会場であるアステリア株式会社の施設「イフラボ」には100名を超える報道陣とBCCC会員企業のメンバーがつめかけた。
はじめにビットコイン&ブロックチェーン研究所代表で日本デジタルマネー協会理事の大石哲之氏による講演がおこなわれた。以下はその内容の要約だ。
ビットコイン研究所 大石氏「Libraブロックチェーンの概要」
Libra(リブラ)は「Facebookによる仮想通貨」といわれるが、実際はどのようなプレイヤーが参画しているのか。
Libraの発行主体は、スイスのNPOの「Libra協会」となり、ここがLibraの発行・償却をおこなうとともに、システムの開発をおこなう。
Libraのファウンダー企業が、Facebook、Uber、VISA、Spotifyなどだ。最初の資本提供をおこなうとともに、初期においてはブロックチェーンのバリデーション(取引の承認)は、これらの出資者がおこなう。
次に認定再販業者。Libraの再販や、回収をおこなう仮想通貨の取引所が想定されるが、いまだ明確ではない。そして取引所や個別のウォレットによってLibraを利用するユーザーや、サードパーティの開発者となる。
Libraの5つの特徴
大石氏はLibraの特徴を、以下の5点にまとめる。
1)法定通貨リザーブによるステーブルコイン機能
2)コンセンサスアルゴリズム(Hot Stuff)
3)コンソーシアムチェーン/オープンアクセス
4)ビジネスモデル:LibraトークンとLITの2重構造
5)アカウントベース、スマートコントラクト機能(MOVE)
いちばん注目されるのは、1)のステーブルコインとして機能する点。ビットコインのような仮想通貨(暗号資産)とは異なり、価値の大幅な変動がないため投機的対象にはなりにくく、その分、決済の手段として利用の可能性が高いとされる。とくに特定の通貨ではなく、複数の法定通貨や短期国債に連動して、理論的に基準価格を算定する「通貨バスケット」である点だ。
「Libra自体は取引所で取引されるため、理論価格と若干乖離する可能性もある。また為替変動による税の扱いなど、利用面を考えるを考えると米国など、一国の法定通貨にペッグした方が使いやすい。FacebookがなぜLibraを複数通貨連動にした点については、議論が生じるところです。」(大石氏)
Libra発行の仕組み
初期のコイン発行の仕組みは、パートナーとして参加する企業が、一社あたり10百万ドルを拠出し、100社(予定)から1000百万ドル≒1100億円を集める。これを財団が準備金として貯めておき、複数の通貨で短期で運用し、初期の1000百万ドルLibraを発行するというもの。(円との対比のため「百万ドル」を単位とする)
さらに追加コインの発行については、再販業者が購入依頼をユーザーや企業から受け、→ Libra財団が新規のコインを発行 → Libra財団が新規コインを再販業者に販売、再販業者が買い取り、→ Libra財団に入ったお金はそのまま準備金とし充当、→ 発行量を準備金のバランスが保たれるという形をとる。
またLibra財団は再販業者からのコインの買い戻し依頼があった場合、必ず受けなければならず、それによって最後の買い手を保証している。
こうしたスキームについて、大石氏は「Libra財団が直接おこなうと生じる法的問題を、再販業者が入ることで回避できるのではないか」と語る。
Libraのブロックチェーン構造
Libraのブロックチェーンは初期の段階では、特定の参加企業がノードの承認をおこなう。(将来的には非認可型に移行するとしている)。この点が、不特定のメンバーが採掘をおこなうビットコインと異なる点だ。
チェーンに参加するのノードは、「バリデータノード」、「フルクライアント」、「ライトクライアント」の3つの役割に分けられる。このうち、ファウンダー企業の100社だけが運用できるのが「バリデータノード」で、ブロックチェーンの全ノードを保有し、ブロックの生成と承認権限を持つ。ここまでは、メンバーシップによって承認される「プライベートブロックチェーン」と同様。
目新しいのは、「Libra-BFT」というコンセンサスアルゴリズムを持つ点だ。「Libra-BFT」は、BFT(Byzantine Fault Tolerance)型アルゴリズムを改良したHot Stuffをベースとし、Tendermint、Casperより新しく、3チェーンコミット(3回投票して承認する仕組み)を採用している。