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日本のRPAは「お試し」から「スケール」のフェーズへ―Blue PrismのCEOに訊いた

 「サーバ型」RPAを提供する、RPAベンダー大手の英Blue Prismは、AI(人工知能)の研究開発に本腰を入れている。2018年末にAIに関する研究施設「Blue Prism AI Labs」をロンドンに開設した。「AI駆動の自動化技術が進化し、RPAの導入範囲が拡大すれば、従業員の働き方だけでなく、ビジネス・プロセスに対しても大きなインパクトがある」と語るのは、Blue PrismのCEO(最高経営責任者)を務めるアレスター・バスゲート(Alastair Bathgate)氏だ。「ロボットと共存して働く」ことが当たり前になると言われる将来、Blue Prismはどのような戦略を執り、市場でプレゼンスを発揮していくのか。

 2019年4月より順次施行されている「働き方改革法」や、労働人口減少の補填といった観点から導入が進むRPA(Robotic Process Automation)。現在、IT市場でもっとも注目されている技術の1つといってよいだろう。

 2019年2月に矢野経済研究所が公開した、日本国内のRPA市場に関する調査結果では、2018年度のRPA市場が、前年度比134.8%増の418億円に達すると予測している。(関連記事)。また、IDC Japanが同年4月に公開した、日本国内における企業のAIシステム/RPAの利用状況の調査結果によると、「RPAを全社的に利用している」と回答した企業は9.0%で、前年比2.4ポイントの上昇となった(関連記事)。

「RPA市場の拡大は、われわれのビジネスの成長からも実感している。特に以前の市場規模が小さかったアジア太平洋地域での急成長ぶりは、市場規模の伸び率で北米や欧州を凌駕している」

 Blue Prismは日本市場をどのように見ているのか?バスゲート氏に話を訊いた。

英Blue PrismでCEO(最高経営責任者)を務めるアレスター・バスゲート(Alastair Bathgate)氏
英Blue PrismでCEO(最高経営責任者)を務める、
アレスター・バスゲート(Alastair Bathgate)氏

日本のRPAは“お試し”から“スケール”のフェーズへ

―― 日本での市場獲得戦略を伺いたい。日本企業はデスクトップ操作を自動化する「デスクトップ型」RPAを導入する傾向があるが…。

バスゲート氏:確かに日本企業では「RPAはデスクトップ型でスモールスタートする」というケースが多かった。現在は、RPAのスモールスタートが一巡したといえる。RPAの「お試し」期間が終了し、それが自社の業務にどのような価値をもたらすかを実感した時期だろう。次のフェーズは、RPAの適用範囲を拡張(スケール)し、より自動化を推進することだ。

 RPAをスケールする場合には、耐障害性、コンプライアンス、ガバナンス、セキュリティなど、エンタープライズで求められる要件を満たしている必要がある。そのためにはRPAソフトウェアをサーバ側で一括管理し、柔軟に変更できる環境でなければならない。デスクトップ型ではこれは不可能だ。

―― サーバ型はデスクトップ型と比較し、初期導入のハードルが高いと言われる。Blue PrismはIT部門もなく予算的に制限のある中堅・小規模企業に対し、どのようにアプローチするのか。

バスゲート氏:初期導入コストに関してわれわれは、2018年7月にライセンス体系を大幅に見直した。それまで最低10ライセンス/3年間契約だったライセンスポリシーを1ライセンス/1年間に変更している。さらに、導入と運用支援は、日本の中堅小規模企業を顧客に持つパートナー――RPAテクノロジーズなど――を通じて実施している。

 こうした動向から鑑みても、中堅・小規模企業でもRPAを始めやすくなっているはずだ。

「実行」から「適応」、そして「自律思考」へ

―― 「Blue Prism AI Labs」について教えてほしい。AIの研究施設を持つことは、どのようなメリットがあると判断したのか。

バスゲート氏:AIがRPAにもたらすインパクトの1つに、「RPA自体を賢くすること」が挙げられる。

 これまでのRPAは、プログラムをルールベースで「エグゼキューション(実行)」するものだった。これにAIが備わりも学習能力を持つことで「アダプト(適応/順応)」のフェーズに移行した。これが現段階だ。

 そして、将来的にAI機能がさらに進化すれば、RPAはIA(Intelligent Automation)を備えた「デジタルレイバー」として、「シンク(自律的に考える)」できるようになるだろう。つまり、人間と統合したような学習できるロボットが、非構造化データを自律的に処理するようになると予想している。

―― では、4月初頭に発表した「Blue Prism Decipher(以下、Decipher)」は、「アダプト」を具現化した機能だと考えてよいか。

バスゲート氏:そのとおり。われわれが独自開発した「Decipher」は、AI駆動型の文書処理機能で、間もなくリリースする最新版の「Blue Prism(ソフト)」に、搭載を予定している。

 Decipherは、非構造化/半構造化データの処理が可能だ。例えば、請求書を処理する場合、通常はロボットに「請求書(インボイス)番号取得」の実行命令する。しかし、実際には請求書番号が「リファレンス番号」のカラムに入っていることもある。その場合、Decipherに(リファレンス番号がインボイス番号であることを)学習させれば、次からは自律的に請求書番号を取得する仕組みだ。

 現在、Decipherが対応しているのは請求書だけだが、発注書や見積書といったパターン化しているドキュメントが読み取り可能になるのも、時間の問題だろう。

「Blue Prism Decipher」の機能概要。ロンドンで開催した自社イベント「Blue Prism World 2019」で発表した
「Blue Prism Decipher」の機能概要。
ロンドンで開催した自社イベント「Blue Prism World 2019」で発表した

 こうした自律機能が進化すれば、フリーフォーマットで書かれている法務文書(リーガルドキュメント)の処理も可能になる。最初に学習させる必要はあるが、次からはその「コンテキスト」と「意味」を理解し、必要な個所を抽出して処理する。もちろん、それなりの時間はかかるだろうが(笑)。

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顧客が最適なAIを選択できるプラットフォームに…

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この記事の著者

鈴木恭子(スズキキョウコ)

ITジャーナリスト。
週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社しWindows Server World、Computerworldを担当。2013年6月にITジャーナリストとして独立した。主な専門分野はIoTとセキュリティ。当面の目標はOWSイベントで泳ぐこと。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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