MSのナデラCEOが基調講演に登壇
「Open Data Initiative」とは、Adobe、Microsoft、SAPの3社が提供しているアプリケーション/サービスのデータモデルを統一する取り組みだ。共通のデータモデルを介して「Adobe Experience Platform」「Adobe Experience Cloud」「Microsoft Dynamics 365」「Office 365」「SAP C/CHANA」といった製品/サービス間でのデータの相互運用性を高める。
これにより3社のユーザー企業は、自社の複数システムに点在するデータを連携し、CRM(顧客関係管理)分析や一貫したマーケティング施策が容易できるようになる。さらに開発ツールを活用すれば、新たなサービスの構築も可能だ。
3月27日に行われたAdobe Summit 2019の基調講演では、MicrosoftでCEO(最高経営責任者)を務めるサティア ナデラ(Satya Nadella)氏が、AdobeのCEOシャンタヌ ナラヤン(Shantanu Narayen)と共に登壇。現在、ODIのPoC(実証実験)を進めている蘭/英Unileverのデモを披露した。
デモの内容はこうだ。
UnileverのERP(企業資源計画)システムやCRMシステムからデータを抽出し、Adobeの統合型マーケティングソリューションである「Adobe Experience Cloud」で、さまざまなマーケティング施策を実施する。Adobe Experience Cloudで得られたデータは、MicrosoftのBIツールである「Power BI」にシームレスにインポートが可能だ。Power BIではマーケティング施策の分析や、効果検証を実施する。なお、UnileverはCRMデータをMicrosoftのパブリッククラウドサービスである「Microsoft Azure」上で管理しているという。
マーケティング施策分析や効果検証には、Adobeの人工知能(AI)である「Adobe Sensei」や、Azureに備わるMicrosoftのAIも利用できる。AdobeはUnileverがPoCで得られた効果として、顧客/製品/リソース関連のデータの統合のほか、AI分析によるプラスチック製梱包の削減と顧客側でのリサイクルの促進を挙げている。
ナラヤン氏もナデラ氏も、「データモデルを統一することで、これまで個々のシステムにサイロ化されて格納していたデータを解放(UnLock)できる。これにより、顧客を中心としたマーケティング施策が可能で、End to Endのサービスを提供できるようになる」と口を揃える。
ナデラ氏は、Windows中心だったMicrosoftのビジネスを、クラウドビジネスにシフトして成功を収めた人物だ。パッケージ販売モデルが中心だったソフトをサブスクリプションモデルに変えた。OSS(オープンソース ソフトウエア)開発コミュニティにも積極的に投資している。その背景には「顧客中心主義」と「協業による市場とサービスの拡大」を重視する戦略がある。こうした姿勢は、ナラヤン氏と共通するものだ。
また、今回のコンファレンスではODIの拡大を目的にした評議会「Partner Advisory Council」が発足したことも発表した。同評議会にはAccenture、Amadeus、Capgemini、Change Healthcare、Cognizant、EY、Finastra、Genesys、Hootsuite、InMobi、Sprinklr、WPPグループなどの企業が名を連ねる。Adobeは「これらの企業はODIを利用し、自社の顧客に対して新たなサービスを開発できる」とコメントした。