三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)とアカマイ(以下、Akamai)は昨年12月「Global Open Network」(略称 GO-NET)を設立している。今回新たに、その100%子会社として「Global Open Network Japan」を設立した。4月19日におこなわれた会見では、MUFGの代表執行役副社長であり、GO-NETのCEOとなった亀澤宏規氏に加え、Akamaiの設立者であるトム・レイトン(Tom Leighton)博士が来日し、説明をおこなった。
亀澤氏は、「今後キャッシュレス化や IoT の進展によって到来によって少額決済は劇的に増大する。GO-NETはブロックチェーンを用いることで、安全、高速かつ安価に処理できる新たなペイメントプラットフォームを提供する」と述べた。
AkamaiはCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)の米大手企業。世界137カ国に、1,700以上のネットワーク内に、240,000台以上のサーバーを配置しており、フォーチュン500の会社の半数以上に利用されている。
今回来日したCEOのトム・レイトン氏は、「インターネットのレジェンド」の一人。ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の発明者であるティム・バーナーズ・リーとはMITの同僚で、リー氏にインターネットの混雑の問題を解決する助言をおこなった人物。応用数学と分散コンピューティングを使用して、Webの輻輳を解消するアプリケーションを開発し、AkamaiをCDNの会社として1998年に創設した。チーフサイエンティストを経て、2013年のCEO就任以降、Akamaiは設立当初のCDNからサイバーセキュリティのプラットフォームへと進化した。
そのレイトン氏が、MUFGと共同で金融・決済の事業に挑む理由は、同社の強みである「エッジ・コンピューティング」にある。具体的にはAkamaiが持つ、様々なサーバーの同期をとりながら、高速・大量な処理をするエッジコンピューティングの技術をベースに、「新型ブロックチェーン」を開発することで、高速安全な決済プラットフォームを提供していくことだ。
動画などのメディアの コンテンツはますます増大する。そのことで生じるネットワークの輻輳を解決するために、ユーザーに近く適した場所に配備されたサーバーからコンテンツ配信をおこなうインフラの技術によって、コストを最小化し、パフォーマンスを最大化する。「5Gの時代になるとネットワークの輻輳はさらに増大する」とレイトン氏は言う。
従来のブロックチェーンは、コンセンサスアルゴリズムによる改ざんへの抗耐性、分散台帳技術による高可用性、ネットワーク上での残高管理、スマートコントラクトによる取引行動のプログラム化という特徴があった。これにAkamaiプラットフォームの最適なルーティングによる高速性やセキュリティ監視体制を加えたものが、「GO-NET」の新ブロックチェーン技術だという。
この融合によって、これまでブロックチェーンの弱点とされていた「取引速度」「処理用容量」の問題を克服し、「トランザクションは10M/秒、トランザクションのコミットと確定は2秒以下」を実現するという。
展開イメージとしては、クレジットカードなどのペイメント事業者に大規模なシステム投資を必要としない大量の少額決済取引システムや 、IoTやサプライチェーンにおける「取引・契約行動に連動した決済手法の構築」、ヘルスケアなどにおける「重要データの大量・高速かつ改ざんできないデータの処理と保管の仕組み」などが考えられる。
今後、「どのような事業者に提供していくかは少し先の発表になる」(亀澤氏)。2020年の上期をめどに、様々なペイメントの事業者やネットワーク事業者に準じサービスを提供していくという。