量子コンピュータ技術の確実な進化が見えてきた
2019年10月、量子コンピュータで従来のコンピュータでは不可能だったことを可能にする「量子超越性(Quantum Supremacy)」を達成したとGoogleが論文で明らかにした。一方、既に商業用量子コンピュータであるIBM Qを提供するIBMでは、このGoogleの発表を否定しているようだ。Googleの発表が本当なのか、IBMの主張が正しいのかを理解するのはなかなか難しいところもある。とはいえ、着実に量子コンピュータの技術は進化しており、一部は数年後にビジネス領域で活用できるのは間違いないだろう。
量子コンピュータの開発は米国や中国がなかり力を入れており、この領域に国としても大きな投資を行っている。日本においても、それに追随するように新しいコンピュータ開発の動きが起きている。経済産業省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、2016年年度から2027年度のプロジェクトとして「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」を実施している。これは「ポストムーア時代」におけるコンピューティング技術開発を行うもので、「エッジ側での超低消費電力AIコンピューティング技術開発」および「高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術開発」を進める。2019年度の予算は84.9億円で、このプロジェクトでは、組合せ最適化問題を高速に解決すると期待される量子アニーリングマシンの開発も含まれている。
また文部科学省でも「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」で、経済、社会的な重要課題に対し、量子科学技術(光・量子技術)を駆使し、非連続的な解決(Quantum leap)を目指す研究開発プログラムを行っている。ここでも量子コンピュータに関する基礎基盤研究が実施されている。米国や中国に比べると、この分野への投資額として日本は見劣りするが、それなりの額を投資し始めており、日本でもベンチャー企業を含む産学官連携体制で量子コンピュータの開発に取り組みが始まっている。