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紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

基本契約時の見積と乖離した個別契約の金額は有効か


ベンダに求められるユーザ予算への配慮

 裁判所は、たとえ、作業着手後の機能や費用に当初の想定からズレることの多いソフトウェア開発であっても、ベンダは当初の見積から大きく乖離 (この場合は数百万円ですが)するような費用の上積みをするべきではないと言っています。

 私のようなITベンダ出身の人間からすると、作業中に費用が想定を上回ることなど、この業界では日常茶飯事ですし、多段階の契約を結んでいるなら、個別契約を締結する段階で、金額の見積を見直すのがむしろ、当然のことと思ってしまいます。

 まして、ユーザ企業も一旦は、その金額に同意して個別契約を結んでいるわけです。それを、ITベンダにはユーザ企業の予算的な制約を配慮しなければいけないとして、費用の上積みを制限する判決を出した裁判所の判断には、正直驚きを隠せません。

 では裁判所のこうした判断の背景には、どんな考え方があるのでしょうか? これは私個人の想像になってしまいますが、一つには契約というものの安定性を重く見たと考えることができます。

 このシステムを開発するにあたって、ユーザ企業内では、当然、開発費用の予算を確定するという作業が行われていたはずです。そして決定した開発費用は、その年の会計予算にも反映され、上場企業であれば公表されることもあるでしょう。

 ところが実際に作業をしてコストが想定より膨らめば、これは企業の利益を圧迫することになり、場合によっては株価低落や企業の信用(銀行などで借入をできる枠)にも影響が出ることもあり得ます。

 こうしたことを避けるためには、一旦結んだ契約は安定的に維持されなければなりません。この場合で言えば、基本契約を結ぶにあたって想定した当初の見積金額を、個別契約で変更することは、できる限り避けるべきとの考えが裁判所にあったということが想定されます。

次のページ
ベンダのプロジェクト管理義務とユーザに求められること

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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