せられる相談や問い合わせでは、クラウドを利用するに当たっての進め方や議論の内容にいまだに誤解が見られ、企業が混乱している様子がうかがえる。その例として、以下のようなケースをあげている。

 ■AWS、Azure、GCPといった本物のクラウドを前提とした場合によく見られるケース

  1. 本物のクラウドであっても丸投げしようとし、想定外の見積もり金額を提示される
  2. クラウド化することで絶対にコストを削減できると経営者が信じ、クラウドを推進しようとしている
  3. 担当者がアカウントを取得するまでに3年かかっている
  4. 現場エンジニアが自費で書籍を購入したりトレーニングを受講したりしている
  5. サービス部品レベルの概念実証(POC)(という名の評価)を行おうとしている
  6. 基幹系システムをクラウド化できるか、そのメリットは何か、といった質問を今でも繰り返している
  7. クラウド化で、サーバレスやコンテナ/マイクロサービスが使えないかといった議論をしている
  8. モード1のクラウド化の議論だけで、モード2やデジタルの議論をほとんどしていない

 発表では、上記のケースから次の2点について解説している。

 ■ケース1:本物のクラウドであっても丸投げしようとし、想定外の見積もり金額を提示される

 ある金融機関が、AWSの利用を前提に、ある業務システムのクラウド化の提案をインテグレーターに依頼したところ、数百人月に相当する数億円の見積りを提示されるケースがあった。本件は、インテグレーターが悪意で引き起こしたわけではない。むしろインテグレーターは、金融機関であるユーザーは従来どおり高いシステム要件を求めていると想定し、モード1のやり方で「しっかり作ってきっちり運用」、つまり松竹梅の「松」型の提案をした。

 要件を「松」と仮定し、クラウド化プロジェクトの進め方においても、ウォーターフォール型、すなわち要件定義、概要設計、詳細設計、実装、テスト、運用という一般の業務システムでは当たり前の工程を基に工数見積もりが行われていた。

 ガートナーのアナリストで、ディスティングイッシュト バイス プレジデントの亦賀忠明氏は次のように述べている。

――インテグレーターに丸投げすれば、AWSのような本物のクラウドであっても、こうした提案を受けることになるとユーザーは覚悟しておく必要があります。しかし、そもそもの問題は、移行対象となるシステムの要件がどのレベルかを、ユーザーが事前に明らかにしていないことです。

――例えば、99.999%以上の稼働率を絶対に求めるのであれば、クラウドは適切な選択肢ではありません。また、システムが絶対に変わってはならない場合も、クラウドは適切ではありません。なぜなら、本物のクラウドは変わることを前提としたものだからです。

――ユーザー企業が「クラウド化」を進める際には、ベンダーやインテグレーターに丸投げせず、自動車と同様にクラウドを「自分で運転」することにより、そのリアリティを理解する努力をする必要があります。

 ■ケース8:モード1のクラウド化の議論だけで、モード2やデジタルの議論をほとんどしていない

 日本の大手企業からは、基幹系システムをどうしたらよいか、クラウド化をどう進めていけばよいのか、といった質問や相談がガートナーに多く寄せられている。一方、「モード2やデジタルにはビジネス部門が取り組んでいるようなので、IT部門はモード1に集中している」と述べる企業や、「モード2にはビジネス主導で取り組むことが確実であり、ビジネス部門は既に自分たちでAWSなどを試している。今後もIT部門はモード1中心となるが、これでよいのか」と悩んでいる企業も多く見られる。

 クラウドに関する最大の問題は、その議論に5~10年もの長い期間を費やしていることにある。ガートナーでは、クラウドの議論をバイモーダルで捉えることを推奨している。バイモーダルの考え方を採用することで、企業は、クラウドの議論を、モード1に属する「既存業務システムのクラウド化」と、モード2に属する「デジタルを活用した新しいビジネス・アーキテクチャの策定と推進」に明確に分けられる。

 長期的に見た場合、モード1の既存業務システムはいずれその役割を終え、モード2のクラウド・ネイティブな環境に取って代わられる。こうしたトレンドは、ここ1年で急加速している。クラウド・ネイティブな環境では、従来型のモード1のシステムに付きものであった「完璧なシステムを作り運用する」といった発想は成り立たない。

 そこでは、本物のクラウドから提供されるサービス部品を駆使しながらビジネス・サービスの「継続的改善」をアジャイルに行うための、卓越したスキルが求められるようになる。  こうしたスキルの獲得は、想像以上に困難だ。まず、AWS、Azure、GCPなどで提供される、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)やブロックチェーンを含む100を超えるサービス部品について理解する必要がある。

 その上で、コンテナ、マイクロサービス、サーバレス、Infrastructure as Code、DevOps、継続的インテグレーション/継続的デリバリ(CI/CD)、サイト・リライアビリティ・エンジニアリング(SRE)、サービス・メッシュ、クラウド・ネイティブにおける進化可能なアーキテクチャといった新しいテーマを学びながら、チームでスキルを実践的に活用することになる。

 これには5年以上の時間を要する。今後、メガプレーヤー間の競争は一段と熾烈になり、ビジネスに一層のインパクトをもたらすさまざまな新しいサービス部品の投入が予想される。クラウド・ネイティブな環境は今後さらに進化する。企業には、こうした変化に着実にキャッチアップするための機動力が求められるようになる。

 亦賀氏は、次のように述べている。

――現在、多くの企業がデジタル・トランスフォーメーションの必要性を認識し始めていますが、そうした企業にとって、クラウドの推進はマストとなります。その重みを、ユーザー企業、特に経営者は十分に認識し、「人材投資」を機軸に、必要な対策を早期に講じる必要があります。さもなければ、企業は今後10年以内に、ビジネスそのものをディスラプターに破壊される恐れがあります。もっともそれ以前に、ユーザー企業は、クラウドが「利用者の自己責任を原則とする標準サービス」であることを理解すべきです。

――クラウドは使えるのか、セキュリティは大丈夫かといった議論はもとより、クラウド・ベンダーに提案要請書(RFP)を出そうとしたり、すべての損害賠償をクラウド・サービス・プロバイダーに負わせようと契約でもめたりする例が今でも散見されますが、これらはそもそもユーザーがクラウドを適切に理解していないことが原因です。

――Amazon Web Services、Microsoft、Googleといったメガプレーヤーから提供されるクラウドは、従来のアウトソーシングではありません。また、システム・インテグレーションでも、単なる仮想ホスティングでもありません。企業は、本物のクラウドとそのインパクトを、速やかに正しく認識し、早期に次のステップへと移る必要があります。

 発表についての詳細は、ガートナーが顧客向けに提供しているガートナー・レポート「クラウド推進に当たっての『違和感』を払拭する」(INF-18-175、2018年11月9日付)に掲載されている。

 また、ガートナーは来る2019年4月23~25日、「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」を開催する。コンファレンスでは、未来志向のビジネスおよびテクノロジのリーダーに対して、昨今の状況と将来の方向を踏まえ、取るべき戦略やアクションとアドバイスを提示するという。

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