KDD研究所(現・株式会社KDDI総合研究所)を前身に1988年に設立されたKDDIテクノロジー。同社はKDDIが開発した最新技術を商用化するというミッションを担う。これまで個別の開発案件対応を中心としたビジネスを展開してきた同社が、どのようにソフトウェアの商品化を進めてきたのか。ソフトウェアビジネスの裏側を支えるライセンス管理についても合わせて聞いた。
ストック型の収益基盤の確立

株式会社KDDIテクノロジー 代表取締役社長 相澤忠之氏
――リカーリングビジネスへの転換を進めているとのことですが、現状について聞かせていただけますか。
私たちの親会社に当たるKDDIでは、お客様ID数とお客様一人当たりの売上(ARPU:Average Revenue Per User)を増やし、継続率を高めてLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化することを目指すストック型の収益基盤を確立しています。
一方、KDDIグループ全体を見ると、私たちを含めて子会社はフロービジネスが中心です。これまでのKDDIテクノロジーでは、モバイルアプリケーション開発、B2Bのお客様向けのモバイルソリューションやIoTソリューション開発を中心にビジネスを展開してきました。最近では、2020年に本格的な商用サービス開始を予定している第5世代通信システム(5G)の技術検証サポートにも力を入れています。フロービジネスの問題は景気変動に左右されやすく、売上高が上下しやすいことです。KDDIグループ全体で持続的な成長を実現するには、私たちもストックビジネスを増やしていく必要があると考えました(図1)。

図1:ストックモデルからリカーリングモデルの確立へ 出典:KDDIテクノロジー
――ストックビジネスでトップラインの売上高を増やすことが目指す計画であることはわかりましたが、ビジネスモデルの転換を意識し始めたのはいつですか。
2018年4月に私が社長として着任したときからです。それ以前はKDDI本体でauのお客様向けにスマートフォンやタブレットの事業企画とビジネス開発に携わってきました。当社のビジネスでは案件ありきのアプリケーション開発の請負が売上構成に占める割合が大きく、収益基盤を安定させることが難しい。企業としての増収増益のためにはベースとなるストック領域を整備することが安定経営に不可欠と考え、プロダクト開発を進めてきました。
――リカーリングやサブスクリプションのような方向にビジネスモデルを移行すると、コストが増加し収益が落ち込む段階が生じると思います。どのようにその段階を乗り切って転換を進めるのでしょうか。
2018年4月現在の売上高は49.1億円、社員数は62人です。社員数は増やしながらも、1人当たりの売上高を1億円以上にすることを目標としていますが、個別のソリューション提供でお客様の期待に応えることは今まで通り必要です。その一方で既存の資産を活かしてプロダクト開発を行い、売上高全体に占めるストックビジネスの比率を増やし、フロービジネスの収益と合わせてトップラインを増やすことを計画しています(図2)。

図2:持続的成長に不可欠なストックビジネスの強化 出典:KDDIテクノロジー
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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