解決策の一つはデプロイの効率化
「ラストマイルイニシアティブ」が進めてきた活動の一環として2019年11月にリリースを予定しているのが、SAS Open Model Managerである。同製品はアナリティクスのライフサイクルにおけるモデルの登録からデプロイ、モニタリングまでのマネジメントを単一の環境で自動化する。
トム・レーム氏(グローバルマーケティング&メッセージング担当シニアディレクター)は、「ラストマイル問題の解決のポイントは二つある」と解説する。その一つはプロセス全体のボトルネックとなっているデプロイの効率化である。
SAS Open Model ManagerはPythonとRのシームレスな統合を実現するものであり、モデルの評価効率を飛躍的に高めることができる。開発したモデルを登録すれば、複数のモデルの中から最も精度が高いものを選び、自動的にデプロイを行う。基調講演でも創業者兼CEOのジム・グッドナイト氏が「SASのプラットフォームの裏側では、超並列コンピューティング環境が稼働しており、同時に数100のモデルを評価できる」と言及していた。
SAS Open Model Managerは、インフラ技術にコンテナを採用しており、運用環境がクラウドでもオンプレミスでも柔軟にデプロイできるようにしている。この背景にあるのがRed Hatとのパートナーシップである。「Analytics Experience 2019」開催前の10月16日、SASはRed Hat OpenShiftを同社アナリティクス製品のプラットフォームに採用することを発表している。
Red Hat OpenShiftは、DockerやKubernetesなどのオープンソーステクノロジーを統合し、Red Hat Enterprise Linuxのエンタープライズ基盤と組み合わせたコンテナアプリケーションプラットフォームである。その特徴はマルチクラウド環境へのデプロイメントを管理するフルスタックの自動運用機能を備えていること。Red Hatとのパートナーシップ強化で、SASの顧客はアナリティクスモデルの開発と運用に集中できるようになる格好だ。
実は、アナリティクスモデルのマネジメントに焦点を当てた製品としては、2005年から市場に提供してきたSAS Model Managerがある。既存製品との違いは、SAS Open Model ManagerがSASではない環境にあるモデルに対しても「オープン」であることだ。SAS Model ManagerもSASやオープンソースのモデルの開発から運用までのマネジメントを支援する製品であるが、SASを利用していない組織は効率的なモデルの運用という恩恵を受けることができない。SAS Open Model Managerは、SAS以外の環境でAIやアナリティクスモデルを活用している組織に対して、サポートの手を差し伸べる製品になる。