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エコ投資の損益分岐点~「利益を生み出す仕組み」としてのリサイクルシステム

環境と経済の両立を実現するリコーのリサイクル事業の思想


環境対策にコストを費やす姿勢は企業としてあるべき姿だろうか?リコーにおけるリサイクル事業採算推移を振り返りながら、環境と経済の両立を実現する「持続可能な社会」の概念について考察する。

再生よりも廃棄の時代へ

 かつて、使用済み製品がお金になった時代があった。たとえば、新しいコピー機と引き換えに古いコピー機を引き取ってくる。これら使用済み製品は、回収業者に引き取られ、破砕機にかけられ、磁石で鉄のみが採取され、再生鉄の業者へ売られていく。その分が売り上げになっていたわけである。今からすると信じられないような話ではあるが、鉄の値段が高かったころは、廃品も収入源のひとつだったのだ。

 ところが、鉄の値段が下がるにつれ、再生にかかるコストと利益のバランスが逆転、再生の処理にはコストだけがかかるようになってきた。またこの頃、再生鉄として再利用されるのはコピー機1台のおよそ35%。残りの65%は埋め立てに運ばれていた。この廃棄処理にも決して安くはない額のコストがかかっていた。

 上昇の一途をたどる再生/廃棄処理の委託費、限りある資源に対する危機感─リコーが再資源化、リユース、リサイクルに取り組み始めた背景にはこれらの事情があった。

リサイクルから、持続可能な社会構築の概念へ

 1990年、環境対策室が発足した。リサイクル対応について検討するにあたっては、まず「そもそもリサイクルに適した製品かどうか」を検証することから始まった。リサイクルのためには、分解・分別がしやすいような製品であることが重要だが、実際に分解してみると非常に時間がかかることがわかった。

 そこでリサイクルに適した設計方法の研究が始まった。研究の成果物としてリサイクル対応設計方針を作成。93年当時に100項目の製品設計・製造にかかわる方針を策定した(現在は200項目にわたる)。同時に製品のアセスメント、評価等の仕組みを構築した。持続可能な社会構築の概念としてリコー独自の「コメットサークル」が完成したのもこの頃である。

 コメットサークルとは、原材料メーカーが地球環境から資源を掘り出すところから、廃品企業者に至るまで、自分たちの事業にかかわるステークホルダーすべての領域を取り入れたリサイクルの仕組みだ。このサークルを事業の主体である製品メーカーが責任を持って設計・開発することで環境負荷を下げていくという考え方である。

図1 持続可能な社会構築の概念 コメットサークル
図1 持続可能な社会構築の概念 コメットサークル

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リコーのリサイクル事業の損益分岐点

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この記事の著者

谷 達雄(タニ タツオ)

株式会社リコー 理事、技師長、社会環境本部 本部長。
1970年、静岡大学工学部精密工学科卒業。同年、株式会社リコーに入社。主に複写機の基本設計を担当。1990年、技師長に就任。1992年、副理事を経て、1998年より社会環境本部 本部長に就任。2007年、理事に就任。外部委員として、国連大学ゼロエミッシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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