ユーザーが多様化したIT革命の寵児としてCIO(チーフ・インフォーメーション・オフィサー:最高情報統括責任者)の役割が脚光を浴びている。
再評価が進むCIOの役割
CIOの役割が見直される背景には、ITが企業活動に浸透し、またビジネス全体に欠くことのできない確固たる地位を築き上げてきたという事情がある。
筆者はCIOを“組織において、情報システムの管理・統括を含む戦略の立案と執行を主たる任務とする役員であり、変革の指導者”と定義している。CIOの責任範囲は企業の情報化部門や、戦略調達技術者、情報セキュリティ専門家、IT/情報化予算の立案者、業務革新・ソリューションの推進者、更には行政に於いて電子政府の統括責任者など多岐にわたる。従って、そのキャリア・パスは広範かつ複雑になってきた。
そもそもCIOは、経営とITの橋渡し役として誕生した。CIOの役割も時代とともに変化し、今では情報インフラ・システム周辺分野に関するあらゆるリスクやトラブルを最小限に抑えるといった危機管理や防災対応も担うようになってきた。企業活動の国際化や後述する金融商品取引法(日本版SOX法)施行によって、CIOのニーズは飛躍的に拡大する。

CIOを設置することで得られるメリットは、組織内のIT投資面では、業務のスピードアップや生産性の向上、費用対効果、経営コストの削減など、多面的な効果があることが我々の調査で判明している。また、強力なリーダーシップが発揮できれば、組織の活性化を促し、国際競争力の強化に貢献するとも評価されている。
CIOは、企業内、組織内の情報システム部門の総責任者であり、時代のニーズを的確に捉え、挑戦することに臆することなくリーダーシップを発揮できる人材であるべきだ。「インフォメーション」「インテリジェンス」「イノベーション(革新)」「インベストメント(投資・投機)」の4つのI、そして「ナレッジ(知識)」ベースの各分野で複合的・学際性を持つ、抜きん出た指導力と影響力を発揮できる人材であるべきなのだ。さらにネットワーク、マルチメディア、ソフトウェアなどの技術・工学系とITマネジメントなど経営経済系の両方のタレントを有することも条件といえよう。
従って、CIOのキャリア・パスは以前に比して広範囲になっている。
この記事は参考になりましたか?
- IT Compliance Reviewスペシャル連載記事一覧
- この記事の著者
-
小尾 敏夫(オビ トシオ)
1947年生まれ。慶応大学大学院経済学研究科卒業後、国際連合(UNDP)エコノミスト、コロンビア大学研究員、労働大臣秘書官などを歴任して現在に至る。早稲田大学電子政府・自治体研究所所長、ITU早稲田研究センター所長、APEC電子政府研究センター所長を務める。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア