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企業のデジタルシフトはIoT、5G、サブスクリプションが牽引。マインドセットを転換せよ──ITRのアナリストが提言

「IT Trend 2019」セミナーレポート


 2019年10月3日、調査・コンサルティング会社のITRは年次イベント「IT Trend 2019」を開催した。同社のアナリストによるIT市場の注目すべき動向として、IoT、5G、サブスクリプションなどを紹介するとともに、デジタル化に向けた変革を推進するための経営者・リーダーのマインドセットのあり方について提唱した。

デジタル時代の「知見の集団」をめざすITR

株式会社アイ・ティ・アール 会長/エグゼクティブ・アナリスト 内山 悟志氏/代表取締役 三浦 元裕氏

株式会社アイ・ティ・アール 会長/エグゼクティブ・アナリスト 内山 悟志氏/代表取締役 三浦 元裕氏

 創業25年目を迎えたITR。独立系のエンタープライズIT市場での調査・コンサルティグ会社である。IT系の調査では、国内のユーザー企業の投資動向、ベンダー企業の製品市場分析に定評がある。

 今年2月、設立以来25年間、代表を務めてきた内山氏は、今年後任の三浦氏に代表取締役を譲った。冒頭で内山氏は「変革の時代には経営も若返りが必要とお客様に提唱してきた。今回私が還暦ぎりぎりでバトンタッチできたことを嬉しく思う」とコメント。今後も同社に残り、アナリストとして活動していくと言う。
続いて代表取締役の三浦氏が挨拶。「近年お客様の相談のニーズも変わってきた。今後も中立・客観の姿勢を崩さず、コミュニティやラボ活動などにも取り組み、新しい知見の集団を目指していきたい」と意気込みを語った。

日本企業のIoT予算は増加、新たなデータ取得が目的

株式会社アイ・ティ・アール チーフ・アナリスト マーク アインシュタイン氏

株式会社アイ・ティ・アール チーフ・アナリスト マーク アインシュタイン氏

 キーノートは同社のチーフ・アナリストのマーク アインシュタイン氏が登壇。国内400社の企業のIT投資動向を紹介した。それによると、「増加している」と回答した企業は全体の66%、現在の投資規模が1億円を上回る企業は63%で、将来(3年後)は74%と増加し、今後さらに増加する見込みで、企業のIoT投資は急激に伸びている。

ITR発表資料より

ITR発表資料より

 またIoTの投資分野としては、「アプリケーション開発」「IoTセキュリティ」「プラットフォーム」(クラウド、データ分析など)が上位3分野となる。また利用動機については、「従来方式では収集できなかった新たな情報・データの収集」(47%)「従来方式よりも高頻度で情報・データを収集するため」(41%)が上位となった。(いずれも複数回答可)。

ITR発表資料より

ITR発表資料より

 IoTの導入の目的は、「モノ(物流・在庫)のトラッキング」「工場生産の最適化」「エネルギー消費の最適化」「工場モニタリング」などが上位。製造分野での活用目的が主流となっている。

 こうしたIoTへの期待の一方で、企業が抱える課題については、「IoTスキルの不足」「社内制度や組織の壁による障害」「市場のソリューションが把握できていない」「セキュリティ懸念」などが続く。特にIoT分野でのセキュリティ攻撃については、29%が経験済みと回答した。

エンタープライズ分野で期待されるプライベート5G

 アインシュタイン氏は、続いて今後のエンタープライズ分野を牽引していくデジタルトレンドを紹介。注目すべき分野として、1)5G、2)AI、3)ロボティクス、4)xR(VR、ARなどの総称)、5)バイオメトリクス、6)エッジコンピューティング、7)デジタルツイン、の7つをあげる。
中でも最も注目すべきは「5G」だ。先ごろ試験運用が開始され、2020年に本格的に始まるる5Gについては多くの期待が寄せられているが、アインシュタインが強調するのは、「プライベート5Gネットワーク」だ。「高速・高信頼・低遅延・多数同時接続」という特性はモバイルの市場だけではなく、エンタープライズ分野でのインパクトこそが大きいとアインシュタイン氏は言う。

 企業は「プラベートLTE」「ローカル5G」といわれる技術によって、5Gを自社独自の閉じたネットワークとして活用できる。5Gの特性を、キャリアの通信としてではなく企業の単独のネットワークをして活用できるというものだ。これによってたとえば輸送機器、製造現場、医療、教育などで様々な用途が期待できる。通信帯域を仮想的に分割する「ネットワークスライシング」によって、バーチャルな高速ネットワークを構築できるとともに、オンデマンドでセキュアな環境が設定が可能なため、工場内や物流、自社の建物内や地域に限定した5G活用などが期待できる。すでに国内ではJALが、5Gによる8Kの高解像度の画像を用い、機体検査などに活用しているという。

 その他、アメリカの軍によるマイクロソフトのホロレンズの大量導入、空港での顔認証ゲート、Amazonや宅配会社DHLのロボティクスやxR導入などを紹介。デバイスの目新しさが注目されがちなデジタル技術だが、現場の応用はかなり成熟してきていることを示した。今後もより成熟したエンタープライズの新サービスが生まれていくだろうと語った。

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デジタル時代に求められるマインドセット

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、EnterpriseZineをメインにした取材編集活動、フリーランスとして企業のWeb記事作成、企業出版の支援などもおこなっている。 ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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