AIや機械学習の登場でビッグデータから始まったデータに注目する動きは衰えず
もう1つよく登場したのが「働き方改革」。これは「AI」「RPA」などで実現する処理や業務の自動化の文脈でよく登場した。人材不足は今後も日本では大きな課題であり、引き続き働き方改革をするためのソリューションは市場性が高そうだ。とはいえ、たんに人の業務を置き換えたり時間短縮したりするだけでなく、生産性を大きく改善し何らかの変革を生み出すようなものでなければ生き残れないだろう。
そしてAIや機械学習で実現する自動化、自律化のキーワードと深い関係性を持っているのが「データ」だ。2010年頃に登場した「ビッグデータ」と共に、データを重視する動きは衰えることがない。今後もアナリティクスやデータベースなどは、主役とはならずともインフラ技術要素として粛々とデジタルトランスフォーメーションを支えることになる。
ところでビッグデータは当初、いかに大量のデータを集約し活用できるようにするかだった。それがここ最近は、無理にデータを集めずに利用するようになっている。その上でなるべくリアルタイムに活用できるようにすることに、焦点が置かれている。結果、出てきているのがデータハブ的なソリューションだ。これは10年以上前にも話題になったが、当時はハードウェアやネットワークの性能が十分に得られないなどの理由から、あまりうまくいかなかった。それが最近になり、ハードウェアやネットワーク性能も上がり、集めるよりも分散した状態で処理するようになっている。そして分散されヘテロジニアスな環境を一元的に管理し、データにアクセスするのには使い慣れたSQLを使うのがトレンドだ。
クラウドはマルチクラウドが徐々に市民権を得てエッジと共に考えるように
最近「クラウド」は、IT業界のキーワードとはもはや言えない。というのも、これは当たり前すぎる言葉になってしまったからだ。当たり前となったクラウドの市場ももちろん変化している。その動向としては、とにかくクラウドファーストだったところから、適宜ローカルでも処理を行う「エッジコンピューティング」も注目されていることだろう。つまりは「クラウド対オンプレミス」ではなく、「クラウドとオンプレミス」の構図になっているのだ。
クラウドに対するエッジ側のソリューションについては、IoTから得られるデータをエッジデバイスのすぐ側で処理するものや、オンプレミス版クラウドでもある「Microsoft Azure Stack」や「Oracle Cloud at Customer」「IBM Cloud Private」などがあった。加えて、これまでほぼ雲の向こうのソリューションしかなかったAmazon Web Servicesも、オンプレミス用の「AWS Outposts」を発表している。これらエッジコンピューティングについては、2019年以降かなり注目すべき領域だろう。
もう1つのクラウドの動向としては「マルチクラウド」がある。これまでは、どちらかと言えばSaaSのSalesforceなどとAWSのIaaS、PaaSを組み合わせるようなものをマルチクラウドと言っていた。この場合は、複数のクラウドサービスを使うのだが、アプリケーションの連携性や移行性はそれほど高くなく、データの連携程度に止まっていた。
それが昨年くらいからは、AWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azure、IBM Cloudなど、複数のクラウドサービスを並行して利用するマルチクラウドになってきている。これらにプライベートクラウドの環境も加えることも増えた。この新しいマルチクラウドではVMwareの仮想化、コンテナ技術、そしてコンテナ環境の管理を行うKubernetesが欠かせない技術となる。
ユーザーがマルチクラウドを求めるのは、1つのクラウドベンダーにロックインされることを嫌うためだろう。とはいえPaaSを活用し、さらにはサーバーレス技術をどんどん使うようになると、1つのクラウド環境に統一したほうが利便性やアプリケーションの生産性は上がる。真にオープンなコンテナの環境を使ってマルチクラウドでいくのか、ある程度クラウドベンダーに囲い込まれクラウドのメリットを引き出していくのか、これについては今後少し頭を悩ます問題になるかもしれない。