米国ではSaaS/サブスクリプションビジネスが盛んになってきている。日本でも今後の人口減少がもたらすGDPの減少と市場縮小は必至であり、国内ITベンダーの事業構造の転換が問われており、SaaS/サブスク化は重要な選択肢となる。とはいえ、先行する米国のSaaSビジネスと国内のISVやスタートアップの間には大きなギャップがある。このギャップをうめるための「はじめの一歩」を提供するために、今回の「GO_SaaS 三種の神器」が起ち上げられた。
「技術的には、ID管理やサブスクにともなう多様な課金の仕組みの開発が必要になる。さらに組織文化的にも、継続的に開発・リリースなどの“DevOps的なフィードバックループ”が必要となる」──こう語るのは元AWS(Amazon Web Services)で、StillDayOneの代表の小島英揮氏。今回のプログラムの仕掛人の一人だ。
小島氏とAWSの呼びかけの元、今回結集したのは、かねてから課題意識を共有していたという、Auth0(オースゼロ)、CircleCI(サークルシーアイ)、ストライプジャパンの3社だ。
Auth0はクラウド米国ではすでにシリーズEで、2億1200万ドルを調達した認証・認可サービスのユニコーン企業。CircleCIはCI/CDサービスを提供し5,950万ドルを調達している。決済サービス企業のストライプはイーロン・マスクやピーター・ティールなどが出資し、数兆円の取扱高をもつ。3社とも世界的なメガベンチャーといえる。
この3社でSaaS/サブスクの、ID管理、CI/CD管理、決済・課金管理といった「三種の神器」となるテクノロジーを支援することで、国内のISVやスタートアップ企業のSaaS化を加速するのが狙いだ。
ISVのSaaS移行について、AWSの阿部泰久氏は、「オンプレミスモデルから、BYOL/シングルテナントモデル、さらにその先のマルチテナントモデルへと展開していくことが望ましい」と語る。そしてそのためには、ISVが自社の強みの部分に開発リソースを集中すべきで、先にあげた「ID管理、CI/CD、課金管理」は今回のプログラムによって、効率化を図れるのだという。
Go_SaaSプログラムの具体的な内容は、オンボーディングセミナーや技術ワークショップ、導入支援、無料クーポンの提供など。さらに小島氏は、三種の神器の活用による大きなメリットとして、キャッシュフローの改善をあげる。三社の提供プログラムはそれぞれ、プロト開発期は無料であり、その後も従量課金となる。ストライプの決済サービスについては、開発期も無料で、本番開始後も決済金額250万円までの無料クーポンが提供される。クレカ決済になることで、従来の月末の出金よりも早い入金が可能になる。
本プログラムによって、「三方よし」の関係を築き、「海外展開を見据えたGO_GlobalなSaaS/サブスクリプションビジネスを支援する」(AWS 阿部氏)。オンボーディングセミナーは4社共同で、各社のコミュニティとも連携して行う。東京開催を皮切りにニーズを見て主要都市でも開催。第一回は2019年7月8日、東京・目黒のAWSで行われる。こうした活動を通じ、新たに100件のマルチテナントSaaSの創出を目指す。目標期間は2年間だが、さらに早期の実現をめざすという。