DX最先端企業となるにはデジタルツインを実現できるかが勝負
産業界ではDXに象徴されるように、新たな時代に適応すべく、それぞれが変貌を遂げつつある。自動車関係だと自動運転やコネクテッド・カーの実現に向けて開発が進められているところだ。企業ごとに変化の形は多岐にわたるものの、その変化に不可欠なのがデータであるのは言うまでもない。
日本テラデータ コーポレート・エバンジェリスト/エグゼクティブ・コンサルタントの金井啓一氏は「DXの本質はデータを駆使することです。ただし、データは大量にあるものの、インサイトはまだ“プア”であるのが現状です」と指摘する。
システムのサイロ化、システム間のデータ連携がスパゲティのように混沌としている……。こうした課題は自動車業界も例外ではない。近年コネクテッド・カーを実現していくなかで、車両や道路、あらゆるところからデータが大量に発生するようになり「(データ整備を)なんとかしないと」という危機感が変化を後押ししている。
他業界同様、技術の変化とビジネスモデルの変化が重なり、自動車業界では「モビリティサービス」と呼ばれるような「ビジネスのリデザイン」が起きている。金井氏によると、最先端を進んでいるのが欧州の自動車会社Aやボルボ、自動車メーカーではないものの似たような状況にあるのがルフトハンザやシーメンスだという。
こうしたDXを体現するような企業がなぜ最先端になれたかというと、「鍵はデータ活用にあり、欠かせないのがデジタルツインの実現にある」と金井氏は指摘する。
デジタルツイン、またはサイバー・フィジカル・システム(CPS)とは、実世界となるフィジカル空間のコピーをサイバーの仮想空間に作るようなもの。実世界からデータを収集し、サイバーの仮想空間でモデル化し、収集したデータを蓄積して分析やシミュレーションを行い、その結果を実世界にフィードバックする。このデジタルツインを実現できるかどうかが今後のビジネスの勝敗を分けると金井氏は見ている。
金井氏は「自動車業界内で進んでいるモビリティサービス(MaaS)を実現する上で重要になるのがクルマとモビリティの再定義と、クルマから発生するデータにどう取り組み、どう活用するかです」と話す。データ活用をしていく上で欠かせないのがデータマネジメントだ。そこではデータ統合が欠かせない。
例えばデータを活用して故障予測したいのであれば、エッジとなる車両からのデータだけではなく、生産管理や販売管理など基幹システムにあるデータも必要になる。どのロットで故障が起きたのか、そのロットが組み込まれた車両はどこにあるのかを把握しなくてはならないからだ。そのためエッジから来るIoTのデータと基幹システムのデータを統合する必要がある。自動車メーカーにおけるデータ活用の取り組みでは、多くが先述した故障予測のように品質管理に関係するところから始めているという。